電子回路

2023年11月15日 (水)

超低消費電流 LED 点滅回路

少し前に、こんな開発案件があった。
それは電池で駆動する装置で、できる限り電池もちをよくしたいという。

①通常は休止状態(sleep)で、人が操作すると動作状態に移行する
②操作が終わったら再び休止状態(sleep)に入る

とてもシンプルだが、ひとつだけ注文があった。それは、

◎操作の内容によっては、その後のsleep中にLEDを点灯(または点滅)させておきたい

というもの。
この装置はマイコンにESP32を使って設計したので、sleep中の消費電流は5μA程度まで抑えられる。
ところが、sleep中にLEDを点灯しておくとなると、LEDの消費電流が支配的となり、せっかくの低消費設計が活きなくなってしまう。
最近のLEDは効率がとても高く、少ない電流でもかなり明るい。高輝度タイプなら200~300μAで十分というものもある。
たとえば200μAのLEDをデューティ50%で点滅させると平均100μA。マイコンのsleep電流と比較すると、100μAでも大きすぎる。

さて、どうしたものか。
考えられるのはLED点滅のデューティを可能な限り小さくするくらいしかない。
汎用ロジックICを使えばできそうだが、もう少しシンプルにできないものだろうか……

そういえばむかーし、LED(当時は赤か黄色か緑しかなかった)を1.5V乾電池で点滅させるLM3909というICがあったっけ。ああいうのがあれば良いのだが……
と思い、ちょっと調べてみると、動作電流は0.6mA程度と書いてある。つまり600μAだ。話にならなかった……

何日か考えていたが、ふと、そういえばかなり昔に、2階建ての変わった形をした発振回路を見た記憶がある。たしか超低消費電流が特徴だったはず。
そう思い本棚を探すと、はたして記憶の奥底にあった回路が出てきた!
「トランジスタ進学教室」昭和50年発行 橋本順次著(図1)。これに掲載されていた”トラスコードオシレータ”(図2)がまさにそれだ!!

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図1.「トランジスタ進学教室」

Trascode_doc
図2.トラスコード・オシレータの著述

まずはLTspiceでシミュレーションしてみた。
シミュレーションした回路を図3に、シミュレーション結果を図4に示す。

Trascode_sch0 Trascode_sim
図3.シミュレーション回路              図4.シミュレーション結果

図4に示すとおり、きわめて細いデューティで発振している。

さっそくバラックで回路を組んで実験してみた。
LEDをどこに入れるかが考えどころで、2通りの入れ方を試してみた。

Trascode_sch1
図5.実験回路1

まずは図5の実験回路1のように下側のPNPトランジスタのコレクタに直列に入れるパターン。
LEDは秋月で購入した純緑色の超高輝度LED、OSG58A3133A-1MA(VF=2.8V)。
電流パターンは図6に示すようになった。

Trascode1
図6.実験回路1の電流パターン

電流値がきわめて小さいので、あまり正確に測定できていないが、これは回路に1kの電流検出抵抗を入れて、5μAの定常電流はアナログテスタで、1.6msのLED駆動部分はオシロで観測した。
最低動作電圧は3.0V、平均電流は5.66μAなので、たいへんよろしい\(^o^)/
実際に点滅している動画は次のとおり。

動画1.実験回路1によるLED点滅


次に、図7に示す実験回路2を検証した。電流パターンを図8に示す。

Trascode_sch2
図7.実験回路2


Trascode2
図8.実験回路2の電流パターン

この回路では、デューティは回路1の1/5程度と短くなったが、駆動電流が11.5mAと大幅に増えていて、平均電流は17.24μA。最低動作電圧は2.5V。
消費電流は回路1の3倍程度あるが、これでも十分低消費電流だ。点滅動画は次のとおり。

動画2.実験回路2によるLED点滅


以上により、トラスコードオシレータによるLED点滅回路では超低消費電流でのLED駆動が可能だ。
開発案件では実験回路1を採用した。
マイコンのsleep電流5μAに対して、LED点滅に要する電流が5.66μAなので、
かなりいい線なのではなかろうか(^-^)


今回参考にした「トランジスタ進学教室」という本は昭和50年11月20日発行となっている。ということはぼくが10歳か11歳の時に親に買ってもらった本だ。トランジスタの成り立ちから応用回路、それにCDSやホトトランジスタ、LED、サイリスタ、FETなどの説明もあり、驚くことにはこれは小学生向けに書かれている。小学生向けにしてはかなり高度で、当時のぼくにはまったく読みこなせていなかった。それどころか50年近く経った今になってお世話になっている。
今回実験したトラスコード・オシレータという回路は、この本の著者の橋本順次さんの発明だそうだ。念のため特許を検索してみたが出てこなかった。インターネットで検索しても出てこないので、忘れられてしまった回路なのか、あるいは何か別の名前になっているのかもしれない。

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2023年11月13日 (月)

トランジスタ技術の圧縮

先日、フジテレビ『世にも奇妙な物語』で、「トランジスタ技術の圧縮」が放映されましたね(^-^)
この物語は、今年CQ出版社の月刊誌「トランジスタ技術」通巻700号記念企画で掲載された、宮内悠介さんの短編小説です。
電子回路技術者なら、ああ、やったやった!!ぼくもやったよ!!!と納得するネタですし、電子技術に縁のない人にはちんぷんかんぷんな内容だったと思います。

まず、「トランジスタ技術」とは、古くから日本にある電子技術の月刊専門雑誌で、電子回路技術者でこれを知らないといったらたぶんその人はモグリじゃないかという位の、その筋では超メジャーな雑誌です。毎号最新の技術情報が掲載されるので、貴重な情報源として大事にとっておくような性質の雑誌です。
トランジスタ技術はたしか80年代から90年代にかけて厚さが最大になり、ピーク時にはおそらく4センチ以上あったんじゃないかと思います。なぜそんなに厚いかというと、広告が多かったからです。おそらく広告が全体の60%程度を占めていたんじゃないかと思います。
毎号大事にとっておくと、どんどん本棚が塞がっていき、そのうち床に平積みになり、平積みの山が増えて行き……という恐ろしいことになります。そこで、広告部分だけ取りのぞいて捨て、薄く製本してとっておくわけです。これがトランジスタ技術の「圧縮」です。

当時ぼくは高校の無線部に在籍していて、無線部では同じCQ出版社の「月刊CQ」を定期購読していました。思い出してみると、当時の月刊CQはトランジスタ技術よりさらに厚かったような気がします。
これは余談ですが(というか全部余談ですが)、ある日無線部室で届いた月刊CQを読んでいたら、広告ページの”サンハヤト”(基板メーカー名)が”サンハトヤ”に誤植されていて爆笑したおぼえがあります。
当時トランジスタ技術の内容は、高校生にとってはかなり敷居が高く、父が購読していたトランジスタ技術を時々めくる程度でした。父はその遙か前よりトランジスタ技術の読者で、物置には未圧縮のトランジスタ技術のバックナンバーがぎっしり入っていました。

ところが、おそらく2000年を過ぎたあたりからトランジスタ技術はだんだんと薄くなり始め、いまでは全盛期の1/2か、ヘタをすれば1/3近くまで薄くなってしまいました。これはなぜかというと、業者が広告を出さなくなったからです。インターネットの普及によって、広告の方法が大きく変わったことが原因です。そうなると広告収入に頼る雑誌は存亡の危機になりかねません。やはり古くからある「無線と実験」は、今年いっぱいをもって季刊化するとのことですし、ラジオ技術も読者の高齢化が進んでいて、いつどうなるかわかりません。
それでもいまある雑誌はここまで生き残ってきた強い種なのです。ぼくが子供のころから親しんできた「模型とラジオ」、「子供の科学」、「初歩のラジオ」、「ラジオの製作」などはどれもだいぶ前になくなってしまったし、マイコン(パソコン)黎明期に夢中になった月刊I/O(現在同名の雑誌あり)もなくなってしまいました。
トランジスタ技術はいまも技術者にとって最新情報を知るためになくてはならない雑誌です。日本の電子産業を支えている要素のひとつといっても過言ではないと思います。いつまでも存続してほしいと思っています。

ところで、テレビの「トランジスタ技術の圧縮」のラストは、ジローラモ氏が登場し、雑誌「レオン」を手に「パーティーはこれからだ」というオチがついていました。これは原作にはありません。
これはたしかに、テレビ的にはオチを付けたい気持ちはよくわかるのですが、レオンはちょっと違うんじゃないかなあ……
いや、ジローラモ氏が登場して意表を突いてておもしろいんだけど、雑誌の性質が違いすぎるんじゃないかと。
ファッション誌は、1冊丸ごと広告のような性質があるので、圧縮できないんじゃないかという気がします。
じゃあ、レオンのかわりに何かあるか?といわれたら、月刊CQじゃあんまりだし、月刊JR時刻表じゃあ、あまり圧縮できなさそうだし、ほとんど思いつきません(^-^;
やっぱり「トランジスタ技術」は特別な雑誌なんだ!という気がします。

テレビの進行役はタモリさんでしたね。タモリさんはアマチュア無線家なので、月刊CQは当然ご存じでしょうから、おそらくトランジスタ技術も知っているでしょう。そこまで考えるとなかなか妙ですね。

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2023年11月 7日 (火)

SSDAC128 and デジタルRIAAイコライザ デュアル基板(基板頒布あり)

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前回の記事で、SSDAC128_I2S基板に装着するデジタルRIAAフォノイコライザ・サブ基板を発表しました。

これは従来のSSDAC128_I2S基板のFPGA回路を、デジタルRIAAフォノイコライザに書き換えることで実現しました。
従来通りAmaneroCombo384からのUSB入力で信号再生可能ですが、AmaneroCombo384の代わりにデジタルRIAAフォノイコライザ・サブ基板DPEQ000を装着することにより、レコードプレイヤーから直接入力ができ、リアルタイムでの再生が可能です。
ただし、デジタルRIAAフォノイコライザとして使用するためにFPGAの書き換えが必要で、再びSSDACとして使用するには再度FPGAをSSDACに書き換える必要がありました。

今回は、SSDAC128_I2S基板で使用するFPGAを、10M08SCE144C8Gから10M08SAE144C8Gに変更することで、SSDACとデジタルRIAAフォノイコライザ回路の両方を実装し、電源投入時のDIPスイッチの設定で選択できるようにしました。生基板は従来と共通のSSDAC128_I2S基板です。

レコードファンにとってはかなり便利になったと思います。
また、デジタルRIAAフォノイコライザ・サブ基板DPEQ000にはカートリッジ出力をプリアンプで増幅した信号がRCAで出力されているので、レコードの生音をパソコンでリッピングするときに便利で、レコードの生音を使ったソフトウェアフォノイコライザの検証などに役立ちます。

この記事の下の方にすべての資料とFPGAのオブジェクトファイルを公開します。自力で製作したい方は次の手順で行ってください。

①回路を組む
回路図を参照して、回路を組んでください。
ユニバーサル基板でもできると思いますが、回路規模を考えると、生基板を購入されることをお勧めします。
FPGAは10M08SAE144C8Gです。従来の10M08SCE144C8Gではないので購入時に間違えないように注意してください。
SSDAC128_I2S基板は、従来と比較してジャンパ配線が一箇所、LEDと抵抗をそれぞれ3個ずつ追加となります。資料を参照してジャンパ線と部品の追加を行ってください。

②FPGAにオブジェクトファイルを書き込む

PCと製作した基板をダウンロードケーブル(USB-Blaster)で接続し、FPGAにSSDACとRIAAイコライザのデュアルブートが可能なオブジェクトファイル(SS_RIAA.pof)を書き込みます。このオブジェクトファイルはデュアル・コンフィギュレーションのオブジェクトなので、QuartusPrime Programmerで図1のように、CFM0,CFM1の2つにチェックを入れて書き込みます。


Ssdac_riaa_write
図1.QuartusPrime Programmerによる書き込み
     CFM0とCFM1にチェックを入れて書き込みます。


これで、電源投入時のDIP SWの設定によってSSDACとRIAAフォノイコライザが選択できる基板の完成です(^-^)

詳しい仕様は、以下の資料をご参照ください。

製作マニュアル(SSDAC128_I2SDual)
図表(SSDAC128_I2SDual)
取扱説明書(SSDAC128_I2SDual)
電気学会論文

製作マニュアル(DPEQ000)
図表(DPEQ000)
取扱説明書(DPEQ000Dual)

FPGAオブジェクトファイル(10M08SAE144C8G用)


次の5種類を頒布します。(すべて税、送料込み)

①全部品実装基板セット(SSDAC128_I2SDualとDPEQ000のセット) 77000円
・全部品を実装し、動作確認済みの基板セットです。
・AK4490にはAK4490REQを使用しています。
・Amanero COMBO384は含まれません。
・すべて手実装です。
・DPEQ000のOPAMPはNJM4556AD。
・納期:2週間程度(受注生産)

②全部品実装基板(SSDAC128_I2SDualのみ) 72000円
・全部品を実装し、動作確認済みの基板です。
・すべて手実装です。
・納期:1週間~10日程度(受注生産)

③書き込み済みFPGA実装基板SSDAC128_I2SDual 27000円
・書き込み済みFPGAのみ搭載した基板です。
・すべて手実装です。

・納期:1週間程度(受注生産)

④全部品実装基板セット(動作確認済み)、AmaneroCOMBO384、電源トランスセット 98000円
・全部品を実装したSSDAC128_I2S基板、DPEQ000基板およびAmaneroと電源トランスのセットです。
・すべて手実装です。
・AC電源ケーブルおよび電源スイッチ、ヒューズ等はご用意ください。
・納期:2~3週間程度(受注生産)

⑤生基板セット 4700円
・AK4490EQおよびAK4490REQに対応したSSDAC128_I2SとDPEQ000の生基板セットです。
・生基板のみの販売です。FPGA用pofファイルをダウンロードしてお使いいただけます。
・納期:3~5日程度


購入ご希望の方は表題に「SSDAC_RIAA基板頒布希望」とお書きのうえ、
dj_higo_officialアットhigon.sakura.ne.jp(アットを@に換えて)までメールにて
お申し込みください。
※ご希望のセット番号と、お名前、ご住所、電話番号をお書きください。
折り返し、代金振込先等のご案内をお送りします。

製造・頒布はSLDJ合同会社が行います。

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2023年10月28日 (土)

デジタルRIAAフォノイコライザ・サブ基板(基板頒布あり)

Dpeq_titlepic
写真1.デジタルRIAAフォノイコライザ・サブ基板を搭載したSSDAC128_I2S基板
128倍スーパーサンプリングD/Aコンバータ基板SSDAC128_I2Sに対し、サブ基板を追加して、FPGAを書き換えることでデジタルRIAAフォノイコライザを構成しました。


【参考記事】
RIAAフォノイコライザをIIRデジタルフィルタで実装する ①準備編
RIAAフォノイコライザをIIRデジタルフィルタで実装する ②係数計算編
RIAAフォノイコライザをIIRデジタルフィルタで実装する ③シミュレーション編
RIAAフォノイコライザをIIRデジタルフィルタで実装する ④実装・評価編
RIAAフォノイコライザをIIRデジタルフィルタで実装する ⑤Octaveによる位相検証


以前、FPGAによるデジタル回路でRIAAフォノイコライザを構成する検討しましたが、今回はその総集編として、SSDAC128_I2S基板にサブ基板を追加する形でデジタルRIAAフォノイコライザを製作しました。ADCスペックは96kHzサンプリング24bitです。

もともと、デジタルフィルタでフォノイコライザを製作することにはあまり意味がないと考えていました。
というのは、レコードをよい音で聞こうと思ったら、まじめに作ったCR型のフォノイコライザを通して、アナログアンプで増幅して聴けばよいと考えていたからです。
それなら、なぜデジタルRIAAイコライザを作ったのかというと、デジタルフィルタとFPGA(VHDL)の練習をするのにとてもよい課題だと思われたからです。
当時バラックでデジタルRIAAイコライザを組み立てて、動作を確認してデータをとり満足したので、もう作る必要はないと考えていましたが、SSDAC基板が完成した今、USB入力インタフェイスであるAmaneroの代わりに、I2Sを出すことのできる小基板を載せれば、SSDAC基板は汎用のオーディオDSP基板として使えるということに気がつき、その応用例としてデジタルRIAAフォノイコライザを作ってみました。

実際に作って音を聴いてみると、思いのほか音がよいことに驚きました。
アナログでフォノイコライザを組む際には、イコライザ回路に使うコンデンサに何を選ぶかに悩まされ、ここでお財布とも相談する必要があったりします。
その点デジタルフォノイコライザでは、コンデンサはカップリングとパスコンや平滑コンしかないのであまり悩む必要はなく、主に音質に影響を与える部品はプリアンプのOPAMPにほぼ限られ、ソケットにしておけば後から変更も可能です。
今回はプリアンプの出力をRCAで取り出せるようにしたので、パソコンにつないでレコードの生音をリッピングして、パソコンのソフトでイコライザの検討をするなど、いろいろな応用ができます。

今回製作したサブ基板を写真2に示します。

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写真2.デジタルRIAAフォノイコライザ・サブ基板

このサブ基板を、SSDAC128_I2S基板のAmaneroの代りに挿し、FPGAの回路をデジタルRIAA回路に書き換えることで、デジタルRIAAイコライザ基板として使えるようになります。

主な特徴は次の通り

・ADCデバイスにPCM1808(96kHz24bit)を使用
・プリアンプゲインは0~470倍可変(ジャンパピンにより0~47倍も可)
・プリアンプ出力RCA端子搭載により、パソコンなどの外部機器へダイレクト出力が可能
・Amaneroを使用して、ダイレクトリッピングした音楽信号をパソコンから入力してRIAAイコライジング出力が可能
・プリアンプ用のOPAMPは2回路入りDIP8PINを採用し、ソケットとすることで換装可能
・出力はDAC8820、AK4490、PCM5102のすべてから選択可能
※FPGAをデジタルRIAAに書き換えると、スーパーサンプリングは機能しません。NOSまたは各DACデバイスのオーバーサンプリング処理となります。

詳しい仕様は、この記事冒頭にリンクした過去記事と、下にリンクした資料をご参照ください。

製作マニュアル
図表
取扱説明書
FPGAオブジェクトファイル(10M08SCE144C8G用)

次の2種類を頒布します。(すべて税、送料込み)

①全部品実装基板(動作確認済み)5800円
・すべて手実装です。
・OPAMPはNJM4556AD
・納期:2週間程度(受注生産)

②生基板 1600円
・生基板のみの販売です。

※本基板を使用するには、別途SSDAC128_I2S基板が必要です。

購入ご希望の方は表題に「DPEQ基板頒布希望」とお書きのうえ、
dj_higo_officialアットhigon.sakura.ne.jp(アットを@に換えて)までメールにて
お申し込みください。
※ご希望のセット番号と、お名前、ご住所、電話番号をお書きください。
折り返し、代金振込先等のご案内をお送りします。

製造・頒布はSLDJ合同会社が行います。


ぜひお試しください!

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2023年10月16日 (月)

各種SSDAC基板 頒布再開のお知らせ

FPGA入手難につき、各種SSDAC基板の頒布を中止しておりましたが、

このたびようやくFPGAが入手できましたので、頒布を再開いたします。

引き続きよろしくお願いします。

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2023年9月 6日 (水)

CH32V003をArduinoで使う

少し前に秋月電子でCH32V003F4P6という32bitマイコンが50円で売られていて、安さが魅力的だったので5個ばかり買って引き出しにしまってあった。
調べてみるとArduinoで使えるらしいので、設定してみた。
Arduinoでシリハロができるまでの手順を書いておく。

シリハロってなにかって?
シリアルでHello Worldの略だ。
いまどきはLチカよりシリハロでしょう。なにしろ外付け部品がいらないので楽チン。

①CH32V003を変換基板にはんだ付けして、WCH-LinkEと次のように接続する

CH32V003     WCH-LinkE
9  VDD        3V3
7  VSS       GND
18 SWIO      SWDIO
2  UTX       RX

※この中で重要なのは、一番下のUTXとRXの接続。これがないとArduinoのシリアルモニタが使えない。

②パソコンにWCH-LinkUtilityをインストールする
こちらからWCH-LinkUtility.zipをダウンロードして、ホルダごと適当な場所に展開して、WCH-LinkUtility.exeを実行する。

③WCH-LinkEを接続する
パソコンのUSBポートにWCH-LinkEを接続し、デバイスマネージャで認識していることを確認する(図1)。

Wch1
図1.WCH-LinkEが「WCH-LinkRV」として認識されている。

※もしここでビックリマークなどがついて正常に認識されていない場合は、WCH-LinkEをパソコンから外し、WCH-LinkUtilityのホルダのDrv_Linkの中にあるWCHLinkDrv_WHQL_S.exeを実行し、WCH-LinkEを再度接続する。


④WCH-LinkUtilityからCH32の設定をする
図2に示すように、①と②の設定内容を確認し、③のSetボタンを押す。

Wch2edit_20230906221101
図2.WCH-LinkUtilityでWCH-LinkEの設定をする


④ArduinoにCH32V00xのボードを追加する
Arduinoを起動して、"ファイル" の "基本設定" の "追加ボードマネージャのURL" に
https://github.com/openwch/board_manager_files/raw/main/package_ch32v_index.json
を追加し、"ツール" の "ボード" の "ボードマネージャ" の検索で "ch32" を検索すると"CH32 MCU EVT Boards by WCH"が出てくるので、これをインストールする。

⑤ArduinoのCOMポートを設定する
デバイスマネージャでCH32が接続されているCOMポートを確認して、Arduinoのポートを設定する。

⑥テストプログラムを実行して動作確認する
これが無事に動けばシリハロ完了(図3)。

Wch3
図3.シリハロ完了


というわけで、CH32V003はArduinoで使えることがわかりました(^-^)

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2023年8月26日 (土)

洗濯機NW-D6CXの給水弁の修理

【20230904追記 ゴムパッキン交換編】
下記の元記事に書いたとおり、洗濯機NW-D6CXの給水弁のゴムパッキンが破れて水が入らなくなってしまい、破れたゴムパッキンを接着剤でふさいで一週間ほど使っていたが、どうも止水時に「チー」というごく小さい音がする。どうやら少量だが水がもれているようだ。そこでふたたび給水弁ユニットを取り出し、ゴムパッキンを点検したところ、接着剤が白化し、接着が剥がれてしまっているようだ(写真1)。やはり破れたゴムパッキンを接着剤で補修するのは無理だったようだ。

Pkn_ng
写真1.白化して剥がれてまった接着剤

給水弁ユニットは品切れだったが、その内部のゴムパッキンだけ交換できれば修理することができるので、ゴムパッキンが売られていないか探したところ、amazonにそれらしいものがあった(写真2、写真3)。

Pkn_b
写真2.ゴムパッキン1 ゴム面に白い突起が2つある


Pkn_a
写真3.ゴムパッキン2 ゴム面の突起はオリジナルと同じ1つ


写真2のゴムパッキン1には寸法図がある(写真4)。

Pkn_dim
写真4.ゴムパッキン1の寸法図


オルジナルのゴムパッキンは、写真4の厚さ9.5mmの部分が実測で14.5mmで、この部分が違うが、その他はほぼ同等だ。
やってみないとわからないと判断して、上記2種類のゴムパッキンを購入して動作を確認してみた。

実際に送られてきたゴムパッキンを写真5,写真6に示す。いずれの写真も真ん中の黄色いものがもともと付いてたオリジナルのゴムパッキン、左右が今回の購入品。

3pkns_1
写真5.オリジナルと購入品のゴムパッキン

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写真6.オリジナルと購入品のゴムパッキン


給水弁ユニットを開けて、写真7のようにゴムパッキンを今回購入したものに交換する(右上の白いゴムパッキンが交換品)。


Pkn_change
写真7.給水弁ユニットの破れたゴムパッキン(右上)を交換する


今回購入した2種類のゴムパッキンを付けて、それぞれ動作を確認したところ、どちらも問題なく給水、止水の動作ができた。
今回はオリジナル品と同じく、ゴム面の突起がひとつのもの(写真3 ゴムパッキン2)を採用することにした。

そういうわけで、こんどこそだいじょうぶだと思う。

治ってよかった\(^o^)/



【20230826元の記事】
20年使ってきた全自動乾燥機付き洗濯機HITACHI NW-D6CXが、給水ができずC1エラーを吐いて止まるようになってしまった。
これは典型的な給水弁故障で、給水弁の中のゴムパッキンが破れたり穴が開いたりした場合に起こるらしい。
故障時に水が入りっぱなしになるのではなく、水が入らなくなる、という設計はすごいと思う。給水弁の動作はこちらで説明されている。
今回のような給水弁故障の場合、通常は給水弁ユニットを丸ごと交換するのだが、この機種に使われる給水弁ユニットNW-D8CX 038がどこも品切れで、生産終了となっているため入手は難しそうだ。
給水ができないとはいっても、チョロチョロとは水が入るのでここ2週間ほど騙し騙し使ってきたが、それもしんどいので修理できないものかと考えて、とにかくバラして故障箇所を見て検討することにした。

結果からいうと、想像したとおりゴムパッキンが破れていて、通常ならあきらめるしかない状態だったが、ダメ元で接着剤でゴムパッキンの破れを塞いだところ、なんとか給水はできるようになって、どうやらもうしばらく使えそうだ。

今回の作業で最も困難だったのは、洗濯機の上部パネルの取り外しだった。やり方がわからず、給水弁ユニットを取り出すまでに一週間以上要してしまった。ネジの締め付けトルクが猛烈に高く、通常のドライバーではお手上げだったが、幸いねじ頭が六角だったため、対辺7mmの六角ドライバー(いわゆるナット回し)で対応した。またネジを外しても、上部パネルは強固なパッチン止め(押し込むとツメがかかってロックされる機構)になっていて、ここでほぼ一週間費やしてしまった。図面がないパッチン止めの機構は、無理やり力をかけて破損してしまうと取り返しがつかないので、慎重さが求められる。
次の難関は給水ユニットの本体からの取り外しで、これもフレームのツメをドライバーでこじ開けないと取り外せない。
そして最後の難関は給水弁ユニットの分解。給水弁ユニットのネジはピン6ロブといわれる特殊ネジで、通常ならあきらめるところだが、幸い工具箱にこのドライバーセットが入っていた。

とにかく
「ぜったいに素人には手を出させねえ!」
という、メーカー側の非常に強い意志が感じられる造りだ。

実際の作業内容を以下に紹介する。(なお参考にされる場合は自己責任でお願いします。)

1 ACプラグを抜く

2 給水用の水道の蛇口を閉め、給水ホースを外す

3 上パネルを外し、給水弁ユニットを取り出して修理する

①上面パネル奥2箇所のネジ蓋を開け、ネジを外す(図1)
ただし、このネジは締め付けトルクが猛烈に高く、ジャストサイズのプラスドライバー3番ビットでも歯が立たなかったため、対辺7mmの六角頭をナットドライバーで回して外した。

1_20230826182001
図1.背面側の2箇所のネジ穴の蓋を開けて、ネジを外す


②左右の手前側カバーを外す(図2)
手前側カバーは、ツメがかかってロックされているので、手でこじり外すかすきまにマイナスドライバーなどをこじ入れて外す。
左右ともカバーを外すとネジがあるので、これを外す。

6_20230826182001
図2.手前側左右のカバーを外すとネジがあるので外す


③洗濯機の蓋を外す
・蓋の左ヒンジは奥に赤い樹脂ツメがあるので、これを右にスライドして止め軸を引っ込める(図3)。右ヒンジはワイヤスプリングが付いているので、ピンセットなどで外す(図4)。止め軸とワイヤスプリングを外したら、左右それぞれのヒンジをマイナスドライバーなどでこじって、手前側に引いて蓋を外す。

3_20230826182001
図3.蓋の左ヒンジの赤い樹脂ツメを右にスライドして、止め軸を引っ込める

4_20230826182001
図4.右ヒンジのワイヤスプリングを外す


④固定ピンを引き抜いて(図5)、洗剤投入口を外す(図6)

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図5.蓋後部にある、洗剤投入口ロックピンを外す

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図6.洗剤投入口を外す


⑤奥側の上面パネルを外す
図7のように奥側上面パネルの左右手前側からドライバーを差し込んで、柄を上に引き上げるようにしてバキバキとツメを外す。

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図7.奥側上面パネルの左右手前側からにドライバーを差し込んで柄を引き上げて外す


⑥給水弁ユニットから洗濯槽への配管のホースを、ホースバンドをゆるめて外す(図8)

5_20230826182001
図8.洗濯槽への配管ホースを、ホースバンドをゆるめて外す
黒いのが配管ホース、銀色がホースバンド。


⑦給水弁ユニットと洗剤クリーマーが一体となったユニットを、左右手前、右うしろ側および左奥の4箇所のネジを外してから手前のツメがかかっている部分をドライバーでこじり広げて外す(図9)

9_20230826182001
図9.給水弁ユニットと洗剤クリーマーを、手前側爪がかかっている部分をこじって外す


⑧給水弁ユニットを取り外す(図10)

10     
図10.取り外した給水弁ユニット

⑨給水弁ユニットのネジ(ピン6ロブ)を外して分解する(図11)
給水弁を開けると、図12のようになっているので、ゴムパッキンを外して点検する(図13)。

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図11.ピン6ロブネジを外して、給水弁ユニットを分解する


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図12.給水弁ユニットの内部
右上のゴムパッキンを外したところ。

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図13.ゴムパッキンを点検して破れを発見!

⑩ゴムパッキンの破れ部分が露出するように、ゴムパッキンを浮かせた状態で引っぱって固定するジグを作る(図14)
ゴムパッキンを浮かせるためのスペーサーは10セントユーロ硬貨がちょうどよかった。

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図14.ゴムパッキンを浮かせて固定し、破れた部分を露出するジグ。ネジに木綿糸を巻き付けてゴムパッキンを固定する。

⑪10セントユーロ硬貨と木綿糸を使って、ジグにゴムパッキンを浮かせた状態で固定して破れを露出し、そこに接着剤(コニシ ウルトラ多用途SU ソフト)を塗布して破れを塞ぐ(図15)
接着剤を乾かしてゴムパッキンの補修完了(図16)。

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図15.ゴムパッキンの破れに接着剤を塗布して塞ぐ

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図16.接着剤が乾いたらゴムパッキンの補修完了


⑫以上の手順を逆に行い、洗濯機を元の状態に戻す


以上、おおざっぱですが給水弁ユニット内部のゴムパッキンの補修を紹介しました。
これで給水は元通りジャバジャバと入るようになりました\(^o^)/

さて、あとどれくらい使えるか……


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2023年6月28日 (水)

4.5㎝スコーカーのBTL電流駆動(ラズパイPico SDプレーヤー)

Pico1

写真1.戦利品のSONY4.5㎝スコーカーとメディアプレイヤー
4.5㎝スコーカーはamazon段ボールに穴を開けたバッフルにはめ込み、アンプはオペアンプAD8534を使ったBTL電流駆動。


先日、手作りアンプの会のイベントで、SONY製4.5㎝スコーカーを4個100円でゲットしたので、何か使い道はないかと思い、SDプレーヤーを試作してみた。

このスコーカーは特性も型番もわからないのでネットで調べると、販売しているサイトが見つかった。なんと1個200ドル(@_@;
販売サイトは見つけたものの、結局特性はよくわからないまま。

とりあえず仕事で着手していたメディアプレーヤーにつないで音を出してみたところ、案外元気に鳴る。ただ、スコーカーということなので、帯域はおそらく300~5kHzくらいじゃないかと思われた。
ぼくはマルチウェイはあまりやる気がしないので、これを単発で鳴らす実験をすることにした。
帯域の狭いスピーカーを無理に駆動するなら電流駆動がおもしろそうだ。それならばそのついでにBTLもやってみることにした。
遠い昔(30年ほど前)、メーカーでのMOドライブ開発のときにアクチュエータドライバに使っていたHA13490というICがまさにBTL電流駆動のドライバで、こんな駆動方式はオーディオアンプでは見ることはないが、アクチュエータ駆動ではよく出てくる。その当時、「これでスピーカーを鳴らしたらどんな音がするんだろう?」と思ったが、30年経ったいま、それをやってみようというわけだ。

今回製作した回路は、SDプレイヤー部はラズベリーパイPicoにSDホルダーとタクトスイッチがついているだけのきわめてシンプルなもので、アナログ出力は122kHzのPWMで出力されるのでDACすらついていない。ソフトの起動時にポップノイズが出るので、それをミュートするためにオペアンプの電源をPicoからON/OFFできるようにしている。出力はPicoのPWM出力をオペアンプで受けてローパスをかけ、出力VRを経て一段バッファし、ヘッドホン出力のあとにBTL電流駆動パワーアンプがついている。使用したオペアンプはAD8534という4回路入りフルスイングオペアンプで、出力電流が最大250mAとれるので、Liion電池一本でスピーカーを駆動する。同じ内容の2回路のオペアンプAD8532は秋月で入手できる。
ソフトはGithubからもらってきたMicropythonで書かれたもの。このソフトをベースにボタン操作部分を追加した。対応フォーマットは44.1kHz16bitのWAVファイル。

実際に音楽を聴いてみると、3.7Vのリチウムイオン電池1本でけっこうよく鳴る。部屋でBGM用に使うには十分だ。消費電流はステレオで最大150mAほど。

せっかくなので、アンプを電流駆動にした場合と電圧駆動の場合の音圧特性をとってみた。測定条件はスピーカー軸上正面10㎝、測定系はminiDSP UMIK-1、およびソフトにREWを使用した。測定結果を図1に示す。

Capture

図1.音圧特性(赤:電流駆動 緑:電圧駆動


赤で示した電流駆動では、274Hzに大きなピークが出ていて、これはスピーカーのf0だと推定できる。電流駆動によってf0が大きく増強されている。また高域もインピーダンス上昇に伴って音圧が徐々に上昇している。
電圧駆動では低音がまったく出ない印象で、やっぱりスコーカー単発では無理があるように感じられるが、電流駆動することで低域が持ち上がり、どうにかこうにか聴けるレベルの帯域感になったように感じられる。

そういうわけで、30年越しのBTL電流駆動実験ができて満足です(^-^)

 

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2023年4月24日 (月)

各種SSDACの信号ひずみ率 THD+N の比較(20230506データ追加)

【20230506】SS128基板のPCM5102出力および市販DAC(AK4396、PCM2704、ES9018K2M)のデータを追加しました。

デジタル音楽データをスプライン関数で補間するSSDACについて、実際に波形がどのように補間されているかはこれまで波形を紹介してきたが、今回は1kHzの正弦波信号を再生した場合の全高調波歪率+雑音(THD+N)がどうなっているかを紹介する。
比較参考用として、同じ測定系で市販DACデバイスAK4396、PCM2704、ES9018K2Mの測定を行った(20230506追加)。

測定条件は次のとおり。

パソコンOS  :windows XP
正弦波発生   :WaveGene1.4    44.1kHz、F32bit
FFT       :WaveSpectra1.4  96kHz、24bit
サウンドカード  :SoundBlaster Premium HD

windowsXP上のWaveGeneで正弦波を発生させ、USBでSSDACのAmaneroに入力、
SSDACのアナログ出力をSoundBlasterのラインに入力し、WaveSpectraで測定した。

SSDACの測定結果を表1に、市販DACの測定結果を表2にそれぞれ示す。

表1. 1kHz正弦波再生時の全高調波歪+雑音(THD+N)
20230506thd_table2_20230506160801


表2.市販DACの1kHz正弦波再生時の全高調波歪+雑音(THD+N)
20230506thd_table3


スーパーサンプリングのTHD+Nが最小なのはSSDAC128基板AK4490出力の0.00268%、最大だったのは同基板PCM5102出力の0.00907%だ。これは+Nの部分が支配的だが、耳で聞いてわかるほどの差はない。
また、NOSのTHD+Nは多くが4%前後と、非常にわるい結果となっているが、これは信号周波数1kHzとサンプリング周波数44.1kHzのエイリアシングが出ており、測定系が96kHzであったために観測された(下記参照)。
PCM5102NOS出力のTHD+Nは他の4%前後より大幅に低い0.0933%になっているが、これは出力回路のローパスフィルタのカットオフが低いため、44.1kHz±1kHzのエイリアシングのレベル低下による。

代表例としてSSDAC128の16bitDAC、DAC8820の128倍スーパーサンプリング出力のFFTを図1に、同NOS出力のFFTを図2に示す。

Ss8820
図1.SS128のDAC8820スーパーサンプリング出力


Nos8820noise
図2.SS128のDAC8820 NOS出力


図1、図2の比較において顕著なのが図2のAで示したエイリアシングで、これがTHD+NがNOSで約4%になっている主な原因だ。信号周波数が1kHzに対して、サンプリング周波数が44.1kHzであるため、44.1kHz±1kHzのエイリアシングが発生している。
また、Bで示した範囲にもノイズが発生していることがわかる。
これらのノイズは、図1のスーパーサンプリング出力では抑えられている。

以上のとおりTHD+Nは同じスーパーサンプリングでも、デバイスやスペックの差により最小0.00268%から最大0.00907%と開きがあるが、音を聞く限り、この差はあまり音質に影響していない。
音の傾向に影響をもたらすのは、マルチビットかΔΣか、あるいは中間型のアドヴァンスドセグメントかの違いが大きいのではないかと思われる。

主観的な傾向としては、PCM1704、PCM1702およびDAC8820のマルチビットDACは表情が繊細、アドヴァンスドセグメントのPCM1795はビビッドで鮮烈、AK4490やPCM5102はそれらの中間のような印象がする。



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2023年4月16日 (日)

【修正情報】SSDAC使用時のWindows10の設定について

[Correction Information] Windows 10 settings when using SSDAC

パソコンからSSDACを使用する場合に、
過去記事「SSDAC使用時のパソコン設定について」においてCDからリッピングした16bit 44.1kHzサンプリングのWAVファイル再生について、windows10のコントロールパネル→サウンド→Amanero(使用する再生デバイス)のプロパティ→詳細で、「既定の形式」を「2チャンネル、16ビット、44100Hz(CDの音質)」を設定することとしていましたが、windows10の仕様(あるいは不具合)により、16bit設定時のみノイズが発生することを確認しました。つきましては、16bit設定を使用せず、24bitまたは32bit設定を使用してください。

【例】CDからリッピングしたWAVファイル(16bit 44.1kHz)を再生する場合、windowsの「既定の形式」を
●「2チャンネル、24ビット、44100Hz(スタジオの音質)」
●「2チャンネル、32ビット、44100Hz(スタジオの音質)」
のいずれかに設定します(16ビットは使わないでください)。

つまり、サンプリングレートを再生するファイルに合わせ、ビット深度は24ビットまたは32ビットを選択してください。

詳細については以下のとおりです。

When using SSDAC from a computer, regarding playing WAV files ripped from a CD at 16-bit 44.1kHz sampling in the past article "Regarding computer settings when using SSDAC", it was recommended to set the "default format" in Control Panel -> Sound -> Amanero (playback device used) properties -> Advanced to "2 channel, 16 bit, 44100Hz (CD quality)". However, it has been confirmed that noise occurs only when the 16-bit setting is used due to Windows 10 specifications (or a bug). Therefore, please use the 24-bit or 32-bit setting instead of the 16-bit setting.

For example, when playing a WAV file (16-bit 44.1kHz) ripped from a CD, set Windows "default format" to either "2 channel, 24 bit, 44100Hz (studio quality)" or "2 channel, 32 bit, 44100Hz (studio quality)" (do not use 16 bits).

In other words, please select 24-bit or 32-bit depth depending on the file's sampling rate for playback.

For more information, please refer to the following.


【詳細説明】

過去記事「SSDAC使用時のパソコン設定について」において、パソコンのサウンドの設定を、再生する音声ファイルのフォーマットに合わせるということを書いたが、
その後の調査で、パソコンのサウンド設定の「既定の形式」が16bit(44100Hz、48000Hz、88200Hz、96000Hzのすべて)の場合のみ、無音時にノイズが乗る現象を確認した。現象は以下のとおり。

●16bit 44.1kHzサンプリングフォーマットの1kHz正弦波Lchのみ(Rchは無音)を、パソコンのサウンド設定「既定の形式」を「2チャンネル、16ビット、44100Hz(CDの音質)」に設定して再生した場合の、AmaneroCombo384のI2S出力を図1に示す。

[Detailed Explanation]

In the past article "Regarding computer settings when using SSDAC," it was mentioned to adjust the sound settings on the computer to match the format of the audio file being played. However, after further investigation, it was confirmed that when the "default format" of the computer's sound settings is set to 16-bit (all of 44100Hz, 48000Hz, 88200Hz, and 96000Hz), noise occurs during silent periods. The phenomenon is as follows:

Figure 1 shows the I2S output of the Amanero Combo384 when playing only a 1kHz sine wave on the L channel (with R channel silent) of a 16-bit 44.1kHz sampling format, with the computer's sound settings set to "2 channel, 16 bit, 44100Hz (CD quality)" as the "default format."




3_20230416101101
図1.16bit 44.1kHz設定時のAmanero I2S出力
Figure1.I2S output of the Amanero Combo384 when playing only a 1kHz sine wave on the L channel (with R channel silent)


図1はAmaneroCombo384のI2S出力で、上の紫色の波形がDATA、下の緑色の波形がLRCKだ。
LRCKが”L”のときLチャンネル、”H”のときにRチャンネルのデータがDATAに出力される。
この元データは、Lチャンネルに1kHzが入っており、Rチャンネルは無音のためデータは無い。
ところが図1を見ると、データが出ないはずのLRCK=”H”の区間にノイズが出ている。このノイズの部分を拡大したものを図2~図4に示す。

Figure 1 is the I2S output of the Amanero Combo384, with the purple waveform at the top representing DATA and the green waveform at the bottom representing LRCK. When LRCK is "L", data for the L channel is outputted to DATA, and when LRCK is "H", data for the R channel is outputted to DATA. The original data in this case has a 1kHz signal in the L channel, and no data in the R channel due to it being silent.
However, as shown in Figure 1, noise appears in the interval where LRCK="H" when there should be no data outputted. Figures 2 to 4 show an enlarged view of this noisy section.




1_20230416101101
図2.ノイズパターン1
Figure2. Noise pattern1


2_20230416101101
図3.ノイズパターン2
Figure3. Noise pattern2




3_20230416101201
図4.ノイズパターン3(出力なし)
Figure4. Noise pattern3(No output)


図2において、MSBが16bitの最上位ビット、LSBが16ビットの最下位ビットを示しているので、このときのデータは
0000 0000 0000 0001
となっている。

図3においては、16bitすべてがHになっているので、このときのデータは
1111 1111 1111 1111
である。

図4においては、16bitのすべてがLになっているので、このときのデータは
0000 0000 0000 0000
である(つまりデータなし=無音)。

I2Sのデータは「2の補数表現」というフォーマットになっていて、たとえば16ビットのデータなら表1のようになっている。

In Figure 2, MSB represents the most significant bit of the 16-bit data and LSB represents the least significant bit of the 16-bit data. Therefore, the data at this time is 0000 0000 0000 0001.

In Figure 3, all 16 bits are set to "H," so the data at this time is 1111 1111 1111 1111.

In Figure 4, all 16 bits are set to "L," so the data at this time is 0000 0000 0000 0000 (i.e., no data = silence).

I2S data is in the "two's complement representation" format, and for example, for 16-bit data, it looks like Table 1.



表1.16ビットデータの「2の補数表現」
Table1."Two's complement representation" of 16-bit data.
2_20230416102901

16ビットデータとは、2の16乗=65536段階のデータであり、これを2の補数表現にすると、表1のように-32768~ +32767の範囲のデータとして定義される。
ここで、先ほどの図2~図4に示したノイズデータはどうだったかというと、-1、0、1の値が出ていることがわかる。
つまり、無音(DATA=0)であるはずのRチャンネルに、-1、0、1の値のノイズが出ているということだ。

windowsのサウンド設定の「既定の形式」を24bit 44.1kHzに設定した場合のI2S出力を図5に示す。

16-bit data refers to data with 65536 levels, which is defined as data within the range of -32768 to +32767 when represented in two's complement format, as shown in Table 1.
Regarding the noise data shown in Figures 2-4 earlier, it can be seen that values of -1, 0, and 1 are present.
In other words, noise with values of -1, 0, and 1 are present in the R channel, which should be silent (DATA=0).

Figure 5 shows the I2S output when the default format of the Windows sound settings is set to 24-bit 44.1kHz.




44100_24bit
図5.24bit 44.1kHz設定時のI2S出力波形
Figure 5. I2S output waveform at 24-bit 44.1 kHz setting.


図5ではRチャンネル(LRCK=H)の区間は正しく無音(データなし)の状態になっている。これは32bit 44.1kHzに設定しても同様だった。

以上の検証は、手持ちのwindows10パソコン3台、AmaneroCombo384およびAmaneroのコンパチ基板で確認したが、すべて同じ結果となった。

以上により、windows10において、サウンド設定の「既定の形式」を16ビットに設定すると、無音時にノイズが発生するため、
これを回避するために、「既定の形式」のビット深度は24ビットまたは32ビットに設定することをおすすめします。

In Figure 5, the interval for the R channel (LRCK=H) is correctly in a state of silence (no data). This was also the case when set to 32-bit 44.1kHz.

The above verification was confirmed with three Windows 10 computers, an AmaneroCombo384, and a compatible board from Amanero, all resulting in the same outcome.

Therefore, in Windows 10, setting the "default format" of the sound settings to 16-bit will result in noise during silent periods. To avoid this, it is recommended to set the bit depth of the "default format" to 24-bit or 32-bit.

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