電子回路

2021年5月 7日 (金)

PCM1795 Dual 16倍 24Bit スーパーサンプリングDAC ( 基板頒布あり )

Ss1795pcbs
写真1.PCM1795をモノラル構成で2個使用した16倍24Bit スーパーサンプリングDAC


今回はI2S入力のΔΣ方式DAC、PCM1795をモノラル構成で2個使用した16倍24Bit SSDACを開発したので紹介する。

I2S入力のΔΣDACを使ったスーパーサンプリングDACについては、すでに最初のSS128I2SでAK4490とPCM5102を使って実現している。
今回はバーブラウンのハイエンドDACであるPCM1795を、内部デジタルフィルタなしのモノラルモードで2個使用し、専用のFPGAで16倍24BitスーパーサンプリングDACを構成した。
このデバイスをモノラルモードで使用する場合はI2Sフォーマットではなく、24Bit右詰フォーマットで使用する。これは有名なPCM1704と同じデータフォーマットだ。

再生波形は以下のとおり。

Nos10ksin
図1.44.1kHz16Bit入力 NOSモード 10kHz正弦波
補間なしの生データ再生。

Ss10ksin
図2.44.1kHz16Bit入力 16倍24bitスーパーサンプリング 10kHz正弦波
きれいな正弦波が再現された。


Nos1ktr
図3.44.1kHz16Bit入力 NOSモード 1kHz方形波


Ss1ktr
図4.44.1kHz16Bit入力 16倍24bitスーパーサンプリング 10kHz方形波
オーバーシュートとアンダーシュートが1山ずつ出るSSDACの特徴的な波形。


Nos1ksaw
図5.44.1kHz16Bit入力 NOSモード 1kHzのこぎり波


Ss1ksaw
図6.44.1kHz16Bit入力 16倍24bitスーパーサンプリング 1kHzのこぎり波
過渡的な応答は方形波と同じようにオーバーシュートとアンダーシュートが出る。


音質はこれまでのSSDACの特徴を引き継いでいて、とくに高域がきめ細かく再生される。
またモノラル構成で2個使いとしたことで、チャンネルセパレーションやSNRでも有利で、ヘッドホンで聴いてもノイズはまったく感じられない。
今回採用したPCM1795は入手性もよく、価格も比較的廉価なので、SSDACの入門用としておすすめします。

以下のとおり、基板を頒布します。

【主な仕様】
●Amanero COMBO384互換入力
●NOSおよび16倍24BitスーパーサンプリングΔΣDAC(PCM1795x2)音声差動出力
●入力電源:AC12V~AC15V x2(±電源)
●基板サイズ:112mm x 140mm
回路図、部品表製作マニュアル操作マニュアル電気学会論文

 
次の3種類を頒布します。

①書き込み済みFPGA搭載基板   22000円
・書き込み済みFPGAのみ搭載した基板です。
・納期:1週間~10日程度

②全部品実装基板(動作確認済み) 51000円
・書き込み済みFPGAを含む全部品を搭載した基板です。
・Amanero COMBO384は含まれません。
・すべて手実装です。
・納期:2~3週間程度(受注生産)

③全部品実装基板(動作確認済み)、AmaneroCOMBO384、電源トランスセット 74000円
・すべて手実装です。
・AC電源ケーブルおよび電源スイッチ、ヒューズ等はご用意ください。
・納期:2~3週間程度(受注生産)


購入ご希望の方は表題に「SSDAC1795頒布希望」とお書きのうえ、
dj_higo_officialアットhigon.sakura.ne.jp(アットを@に換えて)までメールにて
お申し込みください。
※ご希望のセット番号と、お名前、ご住所、電話番号をお書きください。
折り返し、代金振込先等のご案内をお送りします。

製造・頒布はSLDJ合同会社が行います。

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2021年4月 5日 (月)

SSDAC対応DDコンバーター(USB to I2S)について

頒布中のSSDAC基板に対応するDDコンバータ(USB to I2S)について、動作確認できているものは次のとおり。

Dd_boards
写真1.SSDACで動作確認済みのDDコンバーター

 

①Amanero COMBO384(写真左端)
・SSDACで標準としているDDコンバータ。

②Amanero COMBO384互換ボード(写真左から2番目)
・amazonやAliexpressなどで廉価で入手できる。
・動作はAmanero COMBO384と同じだが、ファームウェアのアップデートはできない。

③XMOS U208(写真中央)
・Amanero COMBO384と同等。

④6631PRO(写真右から2番目)
・CM6631Aを使用したDDコンバータ。
・SSDAC基板上のサンプルレート、ビット深度を示すLEDは点灯しないが、動作は問題なし。
・USB接続有無を示す”PLUG”信号が必要な場合は、コネクタの1pinと10pinをジャンパで接続する。(SSDACでは不要)

⑤PCM2706ボード(写真右端)
・PCM2706を使用したDDコンバータ。
・SSDAC基板上のサンプルレート、ビット深度を示すLEDは点灯しないが、動作は問題なし。
・USB接続有無を示す”PLUG”信号は無し(SSDACでは不要)。
・44.1kHz,48kHzの16bitのみ対応。
・SSDACへの接続コネクタに電源が供給されていないため、コネクタ 7pinにジャンパで電源を接続する必要がある。
・クロックがUSBと兼用で、I2Sに必要なクロックはPLLで生成されているため、積極的にはおすすめしない。

以上参考にしてください。

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2021年3月 1日 (月)

SSDAC(スーパーサンプリングDAC)の説明

20210113ss_pcb

このところSSDAC(スーパーサンプリングDAC)の開発から試作品頒布まで、SSDACの話題が多いが、

「SSDACについて興味があるが、よくわからないので、わかりやすく説明してほしい」

とのご意見をいただいたので、今回はSSDACについて解説したい。
わかりやすく、数式をできるだけ使わずに説明したいと思う。


1.SSDACの音
SSDACはオーディオ用のD/Aコンバータとして開発しているので、音質がどのように良くなるか、ということがいちばん大事な点だ。
あまり抽象的なことは言いたくないので、まずは音楽再生中にNOS(補間なしの生データ)とスーパーサンプリングを切り替えたときに、聴感上どのように変わるかという点から、音の印象を書いておく。

・高域がきめ細かく聞こえる
とくにボーカルの息づかいや、ハイハットシンバル、弦楽器の弦のこすれる音などがよりリアルに聞こえるようになる。

・音場に広がりが出る
例えていうと、モノラルからステレオに切り替えたときのよう(もちろんそこまで極端ではないが)に広がる印象がする。
たとえば、ノイズが付帯したり、エコーがかかったりしても同じような印象になることがあるので、こういう評価は慎重さが求められるが、 おそらく上で述べたように特に高域の分解能が増したことに関連しているのではないだろうか。

次に、市販の一般的なオーバーサンプリングデジタルフィルタを使ったΔΣ方式のDACとの比較においては、次のとおり。

・立ち上がりが良く、音の輪郭がはっきりして、ドライな印象
要因としておそらくΔΣ方式とマルチビットの違いが大きい。またプリエコー、ポストエコーといった、音源にない付帯音が排除された結果、ドライな印象になるのではないか。
以前トランジスタ技術からキット販売された64倍SSDAC(トランジスタ技術2018年10月号)においても、低音が物足りない印象がする、といった意見が聞かれたが、低域特性については全段直結でDCまで確保しているので、低域が減衰することはない。

 

2.SSDACの原理
SSDACの原理を説明する前に、まずはCDに入っている音を何も処理しないで再生した場合(NOS)の波形を見てほしい。
図1に示すのは、44.1kHz16Bitサンプリング(CDのデータフォーマット)の10kHz正弦波だ。

Nos10k
図1.10kHz正弦波の生データ(NOS)波形

CDのサンプリング周波数は44.1kHzなので、10kHzの正弦波は一周期が4個ほどのデータになってしまい、正弦波からは程遠い波形になってしまう。あるデータが出てから次のデータが出るまでの間は、データの値を保つので、すきまのない棒グラフだと考えるとよい。これを0次ホールドという。
この状態からもとの正弦波が再現できるだろうか。もちろん急峻なローパスフィルタを通せば角が落ちてなめらかになるだろうが、波形の復元といいう観点から考えるとどうだろうか。

図2は適当なデータをEXCELで棒グラフにしたものだ。

Excel_nos

図2.EXCELで作った棒グラフ

 

図2は棒と棒の間にすきまがあるので0次ホールドとは少しちがうが、同じデータをEXCELの散布図(平滑線)を使うと、図3のようになる。

Excel_spline
図3.EXCELの散布図(平滑線)

 

EXCELの散布図(平滑線)はスプライン関数でデータ間をなめらかにつないでいる。
SSDACでの処理はまさにこれと同じで、点と点の間を3次のスプライン関数で補間するものだ。3次のスプライン関数というのは、データ間がなめらかにつながるような3次関数を区間毎に当てはめるという方法だ。

3jikansuu - 式1

3次関数というのは式1のようなもので、ここではdがCDの元データ、xが時間、yが信号レベルだ。

実際にSSDACで図1と同じ10kHzの正弦波を再生すると図4のようになる。

 

Ss64_10k
図4.SSDACで処理した10kHz正弦波(64倍SSDAC)


参考:SSDACの電気学会論文


3.市販DACの問題点
それでは現在一般的に使われている市販のDACはどうだろうか。
まず波形再現性では、オーバーサンプリングとデジタルフィルタという技術を使って、図4に示したものとまったく同様になめらかな波形が再現される。それなら何が問題なのだろうか。
図5に過渡応答(矩形波)の波形を示す。

 

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図5.ES9018K2Mの過渡応答(1kHz矩形波)


図5の元データは単純な矩形波だが、デジタルフィルタを通すことで、波形の立ち上がり前後に波のようなノイズが発生している。これをプリエコー、ポストエコーといい、オーバーサンプリングとデジタルフィルタという方式がもつ根本的な問題点だ。
プリエコー、ポストエコーの周波数はサンプリング周波数の1/2なので、CDの場合は44.1kHz/2=22.05kHzだ。
22.05kHzならば可聴周波数より上なので問題はない?
音楽の場合はCDでは0~22.05kHzまでの音楽信号が出力され、その音楽信号に対し22.05kHzのノイズが重畳すれば、常に干渉波が発生することになり聴感にも影響を与える。デジタルオーディオの音がなんとなくにぎやかな印象がしたり、不自然な艶っぽさがあるような印象になるのは、このプリエコー、ポストエコーの影響があるのではないかと個人的に考えている。

それでは、SSDACの過渡応答はどのようになっているのだろうか。図6にSSDACでの再生波形を示す。

Ss_tr1k
図6.SSDACの過渡応答(1kHz矩形波)


SSDACの過渡応答は、オーバーシュートとアンダーシュートがひと山ずつ出ているが、これはすべてのデータ点を通り、連続する3次曲線で補間するという原理上発生するものだ。


4.フルーエンシDACについて
先行する技術としてフルーエンシDACというものが存在する。
これは寅市和男教授により発明され、80年代に高級CDプレーヤーに搭載された。また映像の補間技術にも応用され、世界的にも注目を浴びた。音声用DACは現在でもFN1241というデバイスとして販売されている。秋月電子でも入手可能だ。
フルーエンシDACは、デジタルフィルタのsinc関数を2次関数で近似するという技術で、タップ係数の収束が早いので過渡応答に優れている。
フルーエンシDACによる過渡応答を図7に示す。

 

Fluency_tr1k
図7.フルーエンシDACによる過渡応答(1kHz矩形波)


フルーエンシDACによる過渡応答は優秀で、オーバーシュートがひと山出ているだけで、アンダーシュートがない。
波形はどうだろうか。図8にフルーエンシDACによる10kHz正弦波の再生波形を示す。

 

Fluency10k
図8.フルーエンシDACで処理した10kHz正弦波


フルーエンシは2次関数で近似するため、1次微分までしか連続性が確保できず、波形が歪んでしまう。

参考:フルーエンシDAC特許


5.トランジスタ技術で販売した、64倍SSDACの各動作モードについて
トラ技でキット販売した64倍SSDACでは、3次スプラインのスーパーサンプリングモードのほかに、NOSモード、1次補間モード、2次補間モードがスイッチで切り替えられるようになっている。ここでは、各モードでの再生波形を紹介する。

Nos_tr1k
図9.NOSモード時の過渡応答(1kHz矩形波)


NOSモードはなにも処理しない生データの状態で、正弦波についてはすでに図1に示したとおり。NOSモードでの過渡応答は図9のようになり、過渡応答だけ見れば理想的な状態だ。

次に1次補間モードの正弦波波形を図10に示す。


10k
図10.1次補間モードで処理した10kHz正弦波


1次補間モードというのはデータ間を直線で補間するモードで、折れ線の状態になる。

次に2次補間モードの正弦波波形を図11に示す。

 

10k_20210301173001
図11.2次補間モードで処理した10kHz正弦波

2次補間モードは1次微分までしか連続性が確保されないため、波形が歪んでしまう。フルーエンシDACに類似。

 

6.SSDACのシミュレーション
図12に、今回頒布している128倍SSDACの、実際のVHDLコードによる補間シミュレーションを示す。

Simwav
図12.128倍SSDAC、VHDLソースのModelsimシミュレーション

スプラインの演算は128倍スーパーサンプリング24Bit精度で行っており、駆動するデバイスに応じてスーパーサンプリング比とビット精度を調整(縮小)して出力する。


7.SSDACの演算精度
今回開発したSSDACは、上述の通り内部演算を128倍スーパーサンプリング24Bit精度で行っている。
128倍16BitスーパーサンプリングDAC基板では、16BitマルチプライングDAC(DAC8820)を使って、最大レートである128倍スーパーサンプリングで出力している。内部演算24ビットのうち上位16Bitを使用している。
同じ128倍SSDAC基板に搭載された16倍24BitのI2S出力は、転送レートの上限が768kHzのため、スーパーサンプリング比を128倍から16倍にダウンしているが、Bit精度は24Bitであるので、16Bitと比較すれば8ビット増(256倍)のBit精度になる。
PCM1702用の16倍20Bitでは、同様に16ビットより4Bit(16倍)増のBit精度だが、このデバイスはサインマグニチュード方式のマルチビットDACとしてのアドバンテージが音質にも現れている。


128倍 16Bit スーパーサンプリングDAC 基板頒布

PCM1702 16倍 20Bit スーパーサンプリングDAC 基板頒布


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2021年2月25日 (木)

PCM1702 16倍 20Bit スーパーサンプリングDAC 基板頒布のお知らせ

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写真1.PCM1702による16倍20BitスーパーサンプリングDAC基板


前回の記事でお知らせしたとおり、PCM1702を使用した16倍20BitスーパーサンプリングDACの評価用基板を頒布します。
スーパーサンプリングDACは、デジタルデータ間を3次自然スプライン関数で補間する新しい技術で、従来のDACにくらべ、トランジェント応答に優れ、プリエコー、ポストエコーが大幅に抑えられたきめ細かい音質で音楽が楽しめます。

回路図、マニュアル、論文等は前回の記事で公開していますのでご参照ください。

【主な仕様】
●Amanero COMBO384互換入力
●NOSおよび16倍20Bitスーパーサンプリング・サインマグニチュードDAC(PCM1702)音声差動出力
●入力電源:AC12V~AC15V x2(±電源)
●基板サイズ:112mm x 140mm
●回路図、部品表、製作マニュアル、操作マニュアル、電気学会論文付

 
次の3種類を頒布します。

①書き込み済みFPGA搭載基板   25000円
・書き込み済みFPGAのみ搭載した基板です。
・納期:1週間~10日程度
※PCM1702は生産中止部品です。ご自分で手配される場合は不良品や偽品にご注意ください。

②全部品実装基板(動作確認済み) 75000円
・書き込み済みFPGAを含む全部品を搭載した基板です。
・Amanero COMBO384は含まれません。
・すべて手実装です。
・納期:2~3週間程度(受注生産)

③全部品実装基板(動作確認済み)、AmaneroCOMBO384、電源トランスセット 97000円
・すべて手実装です。
・AC電源ケーブルおよび電源スイッチ、ヒューズ等はご用意ください。
・納期:2~3週間程度(受注生産)


購入ご希望の方は表題に「SSDAC1702頒布希望」とお書きのうえ、
dj_higo_officialアットhigon.sakura.ne.jp(アットを@に換えて)までメールにて
お申し込みください。
※ご希望のセット番号と、お名前、ご住所、電話番号をお書きください。
折り返し、代金振込先等のご案内をお送りします。

製造・頒布はSLDJ合同会社が行います。

なお、今回は検証用に2枚の基板を作りましたので、このうちの1枚を先着一名の方に限り45000円で頒布(即納)します。
お買い上げありがとうございました。

128xスーパーサンプリングDAC基板も引き続き受け付けていますが、AKM4490が工場火災の影響で入手困難となっているため、在庫限りで一旦終了とします。

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2021年2月22日 (月)

PCM1702 16倍 20Bit スーパーサンプリングDAC試作

Ss1702pcb
写真1.今回開発したPCM1702 16倍スーパーサンプリングDAC基板

● 取扱説明書製作マニュアル回路図、寸法図電気学会論文を公開しますので、興味のある方はご覧ください。
● 準備が整い次第頒布開始予定です。

3次自然スプライン関数で補間する128倍スーパーサンプリングDACについてはすでに評価用の基板を頒布しており、この基板では128倍スーパーサンプリングデータをマルチプライング16BitDAC(DAC8820)から出力、16倍および8倍 24BitスーパーサンプリングデータをI2SDAC(AK4490,PCM5102)から出力し、さらにピンヘッダからI2Sで最大16倍 24Bitスーパーサンプリングデータ、およびPCM1702用8倍20Bitスーパーサンプリングデータを出力し、評価用基板としては考え得るほぼすべての要求を満たす仕様になっている。

ただ、この中でPCM1702用のデータが8倍スーパーサンプリングとなっており、このデバイスの最大スペックである16倍が出せなかった。これはなぜかというと、PCM1702用のデータとクロックをI2S信号から生成しており、I2Sは左右チャンネルのデータを1本のデータ線で転送するため、クロックに対して転送レートが半分になってしまうためだ。PCM1702はモノラルのデバイスなので、I2Sと同じ転送レートならクロックは半分だが、そのために専用のクロックとデータを生成する必要がある。

今回は、PCM1702専用基板と専用のFPGAを開発して、PCM1702で16倍20Bitスーパーサンプリング再生ができたので報告する。

PCM1702は有名なPCM1704の前身ともいえるオーディオ用20bitマルチビットDACで、マルチビットDACの欠点であるグリッチノイズやゼロクロス歪を抑えるサインマグニチュード方式を採用している。マルチビットDACは通常2の補数方式でデータを受け取るため、たとえば8ビットのデータは次のように-128~127で表現される。

 

127  0111 1111

    ……

   1 0000 0001

     0 0000 0000

    -1  1111 1111

    ……

-128  1000 0000

 

ここで、値が-1から0に変化するところに注目すると、1111 1111 → 0000 0000と、すべてのビットが反転する。これにより、ビットの切り替わりで発生するグリッチノイズや、変換誤差によるゼロクロス歪が発生する。これらのノイズや歪はゼロ前後で最大となるため、小音量時にとくに問題となる。
PCM1702やPCM1704はサインマグニチュード方式により、符号ビット(MSB)と値ビット(2SB以下)を分離して処理することで、上記のノイズの発生を抑えている。

前回の評価基板は128倍スーパーサンプリングだった。これは、もともとの各データに対し補間用にスプライン関数を計算し、データ間を127点で補間するものだ。スプライン関数が計算できてしまえば理論上は何倍の補間も可能だが、使用したDAC8820のスペックから、128倍が限度だった。
I2Sの場合はどうかというと、最大サンプリングレートを768kHzとしているものが多いので、768/48=16倍とした。内部演算はすべて24Bitで行っているので、出力も24Bitとしている。

128倍はDAC8820で16bit出力した場合のSS(スーパーサンプリング)比だが、内部演算は24bitで行っているため、対応できるデバイスがあれば最大24bitまで拡張できる。
今回評価したPCM1702は20bitなので、16bitに対してビット分解能は16倍となり、SS比が16倍でもビット分解能が16倍なのでトータルで256倍相当と考えることもできる。(時間軸とビット分解能のどちらがどれだけ聴感に影響を与えるかはわからないが……)

以下に評価結果を示す。

図1、図2が8kHz正弦波の16倍SSとNOSの波形、図3、図4が1kHz矩形波の16倍SSとNOSの波形、図5はPCM1702に入力しているクロックとデータ。

Ss1702ss8k
図1.PCM1702  16倍ス-パーサンプリング 8kHz正弦波

 

Ss1702nos8k
図2.PCM1702  NOS 8kHz正弦波

 

Ss1702sstr1k
図3.PCM1702  16倍ス-パーサンプリング 1kHz矩形波


Ss1702nostr1k
図4.PCM1702  NOS 1kHz矩形波

 

Ss1702_clk_data
図5.PCM1702への入力クロック(22.5792MHz)とデータ

 

CDからリッピングした44.1kHz、16bit音楽データを試聴しているが、非常に良好で、スーパーサンプリングON/OFFでは特にハイハットやボーカルの息づかいなどの高域のきめ細かさに差が出ていることがわかる。


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2021年2月 8日 (月)

128倍スーパーサンプリングDACアップデート

前回128倍スーパーサンプリングDAC基板頒布のお知らせを出しましたが、その後I2S出力を従来の8倍から、最大16倍スーパーサンプリングまで拡張しました。

現在ご注文をいただいている基板はすべて16倍対応として作業を進めております。

基板完成までいましばらくお待ちください。

回路図面、マニュアル、学会論文等は頒布のページよりリンクしましたので、興味のある方はご覧ください。

 

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2021年1月29日 (金)

128倍スーパーサンプリングDAC 基板頒布

20210113ss_pcb

 

今回開発したSSDAC評価基板を下記のとおり頒布します。
FPGAはすべて共通、価格はすべて送料、消費税込みです。

【主な仕様】
●Amanero COMBO384互換入力
●NOSおよび128倍 16bit スーパーサンプリングマルチプライングDAC(DAC8820)音声出力
●NOSおよび4,8,16倍 24Bit スーパーサンプリングAK4490音声出力
●NOSおよび4,8倍 24Bit スーパーサンプリングPCM5102音声出力
●NOSおよび4,8,16倍 24Bit スーパーサンプリングI2S信号出力(ピンヘッダ)
●NOSおよび8倍 20Bit スーパーサンプリングPCM1702制御信号出力(ピンヘッダ)
●入力電源:AC12V~AC15V x2(±電源)
●基板サイズ:112mm x 164.5mm
回路図、部品表製作マニュアル操作マニュアル電気学会論文

 
次の3種類を頒布します。

①書き込み済みFPGA搭載基板    23000円
・書き込み済みFPGAのみ搭載した基板です。
・納期:1週間~10日程度

②全部品実装基板(動作確認済み) 62000円
・書き込み済みFPGAを含む全部品を搭載した基板です。
・Amanero COMBO384は含まれません。
・すべて手実装です。
・納期:3週間程度(受注生産)

③全部品実装基板(動作確認済み)、AmaneroCOMBO384、電源トランスセット 85000円
・すべて手実装です。
・AC電源ケーブルおよび電源スイッチ、ヒューズ等はご用意ください。
・納期:3週間程度(受注生産)

購入ご希望の方は表題に「SSDAC頒布希望」とお書きのうえ、
dj_higo_officialアットhigon.sakura.ne.jp(アットを@に換えて)までメールにて
お申し込みください。
※ご希望のセット番号と、お名前、ご住所、電話番号をお書きください。
折り返し、代金振込先等のご案内をお送りします。

製造・頒布はSLDJ合同会社が行います。

 

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2021年1月13日 (水)

128倍スーパーサンプリングDAC評価用基板(128x Super Sampling D/A Converter PCB)

20210113ss_pcb
写真1.128xスーパーサンプリングDAC評価用基板
16bitマルチプライングDACによる出力を差動で、比較試聴用のAK4490およびPCM5102の出力をそれぞれRCAとステレオミニジャックで出力している。


昨年末より着手していた128倍スーパーサンプリングDAC(128xSSDAC)の基板があがってきたので紹介する。

SSDACはデジタルデータを3次自然スプライン関数で補間する技術で、トラ技2018年10月号で初めて発表され、その後64倍SSDACのキットが発売された。
今回はさらに進化させ、スーパーサンプリング比を128倍として16bitマルチプライングDAC、DAC8820からの出力を左右それぞれ差動で、さらに4倍および8倍スーパーサンプリングでアップサンプリングした24BitデータをI2Sで出力し、AK4490とPCM5102で比較試聴できるようにした。
アップサンプリングしたI2S信号は電源とともにピンヘッダに出力したので、子基板を載せれば任意のI2S DACデバイスで聴くことができる。

前回までの記事で何回か過渡応答の波形を示したが、インパルス演算の誤差があり、平坦部が波打っていた。

Ss128_sq1khz_20210113205701
図1.前回までの過渡応答波形
上下平坦部がサンプリング周波数で波打っていた


図1の示すとおり、上下平坦部がサンプリング周波数で波打っていた。これはインパルスを計算する回路の精度に見落としがあり、誤差が出ていたためだ。今回はこの部分を改善した。
最新の測定波形を以下に示す。


Ss1khz
図2.128倍スーパーサンプリング  1kHzサイン波


Ss8khz
図3.128倍スーパーサンプリング  8kHzサイン波


Nos8khz
図4.NOS  8kHzサイン波


Ss16khz
図5.128倍スーパーサンプリング  16kHzサイン波


Nos16khz
図6.NOS  16kHzサイン波


Ss20khz
図7.128倍スーパーサンプリング  20kHzサイン波


Nos20khz
図8.NOS  20kHzサイン波


Sstr1khz
図9.128倍スーパーサンプリング  1kHz方形波
インパルス演算回路の改善により、上下平坦部の波が解消された


Nostr1khz
図10.NOS  1kHz方形波


Ss_saw2khz
図11.128倍スーパーサンプリング  2kHzのこぎり波


Nos_saw1khz
図12.NOS  2kHzのこぎり波


 以上のように128倍スーパーサンプリングの動作が確認できた。
今後、引き続き評価と問題点の洗い出しを行う予定。

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2020年12月18日 (金)

8倍スーパーサンプリング+AK4490 評価

Ssdacyak4490pcb
写真1.SSDAC基板(右)と、AK4490およびPCM5120の外部I2S_DAC基板(左)

データ間をスプライン関数で補間するSSDAC(スーパーサンプリングD/Aコンバータ)について、今回は8倍スーパーサンプリングデータを8倍アップサンプリングデータとしてAK4490に入力する検証を行った。

結論を先に言うと、今回のAK4490も、前回評価したPCM5102と同じく、8倍の352.8kにアップサンプリングした信号を入力するとNOSDACとして振る舞うようで、相乗的な効果は見られなかった。つまりマルチプライングDAC(DAC8820)の出力とほぼ同じ結果となった。

元データを44.1kHz16bitデータとし、これに8倍スーパーサンプリング処理をして352.8kHz24bitとしてAK4490のI2Sに入力した。

Ak4490_8xss
図1.1kHz矩形波8Xアップサンプリング→AK4490
AK4490のフィルタ設定に依存せず、すべて同じ結果となった。


Ak4490_8xss_saw2k
図2.2kHzのこぎり波8Xアップサンプリング→AK4490
AK4490のフィルタ設定に依存せず、すべて同じ結果となった。

Ak4490_8xss8k
図3.8kHzサイン波8Xアップサンプリング→AK4490
AK4490のフィルタ設定に依存せず、すべて同じ結果となった。


Ak4490_8xss16k
図4.16kHzサイン波8Xアップサンプリング→AK4490
AK4490のフィルタ設定に依存せず、すべて同じ結果となった。


Ak4490_8xss20k
図5.20kHzサイン波8Xアップサンプリング→AK4490
AK4490のフィルタ設定に依存せず、すべて同じ結果となった。


というわけで、スーパーサンプリング処理を行なったあとに、市販のDACを介して出力するという方法では、特筆すべき効果は得られなかった。まとめると次のようになる。

・オーディオ用I2S DACデバイスに対してアップサンプリングして入力する方法では、8倍スーパーサンプリング(384kHz)が限度
・出力波形はマルチプライングDACを使った場合と同等
・マルチプライングDACによる出力では現在128倍まで可能なので、音質的には8倍よりも128倍のほうが有利
・オーディオ用DACに入力する方法では、ΔΣのデバイスを使うとマルチプライングDACよりもノイズ面で有利
・マルチプライングDAC(DAC8820)よりも市販オーディオ用DACを使う方がコストが安い

つまり、
●スーパーサンプリング8倍でΔΣ方式の市販オーディオDACデバイスで妥協すると、ノイズ面とコスト面で有利
●スーパーサンプリング128倍でマルチプライングDACを使用し音質を優先すると、コスト高で、ノイズでやや不利になる
●ただし、DAC8820はビット分解能が16Bitであり、市販I2S DACでは24Bitであることを加味すると、数字的には市販I2Sか。

ということだ。
ぼくならマルチプライングで128倍を選ぶが、これは人によって判断がちがうと思う。

 

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2020年12月17日 (木)

8倍スーパーサンプリングデータをPCM5102で処理する

前回の記事で予告した、スプラインによる8倍スーパーサンプリングデータを市販品のオーディオDACデバイスPCM5102に入力する実験を行ったところ、おもしろい結果が得られたので、速報でお送りする。

いきなりだが、まずは再生波形を見てほしい。8kHzサイン波だ。

8x5102nos
図1.8kHzサイン波NOS(上:DAC8820マルチプライングDAC、下:PCM5102)


8x5102ss
図2.8kHzスーパーサンプリング
(上:128倍スーパーサンプリングDAC8820出力、下:8倍スーパーサンプリングPCM5102出力)


図1はNOS(オーバーサンプリング処理なしの生データ)だが、PCM5102へは8倍のI2S信号つまり352.8kHzサンプリングにアップサンプリングした状態で入力している。見たところ、DAC8820とPCM5102は同じくNOSDACとして振る舞っている。
PCM5102は最大384kHzサンプリングに対応し、最大8倍のオーバーサンプリングを行うデバイスで、44.1kや48kのデータは8倍オーバーサンプリングするが、352.8kや384kはオーバーサンプリングなし、つまりNOSとして振る舞う。データシートを読めばあたりまえのことだ。

図2は128倍スーパーサンプリングしてマルチプライングDAC、DAC8820で出力したものと、8倍スーパーサンプリングしてPCM5102で出力したものだ。
このときPCM5102はNOSとして振る舞っているので、同じスーパーサンプリングで128倍と8倍では勝負にならない、ということになる。

だとすれば、現状で最大128倍スーパーサンプリングしてマルチプライングDACで出力したものに対して、市販のDACデバイスの前処理にスーパーサンプリングを行う場合、使用するデバイスは8倍(384kHz)で入力してもなお少なくとも16倍オーバーサンプリングできる実力がないと勝負にならないということになるのではないか。

ちょうど昨日、実験に使おうと発注していたAK4490が届いたので、さっそく準備に取りかかろうと思う。
AK4490は最大768kHzサンプリング、256倍オーバーサンプリングのデバイスなので、上のPCM5102と同じ計算ならば、スーパーサンプリング8倍 x オーバーサンプリング32倍、ということができるのではないだろうか。

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