DJ講座

2014年3月22日 (土)

サウンドカード内臓ミキサーBEHRINGER XENYX 302USB

きょうはサウンドカード内臓ミキサーBEHRINGER XENYX 302USBと、その他に使っているサウンドインターフェイスの測定と比較についての話題をお送りします。

3/21(金)春分の日のプレイリストはこちら

パソコンを使ってDJをする場合は、パソコンとサウンドカード、ヘッドホン、ケーブル類を持っていけばいいので身軽なのですが、たとえば公民館のような施設でパーティーを行う場合はDJミキサーなどはなく、設備のアンプにパソコンを直結するなどのケースが多々あります。
もちろんつなぐことさえできればプレイはできますが、音量やトーンコントロールはパソコンのDJソフトで行うよりも、現物のミキサーのツマミで行うほうが格段に操作性はいいですし、間違いも少なくなります。
DJコントローラーと呼ばれる操作パネルを使えば問題はないのですが、大げさすぎて荷物が増えるという欠点があります。
そこで、外付けの小さなサウンドユニットにボリュームとトーンコントロールがついているようなシンプルなものがないものかと探したところ、ありました!!

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ベリンガー製サウンドインターフェイス内臓3チャンネルミキサー XENYX 302USBです。
USB/LINEとマイク、プレーヤーの3系統が接続可能です。マイクは15Vファンタム対応、ASIOにも対応しています。
ベリンガーはドイツの音響機器メーカーで、とても安い製品が多いのでバカにする人もいるのですが、この会社は「2倍の性能を半分の価格で!」という経営方針のもと安く良い製品を世に出しているありがたいメーカーです。実際のところ値段に見合わない出来のよさと性能をもった製品が多く、ぼくも好きなメーカーのひとつです。
この製品はなんとアマゾンで3460円でした
(開発した人は泣いちゃうよ)。でもしっかりした作りで、シャシーは鉄でできているのでずっしりしていて、ケーブルに引きずられるようなこともないと思います。

そうはいっても、現場で使う以上は事前の評価は必要です。

そこで今回はこのミキサーの評価と、ついでに手持ちのサウンドカードの測定をしましたので報告します。
サウンドカードの測定比較は以前にも報告したことがありますが、今回はいくつか新しいアイテムもありますので、あらためてお送りします。

まずは結論から。測定結果を表1に示します。
測定条件は、DJに使用しているノートパソコンASUS X202E(WindowsXP SP3)に測定対象のサウンドカードを接続し、フリーのジェネレータソフトWaveGeneを使用して、1KHzのサイン波を0dB(フルビット)で出力し、まずこれをアンプに出力してクリップしていないことを耳で確認して、アンプをつないだ状態でテスターで出力レベルを測定します。テスターはこんな感じです。

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Photo_4

今回購入したXENYX 302USBは表の上から2番目に記載してあります。
ゲイン調整付きのミキサーですので、出力が際立って大きく取れるのが特徴で、接続先の機器のインピーダンスが高ければ8V以上、比較的低いものでも2V程度の出力が確保できますので十分ですね。ちなみにCDプレーヤの出力は2V前後のものが多いので、出力2Vというのが一つの目安となります。
今回の測定では、オーディオアンプ(入力インピーダンス90kΩ)とサウンドカードの入力(入力インピーダンス13kΩ)に接続した場合のそれぞれの条件で測定しましたので、現場でどんな機器が使われていてもおおむねこの範囲に入ると思います。

高調波歪率、S/N、周波数特性(f 特)は、測定対象のサウンドカードの出力をデスクトップパソコン(Core i7、Sound Blaster X-Fi)のAUXに入力し、フリーのFFTソフトWavespectraを使用して測定しました。生データは次の通り。

302usb
図1.
XENYX 302USB測定結果

高調波歪率(THD)とS/Nが画面の左側に表示されています。
次に、周波数特性です。

302usb_fr
図2.
XENYX 302USB周波数特性

周波数特性はホワイトノイズを再生して、これをWavespectraで取り込んで表示します。20~20KHzにわたってフラットであることがわかります。

ミキサー付きですから、他のサウンドカードに比べてどうしても歪率やS/Nでは不利になりますが、聴覚上問題のないレベルです。しかもこの値段ですから、一台持っていると重宝すると思います。



ところで、以前からサウンドカードを使用する際に、WindowsXPが自動認識する汎用のデバイスドライバと、メーカーがリリースしている製品専用のデバイスドライバで出力レベルに差があるということがあって、汎用のデバドラのほうが出力が大きいのであえてドライバの更新を行わないで使うということにしています。今回もデバイスドライバによる出力の違いを測定しましたので、表2に示します。

Photo

このように汎用デバドラのほうが出力が大きく出るものがあるので、今回の測定はノートPC内臓のRealtek以外はすべて汎用デバドラで行いました。


さて、今回測定したそのほかのサウンドカードの測定結果を紹介します。

まずは一番のお気に入りでいつも使っているSound Blaster Digital Music Premium HD SB-DM-PHDです。
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このサウンドカードはぼくが持っている中では音質がいちばん優れています。音が澄んでいて、大音量で鳴らしてもそれほど大きい音に聞こえないのです。
これはどうしてかというと、特性が優れているということはまず歪が少なく、次にノイズが少ないということです。そうすると耳障りな音が出にくいわけですね。表1の測定結果でも、歪率0.0018%、S/N79dBと、今回測定した中では非常に優秀です。耳で聴いた印象と測定結果が一致しました。
出力も2Vと大きく使いやすいです。

生データは次の通りです。

Sb_phd
図3.Premium HD SB-DM-PHD測定結果

周波数特性は問題なかったので省略します。

アマゾン
Creative USB Sound Blaster Digital Music Premium HD SB-DM-PHD



つぎはベリンガーのUCA222です。
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このサウンドカードは小型低価格でありながらASIOに対応しています。出力が1Vと小さめなのが残念ですが、歪率、S/N、周波数特性のどれも全く問題ありません。生データは省略。

アマゾン
BEHRINGER UCA222


次はUSBメモリーのような超小型のSound Blaster Play!です。
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これはなにしろ小さくて邪魔にならないので、非常用に一個持っておくと便利ですが、性能がちょっと残念です。表1に示した通り、出力が0.6Vと小さく、S/Nも悪いです。また周波数特性も今回測定した中で唯一問題がありました。

Play
図4.Sound Blaster Play!測定結果

まずノイズフロアがすごいですね。それでも実際に音を聴いてみるとこの特性の見た目ほどはひどくはありません。ただ、本体が振動を拾ってそれがノイズとして乗るという現象が出るので、やはりあまり積極的にお勧めできるものではありません。
また問題のあった周波数特性は次の通り。

Play_fr

図5.Sound Blaster Play!周波数特性

今回測定した中で唯一、20KHz手前で特性が落ち始めています。
カップリングコンデンサの質がわるいのかもしれません。

アマゾン
Creative USBオーディオ Sound Blaster Play! SB-PLAY


最後に参考測定した、ノートPC ASUS X202E内臓のRealtekサウンドです。
表1に示しましたが、歪率とS/Nがもっともすぐれています。これには驚きました。
これはノートPCのヘッドホン端子のデバイスなので、いつもはモニター用にしか使っていません。
ただ、優れているとはいっても出力レベルが0.8Vと小さく、これはお気に入りのPremium HD SB-DM-PHDと比べたらおよそ-8dBですから、総合的にはPremium HD SB-DM-PHDのほうが優れていると思います。
生データと周波数特性は問題がないので省略します。


今回の測定結果は以上ですが、いかがでしたでしょうか。
耳だけを頼りに音の良しあしを論じても、それは主観的な感想にしかすぎず、らちがあきません。聴感上の違いが必ず数値化できるか?といえばできないこともあるかもしれませんが、理詰めで考え、極力数値化する努力をしないと、技術的な議論にはならないのです。
今回は、お気に入りのPremium HD SB-DM-PHDの優秀さが数値的にも実証されたのでよかったと思います。

優れたフリーソフト、Wavespectra、Wavegeneを提供してくださるefuさん に大感謝です。

DJ HIGO

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2013年4月10日 (水)

圧縮音楽の罪

「音楽のネット配信が不振なんだってね。とてもいいことだ。CDまたはそれ以上のクオリティーを有する音楽メディアが見直されてもう一度音楽を聴く心地よさが思い出されればきっと音楽業界は息を吹き返すと思う。」

とフェイスブックでつぶやいたら、思いのほか多くの「いいね!」の反響をいただいた。

このブログでもDJ講座の中で音楽には圧縮音源は使わないことをおすすめし、私個人としては、一切の圧縮音源を排除することを宣言しているが、今回は圧縮音源の罪についてまとめておきたいと思う。

圧縮音源の代表的存在であるMP3とは、MPEG-1/2 Audio Layer-3の略であり、もともとはビデオ圧縮規格の音声部分である。
この圧縮規格の開発が始まったのは1990年前後。
私がはじめて入手したパソコンは1995年のFMVで、ハードディスクは500MB、OSはwindows3.1。
(正確には1980年頃に買ってもらったMZ-80K2が最初だが、これは考えないことにする)

音楽CD1枚のデータ容量が650MBであることを考えると、パソコンにCD1枚を丸ごと取り込むなどとうてい不可能であった。
それからwindows95,windows98を経て時は2000年。
このころになるとパソコンのハードディスクは標準で10~20GB程度まで増大したが、それでもCDを非圧縮で取り込もうとすれば20枚がいいところで、そもそも音楽をパソコンに取り込むという発想そのものがあまりなかったと思う。

そんなある日、「午後のこ~だ」という、フリーのMP3エンコーダソフトがリリースされ、音声ファイルの容量を1/10以下に圧縮できるというので実験してみた記憶がある。
この時の感想は、

音質的に「音楽には使えない」。

英語教材に使うには便利かもしれないが、これで音楽を聴く気にはなれなかったので、一度実験をしただけでほとんど興味を失ってしまった。


そもそもファイルの圧縮技術というのは次の2つに大別される。

・可逆圧縮

・非可逆圧縮

可逆圧縮はlzhやzipに代表される圧縮方法で、これは解凍すれば完全にもとのデータが復元される。


一方非可逆圧縮は書いて字の如しで、2度と元のデータには戻せない。

ごく簡単に原理を説明してみよう。

たとえば次のような文字列があったとする。

愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛

これを

愛が30個

と表現すると、文字数が30文字から5文字に圧縮された。しかも完全に復元可能だ。
これは可逆圧縮である。


では次のようにしたらどうか。

①文字を一個おきに間引く
愛 愛 愛 愛 愛 愛 愛 愛 愛 愛 愛 愛 愛 愛 愛

②詰める
愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛

これで30文字が15文字に圧縮された。

これを戻すには、1文字ごとにスペースを挿入し、

愛 愛 愛 愛 愛 愛 愛 愛 愛 愛 愛 愛 愛 愛 愛

つまり、無条件に間引いて詰めることで文字数は半分に圧縮されたが、もとの大きさに戻すと愛は半分になってしまった。
空白部分は失われてしまったのでもとに戻すことはできない。こんなにスカスカな愛はいやだ。

これがMP3などに代表される非可逆圧縮である。
この例では圧縮率50%つまり情報の半分を捨てていることになるが、実際のMP3では良くて約20%、標準で10%程度であるから、愛の90%は捨ててしまっている。
10%の愛なんて悲しすぎやしないか?

とまあ、ごくごく大雑把に説明するとこのような感じになる。
ただ、実際には間引いて空白になってしまったところは推測で埋めるなどの工夫が施されていて(これをデータ補間という)、音楽圧縮では90%を捨てているにもかかわらずさほど違和感がないように仕上げている。
まるで結婚詐欺だ。
この、”工夫”の部分がどんどん巧妙化して、いかにしてデータ容量を減らしたうえで聴覚上の違和感を減らしていくか、というのがこれまでの非可逆圧縮技術の歩みであった。
ただし、繰り返しになるが、いくら工夫しようともこれは見せかけであって失われたデータは2度と取り戻すことはできない。


それでも、


「聴覚上問題がなければそれでいいのではないか?」


という議論がネット上でゴマンと展開されている。


それではたとえばこんな思考実験はどうだろう。

ある料理があるとする。「肉野菜炒め」でも、なんでもいい。
技術の進歩で、栄養がまるで無いのに味や食感はほとんどそっくりというものができたらどうか。
これだけを食べ続けたら重大な結果になることは想像できるだろう。(ダイエットにはいいかもしれないが)
そもそも食事の目的は、「味覚を満たす」ことではなく、「栄養を摂取する」ことだ。
味覚を満たすのは付随的なことであって目的ではないのだ。


音楽を聴く目的が何だったかをよく考えれば、同じことが言える。
音楽を聴く目的は、「音楽によって表現された情報を摂取する」ことであって、単に「聴覚を満たす」ことではなかったはずだ。
そう考えれば、「聴覚上問題がないように感じる」からそれでいいということではないということがご理解いただけるのではないだろうか。


つまり、提供する側の利益や利便のために、情報が大幅に削除された圧縮音源によって音楽を提供することは、栄養のない食事を提供することと似て、かなり悪質な行為である。
知らず知らずのうちに音楽を聴く楽しみが薄れていき、そのうちに音楽やダンスに対する興味までもが失われていってしまう。

これはあくまでも自論だが、イベントにおいて圧縮音源を使い続けることによって、まず客層が変化し、次にお客さんが徐々に減り、
ついにはお店なりイベントなりが衰退、または消滅するのではないか。

(去年終了した某一流ホテルのイベントとかね。)
もちろんイベントや店がダメになる原因はそれだけではないが、要因としてはかなり大きいのではないかと思う。
ただ、悪影響の出かたがゆるやかで時間がかかるため、わかりにくいのだ。


そして長い目で見れば圧縮音源を提供する側もさらには音楽業界も大損しているということになる。


ここで私が悪であると主張する圧縮音源は、代表的なところではMP3、AAC、MP4、WMAなど。
推奨する非圧縮フォーマットはCDと同等かそれ以上のWAV、AIFFなどがある。


もしこの記事を読んで賛同していただけるなら、まずはMP3で音楽を聴くことをやめることお勧めします。
CD(または同等以上の音質)(注)で聴けば、音楽を聴く喜びが10倍に増えることをお約束します。


(注)MP3をCD-Rに焼いても音質は戻りません。ここでは市販の生CDか、それを非圧縮でリッピングしたデータ(WAV)再生を示しています。

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2012年8月15日 (水)

【DJ講座上級編6】 サウンドカードの設定

前回までで使用するDJ用パソコンの準備が整いました。
今回は増設したサウンドカードと既存のサウンドカードの設定についてお話します。

サウンドカードを2系統搭載する意味は、1系統をメインの出力に、もう一方をモニタヘッドホン用に使用するということです。
私が使っているソフトMixVibes HOME Editionを例に、サウンドカードの割付について説明します。

メニューの初期設定からオプション→サウンドタブを選ぶと、次のオーディオインターフェイス設定画面が出ますので、マスター出力用とモニター出力用のサウンドカードをそれぞれ選択して設定します。

Mixvibessettei

簡単ですね。これでスピーカーから流すメインのマスター出力と、ヘッドホンモニター用の出力が別々に出ますので、プレイ中にヘッドホンを使って別の曲をモニターすることができるようになりました。
任意のサウンドカードが使用できるDJソフトではほとんど同様に設定できると思います。

複数のサウンドカードを使うことで、DJ用ではない一般の音楽再生ソフトでDJプレイを行うことも可能です。たとえばフリーソフトのGOM PLAYERという音楽/動画再生ソフトがありますが、これは複数立ち上げが可能なソフトなので、2つ立ち上げておいて1つをメインの再生用に、もう片方をヘッドホンモニタにして選曲用に使うということができます。

Gom0
GOM PLAYERの環境設定ボタンを押すと、各種の設定ができます。

Gom1
「GOM PLAYERを複数起動する」にチェックを入れる

Gom2
起動したGOM PLAYERごとに、出力先の設定をする。

このように、スピーカーへのメイン出力用のプレイヤーと、ヘッドホンモニター用のプレイヤーを別々に起動しておけばDJができます。

それではDJソフトがいらないではないか?思うかもしれませんが、やはり専用に開発されたDJソフトの方が、ピッチコントロールや自動クロスフェイド(自動的にフェイドアウト→フェイドインする機能)、イコライザー、区間リピート、自動ピッチ合わせなどなど、便利な機能がたくさん搭載されています。

各ソフトの使い方については、マニュアルやネットを参考に、各自使いこなしていってくださいね。あとは実践あるのみです。

これにてDJ講座の技術論は終了です。

【おまけ】
DJ用に限らずノートPCの電池を長持ちさせる方法を書いておきます。
ノートPCに使われている充電池はリチウムイオン電池というものです。
この電池の特徴は、

☆フル充電状態や空の状態が長時間続くと劣化が早い

ということです。
ノートPCを使用する際は、コンセント挿しっぱなしではフル充電状態が長くなりますので劣化が早くなります。コンセントがあるところでは、電池だけで一時間程度使って、あとは電池を外してコンセントで使うのがいいと思います。

【おまけのおまけ】
リチウムイオン電池が登場する以前の充電池であるニッカド電池やニッケル水素電池は、完全に使い切ってから充電する方が性能が発揮され、長持ちしていました。
しかしリチウムイオン電池という新しいタイプの電池はまったく性質が違うので、使い切りや満タン状態が苦手なのです。
たとえばケータイ電話もリチウムイオン電池ですが、ケータイは常に電源が入っていますから、フル充電の状態はあまりありません。それに帰宅したらすぐに充電しますから完全に空になることもほとんどありませんね。リチウムイオン電池にとって理想的な状態です。
パソコンの場合は、コンセント挿しっぱなしで使われてしまうとかなり不利な上に、バッテリーパックは複数の電池が直列になっていますから、直列の電池のうち一個でもダメになったらそれでおしまいなのです。
じょうずに使って長持ちさせましょう。

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2012年8月14日 (火)

【DJ講座上級編5】 サウンドカードの増設

いよいよDJ用パソコンセットアップの最終段階です。
今回はサウンドカードの増設についてお話します。

DJをする場合、フロアのスピーカーを鳴らすメインの出力と、次の曲の選曲などに使用するヘッドホンモニター出力の2系統の出力が必要です。
通常ノートPCにはヘッドホンジャックがついており、ここから1系統は出すことができますが、もう1系統は追加する必要があります。
ノートPCの場合はインターフェイスカードとしてPCMCIAが一般的ですが、安価なネットブックにはスロットがついていませんし、PCMCIAのサウンドカードもほとんどないことから、ここでは外付けのUSBサウンドカードを追加することとします。

さて、数ある外付けUSBサウンドカードからどれを選べばいいのかということですが、まともに動作するものであれば音質にはほとんど問題はないと思っていいと思います。
ただ、前回のお話に出てきたように、CDプレイヤーの出力レベルが2Vなので、できればそれに近い出力レベルを持ったものが使いやすいです。PCの出力は通常DJミキサーに接続するわけですが、DJミキサーにはCDJがつながっていて、状況によってはPCDJとCDJの切り替えをする場面があります。その場合、CDJとPCDJの出力レベルに隔たりがあると使いにくいということになります。
そういうわけで、出力が2Vのサウンドカードがあればベストです。
ところが出力レベルが仕様に明示されているサウンドカードはほとんどないのです。これは不思議なことです。
私がこれまでに独自に測定したサウンドカードの出力レベルを次のとおり公開しますので、参考にしてください。
測定方法は、信号発生用のフリーウェアWaveGeneを用いて0dB(最大出力)で1KHz正弦波を出力し、ヘッドホンにてひずみがないことを確認し(ひずみがある場合はひずみがなくなるレベルまで下げて)、そのときの出力レベルをアナログテスターのACVレンジで測定します。
WaveGene作者のefu氏に感謝します。(WaveSpectraと同じ作者様です。)


【サウンドカード出力レベル測定結果】

USB Sound Blaster Digital Music Premium HD SB-DM-PHD
120813_230802

出力レベル:2.0V(注)
(注)ちょっと不思議なサウンドカードで、デバイスドライバにWindowsXP自動認識のもの
Microsoft 2001/07/01 5.1.2535.0
を使用すると出力2.0Vとなり、メーカー純正のデバイスドライバ
CreativeTechnology 2010/04/09 1.2.2.0.0
を使用すると出力は1.15Vとなります。
よって、WindowsXP自動認識状態で使用することをおすすめします。


Creative USBオーディオ Sound Blaster Play! SB-PLAY
120813_230902

出力レベル:0.6V
USBメモリーのような形をしたサウンドカード。
出力が低いのと、指で弾くと「ごわん」というノイズが乗るので、あまりおすすめできない。


③ONKYO SE-U33GXV(B)
120813_230901_2

出力レベル:0.15V
このサウンドカードは高音質をウリにしているが、0.15Vでは使うことはできない。
設計思想が根本的に違うのかもしれない。


④PCI Express Sound Blaster X-Fi Titanium
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出力レベル:2.25V
デスクトップで使っているサウンドカード。参考のため測定。
今回の測定の中では最高値で、CDプレーヤーをも上回っています。


⑤RealTek(U100Plus内臓)
出力レベル:1.0V
PCDJ用にメインで使っているネットブックU100PLUSのヘッドホン用サウンドカード。参考測定。


⑥AMD HD Audio(P6Tオンボード)
出力レベル:1.0V
デスクトップPCのマザーボードに搭載されているサウンドカード。参考測定。



そういうわけで、現在のところ、
USB Sound Blaster Digital Music Premium HD SB-DM-PHD
をWindowsXPの自動認識の状態で使用する、というのがおすすめです。

【実装の様子】
120813_231301

白いのがネットブックです。(撮影のため閉じています。)
サウンドカードは、ネットブックの屋根(液晶の裏)にマジックテープで貼ってあります。
PCとUSB接続(左側のグレーのケーブル)され、青いピンケーブルでメイン出力が出ています。
モニタ用ヘッドホンは、右側のヘッドホンジャックに挿しています。


これでDJ用PCのセットアップはほぼ完了しました。
次回はDJソフトのサウンドカード設定と音出しについてお話する予定です。

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2012年8月13日 (月)

【DJ講座上級編4】 PCの音声出力不足について

DJとまではいかないまでも、パソコンをミニコンポやミキサーにつないでCDの代わりに使おうとしたら音量が小さくて実用にならなかった、という経験をしたことのある人がいると思います。
今回は、サウンドカードのセットアップの前段階としてパソコンの音声出力レベルのお話をしておきます。

パソコンの音声出力が小さい原因はいくつかあって、それらが重なっているというケースが多いと思います。その原因とはおおむね次のようなものです。

①サウンドカードの出力仕様がもともと小さい
②パソコンのボリューム設定が最大になっていない
③圧縮音源を使っている

これらについて順に説明していきます。

①サウンドカードの出力仕様がもともと小さい
まず何を基準とするかですが、CDプレーヤーを基準にしたいと思います。
標準的なCDプレーヤーの出力は0dB出力時(最大信号出力時)で2.0Vrms(実効値)となっている場合が多いようです。CDは2V。これを頭に入れておいてください。
サウンドカードの出力(つまりパソコンの出力)は、私の手持ちのサウンドカードを測定したところ、0.15V~2.25Vと、モノによってかなりのばらつきがあることが分かりました。(詳細については別の機会に説明します。)この中でもっとも多いのは約1Vのものでした。つまり一般的なパソコンの音声出力レベルは一般的なCDプレーヤーの半分である、ということになります。
ただ、半分ということは-6dBですから、アンプやミキサーのボリューム調整でカバーできる範囲だと思います。


②パソコンのボリュームが最大になっていない
原因としてはこれがいちばん大きいのではないかと思います。
使用している音楽再生ソフトに付いているボリュームのほかに、Windowsのシステムのボリューム設定があります。Windows画面右下の時計表示の左あたりにスピーカーの表示があると思いますが、これをダブルクリックするとスピーカーのボリューム設定画面が出ます。

Vr1_2
一番左のスピーカーと書いてあるフェーダー(ボリューム)がスピーカーのメインボリューム、その右に3つ並んでいるのが、ソース(音源)毎のボリュームです。
音楽ファイル(WAVE)を再生する場合はWAVEとスピーカーの両方を設定できますから、最大出力を得たい場合はWAVEとスピーカーのボリュームを最大にしておきます。
もし、ソース毎のボリュームのところにWAVEが出てこない場合はオプション(P)のプロパティで表示するコントロールのWAVEにチェックを入れます。
ここのボリュームが効かないという場合は、サウンドカードが複数入っている場合です。この場合もオプション(P)のプロパティーから該当するミキサーデバイスを選択してからボリュームの最大設定をします。

Vr2

この例では、パソコンにもともと内蔵されているRealtek HDというサウンドカードのほかに外付けのサウンドカード(USB Audio CODEC)を接続しています。

ここで説明したボリュームが2段階、それに音楽再生ソフトのボリュームが1つありますから、もしこれらがすべて80%の出力になっていたとすると、

0.8x0.8x0.8=0.512

つまりトータルで50%の出力になってしまいます。

③圧縮音源を使っている
これまで、ここでは圧縮音源をつかわないという前提で説明をしてきましたが、念の為に圧縮音源を使用した場合の信号レベルの低下について説明しておきます。
CDからのリッピングを行ってmp3にしてしまった場合、これが生CDからの1回目であれば音量低下はそれほど起こりませんが、繰り返し圧縮リッピングを行った場合、つまり

生CD→リッピング(圧縮)→CD-Rに焼く→(人にあげる)→(もらった人が)リッピング(圧縮)→CD-Rに焼く→(人にあげる)・・・・・・・・・・・・・

ということを繰り返すと、音質がどんどん劣化していくと同時に音量レベルも小さくなっていきます。音量レベルが半分位になってしまった圧縮ファイルなどはわりとよく見かけます。


以上がPCで音声出力レベルが低下する主な原因です。
これらが重なっている場合を考えてみますと、サウンドカードでおよそ1/2、ボリューム設定でおよそ1/2、圧縮音源でおよそ1/2であれば、

1/2 x 1/2 x 1/2 = 1/8 =0.125 (12.5%)

ですから、およそ1/10になってしまいます。音量が出ないわけですね。
このうち設定や注意によって避けることができるのはボリューム設定と圧縮音源の排除ですから、残るはサウンドカードの出力で、これがCDの1/2です。最初に書いたとおり、1/2程度の音量低下であればミキサーやアンプのボリューム調整でカバーできると思います。



裏技
正しくリッピングしたWAVファイルでも、元の録音状態によっては音量が小さくてどうしても調整しきれないということもあります。そんな時の秘密兵器として用意しておくと便利なアイテムがあります。

え む し い ト ラ ン ス ~(ドラえもんの声で)

MCトランス。

120813_163502

大きさは単3電池くらいです。
これはレコード再生用のMCカートリッジという、音はいいけど出力レベルが小さいというカートリッジ(レコード針)の出力レベルを増幅する目的で使用する昇圧トランスです。
これをピンケーブルとアンプ(またはミキサー)のあいだに入れます。

120813_163801

MCトランスといってもたくさんの種類がありますが、ここで紹介しているのはSONYのHA-T10というもっともお手軽なものです。
昇圧比は26dBですから、およそ20倍です。上に書いたすべてのケースに対応できるだけの倍率ですね。
ただし条件があって、接続先の入力インピーダンスが十分に高くないとうまく機能しません。(インピーダンスは踊りの種類ではなく工学用語です。)
簡単にいうと、ミニコンポやラジカセなどに接続する場合はおおむねOK。
ミキサーなどのPA機器に接続する場合はダメなことがある。
これは現場の装置によって違うので、うまいこと使えればラッキーということですね。

音量の問題が完全に解決できない場合は、万一のために1組持っておくと重宝することがあります。ヤフオクをみていると、ときどき2000円~10000円くらいで出ています。

さて、そろそろ涼しい時間となってきました。熱い夜遊びに出かけましょう。
次回はサウンドカードの増設と設定についてお話する予定です。

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2012年8月 5日 (日)

【DJ講座上級編3】 DJ用PCのセットアップ(2)

今回は、音飛びを起こさないためのWindowsXPの設定について。

前回予告したとおり、次の設定について順番に説明します。

①自動デフラグをOFF
②ネットワークを無効化(有線、無線ともに)
③ACPIを無効化
④使用しないハードウェアを無効化
⑤スタートアップやバックグラウンドの不要なソフトを無効化

私のこれまでの経験では、このうちの①、②がもっとも効果的で、この2つの対策だけでも音飛びが防げる可能性があります。
ただ、いくつかの要因が重複した時に問題となる恐れもあるので、音飛びの原因となりうるものはできる限りつぶしていくという方針でのぞみたいと思います。

①自動デフラフをOFF
デフラグというのはハードディスク内で本来ひとかたまりで記録されるべきデータがバラバラに記録されてしまったのを、整理して配置しなおすという機能です。
回転寿司の皿の色がバラバラだと計算しにくいので同じ色の皿同士をまとめるような作業です。
WindowsXPでは、パソコンが暇なときにバックグラウンド(裏方で)デフラグを行う設定になっています。これを自動デフラグといいます。
DJソフトでプレイし始めてある程度時間が経つと、パソコンは暇だと判断するらしく自動デフラグを始めます。すると音飛びや音割れが発生する場合があります。
そこで自動デフラグをOFFにしておきます。
手順は次のとおりです。

スタートメニュー→「ファイル名を指定して実行」→「regedit」と入力して「OK」ボタンをクリックしてレジストリエディタを起動します。そして次のとおりキーを辿り、

HKEY_LOCAL_MACHINE→SOFTWARE→Microsoft
 →Windows→CurrentVersion→OptimalLayout

 「OptimalLayout」を右クリックして「新規」-「DWORD値」を選び「EnableAutoLayout」というDWORD値を作成します。そして「EnableAutoLayout」をダブルクリックして「値のデータ」に半角数字で「0」を入力して「OK」ボタンをクリック。

これで自動デフラグが無効になります。面倒な人は次のファイルをダウンロードしてダブルクリックして実行してもOKです。

「windows_xp_auto_deflag_off.reg」をダウンロード
(右クリックして名前をつけて保存して、それを実行します。)


②ネットワークを無効化
これはLANおよび無線LANをOFFにするという意味です。
もっとも確実なのはハードウェアそのものを無効化しておく方法ですが、有線LANについては線が接続されていなければとりあえずは大丈夫なようです。無線LANについては接続状態が見えないので、少なくともプレイ中はOFFにしておいてください。

コントロールパネル→システム→ハードウェア→デバイスマネージャから、ネットワークアダプタの無線LANカードを選び、右クリックして”無効”を選び、”はい”とします。

Device

無線LANカード(上の図ではAtheros AR928X)に×が付けばOKです。

③ACPIを無効化
ACPIは前回説明したとおり完全に除外できれば安心なのですが、WindowsXPにはほとんど標準装備される前提となっていて、完全削除は簡単ではありません。
そこで、②と同じやり方で”バッテリ”の下にある2項目”Microsoft AC Adapter”と”Microsoft ACPI-Compliant Control Method Battery”を無効にしておけば、ACPIを部分的に停止できます。(上の図でも×がついています。)

これに関連して、コントロールパネルの”電源オプション”で、
”電源設定”の
”モニタの電源を切る”、”ハードディスクの電源を切る”、”システムスタンバイ”をすべて”なし”、
”詳細設定”の
”ポータブルコンピュータをとじたとき”、”コンピュータの電源ボタンを押したとき”、”コンピュータのスリープボタンを押したとき”の全ての項目で”何もしない”を設定しておくとさらに効果的だと思います。

④使用しないハードウェアを無効化
上記以外にも、プレイ中に使用しないハードウェアがついていれば、同じように無効化して×をつけておくと安心です。(Webカメラやアナログモデムなど)

⑤スタートアップやバックグラウンドの不要なソフトを無効化
画面右下の時計の左あたりに、わけのわからないアイコンがうじゃうじゃいるようだと要注意です。いらない常駐ソフトを止めておきます。これらはスタートアップでパソコンの起動とともに自動的に起動しているので、スタートアップから外しておきましょう。

スタートメニュー→「ファイル名を指定して実行」→「msconfig」と入力して「OK」ボタンをクリックしてシステム構成ユーティリティを起動します。
”スタートアップ”タブを選ぶとスタートアップ項目の一覧が表示されますので、スタートアップ不要な項目のチェックを外していきます。
Adobeなんとか
Realplayなんとか
Microsoft Officeなんとか
などの類ですね。外しても大丈夫なものは、真ん中の”コマンド”の列で、”C:\Program Files\”から始まっているものがほとんどです。

おつかれさまでした。これで音飛びに関係する設定のほとんどが終わりました。


おっと、ウィルス対策はしておかなくてはなりません。
ただ、ウィルス対策ソフトも動作が重い物や、DJプレイ中に動作して音飛びの原因になりかねないものがある上に有料のものが多いため、どうするか考えどころです。
現在のところオススメなのは、Microsoftが無料配布している”Microsoft Security Essentials”です。これは非常に動作が軽いウィルスセキュリティソフトで、しかも無料ですので活用しましょう。ただし、WindowsXPのSP3の適用なので、まずはWindowsXPをSP3にアップデートする必要があります。
”Microsoft Security Essentials”で検索すればすぐに出てきますので、インストールしてください。
インストールができたら、”Microsoft Security Essentials”の設定タブで、スキャンのスケジュールをOFFにするか、絶対にDJプレイをしないような時間に設定しておきましょう。

次回はサウンドカードの増設についてお話する予定です。



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2012年8月 4日 (土)

【DJ講座上級編2】 DJ用PCのセットアップ(1)

はじめにコマーシャルです。
8/10(金)は大好評のカレーサルサパーティー@中野スバです。
こころよりお待ちしております。詳細はこちら

前回から引き続きPCDJについてのお話です。
PCDJの利点は第一に機動性の高さが挙げられます。
小さなネットブックならば重量が1kgちょっとですから、HDD320GB搭載ならCD50枚と同じくらいの荷物でCDおよそ400枚分の音源を持っていくことができます。
また、会場にCDJなどの設備がない場合でも、PCをアンプにつなぐことさえできれば問題なくプレイできます。

DJ用のPCをセットアップするにあたっての第一方針は、いかに安価に仕上げるか、ということになります。DJ用のPCは消耗品だと考え、壊してしまってもそれほどダメージを受けないで済むように極力安く仕上げましょう。そしてその分CDに資金を回すのが良いと思います。
性能的な方針は、とにかく音質がまともであり、音飛びがしないこと。そしてメイン出力とは別に独立したヘッドホン用のモニタ出力を出せること。

以上の方針から、用意するPCはWindowsXP搭載のネットブックまたはノートPCがおすすめです。
現在のところWindows7で音飛びのないプレイをするのは技術的に非常に困難であると判断しています。

次に使用するソフトですが、Windowsで使用できるDJソフトはあまり選択肢は多くありません。
いちばん有名なソフトはTRAKTORですが、これは専用の外付けインターフェイスユニットを接続しないとヘッドホンモニターが使えない仕様になっています。
フリーウェアではMixxxというものがあり、これは非常によくできたソフトなのですが、使ってみた感じでは音飛びが起こりやすいという印象でした。
シェアウェアではZuluというものがありますが、このソフトはヘッドホンモニタが出せないため実用上問題があります。
私が現在使用しているソフトはMixvibes HOME Editionです。
このソフトはダウンロードで\2100と安価で、汎用のサウンドカードにも対応していますからセットアップの自由度が高く、機能も十分で使いやすいソフトです。

以上の条件でPCをセットアップします。
まず用意するPCですが、ハードディスク容量が320GB以上でWindowsXP搭載のネットブックまたはノートPCが3万円以下で入手できればベストだと思います。Windows7インストールモデルを購入して自力でWindowsXPをインストールしなおして使用する場合は、WindowsXP用のデバイスドライバが入手できるかどうか調べてから購入しましょう。
おすすめのソフトMixvibesは画面解像度が1024x768以上ないと画面からはみ出してしまいます。はみ出してもスクロールすれば問題なく使えますが、できれば全画面表示できたほうが使いやすいです。

WindowsXPをインストールするところから始める人のために、Windowsインストール時にできればやっておくといいことを先に書いておきます。
これは可能であればということで必須ではありませんが、音飛び対策としてはかなり有効だと思われるので、試してみることをおすすめします。
音飛びの原因として重大な位置を占めるものにACPIがあります。
Advanced Configuration and Power Interface(ACPI)
とは、「進歩的構成と電源インターフェイス」
というわけで直訳してもさっぱりわかりませんが、これは電源管理のための機能で、基本的には消費電力を抑えることを主な目的として開発された仕組みです。
ところがこのACPIがコンピュータ制御時に割り込み要求(IRQ)を頻発したり、さらにはIRQのステアリング機能により各周辺機器のIRQ割付の動的制御を行う場合があり、これらが音飛びに深く関与しています。
そこで、このACPIの機能を盛り込まずにWindowsをインストールすれば、音飛びについてはかなり有利な状態になります。
WindowsXPのインストール最初の方のPress F6 key to install third party SCSI driversの場面でF5を押すと「HALの選択」という画面になります。通常ですとここでACPIが選択されるのですが、これを、
マルチコアCPUの場合は ”MPS Multiprocessor PC”
シングルコアCPUの場合は ”標準PC”
に設定します。
もしこれで各ドライバ読み込み後にブルースクリーンとともにSTOP 0x0000007Bのエラーが出た場合は、マザーボードのBIOS設定で、SATAのハードディスクの設定を確認し、これが”SATA”になっている場合は”IDE” または”Compatible” または”Legacy”に設定して、もう一度HALの選択からやり直します。
それでもエラーが出る場合はマザーボードやCPUがACPI前提で設計されている可能性が高いので、ここでの非ACPI化はあきらめます。

WindowsXPのインストールが完了したら、次の音飛び対策を行います。

・自動デフラグをOFF
・ネットワークを無効化(有線、無線ともに)
・ACPIを無効化
・使用しないハードウェアを無効化
・スタートアップやバックグラウンドの不要なソフトを無効化

内容の詳細については次回説明します。

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2012年7月29日 (日)

【DJ講座上級編1】 PCDJ入門

中級編まで、CD(CD-R)を使用したDJにおいて主に音質を守るためのノウハウについて述べてきました。
私としては技術的なことよりもむしろ、音質を守ることの大切さを知ってほしいと考えています。

可能な限り最善の音質で音楽を再生することが、楽曲を提供してくれるミュージシャンとパーティーに来てくれるお客さんへ、DJとしての感謝を表現するひとつの手段です。

近年、急激に発達してきたパソコンを使用したDJ、いわゆるPCDJにおいても同じく可能な限り最良の音質でプレイすることが求められます。ですので、ここでも使用する音楽データーはCDから非圧縮で抽出したWAVデータを使用することを前提とし、ダウンロード音源を含む圧縮音源は一切使用しません。

PCDJは、安定した環境を整えることさえできれば、プレイそのものは非常に楽ちんです。
なにしろプレイリストを作っておけば自動的に再生してくれるし、音量の自動調整も不完全ながら利用できます。クロスフェード(フェードアウト/フェードイン)のタイミング設定もできますから、曲つなぎも自動化できます。

私のこれまでの経験では、PCDJを導入する場合の最大の問題点は「音飛び」です。
そして次に問題となるのは音量レベル不足だと思います。
これらは技術的に理詰めでアプローチしていけば、ほとんどは解決できると考えていますが、未だに未解決の部分もあり、とくに音飛びに関してはかなり根の深い問題だと思います。

現時点で私が使用しているPCDJの環境は次の通りです。

パソコン:ネットブック MSI U100PLUS(メモリー:2GB、HDD:500GBに増強)
OS:WindowsXP HOME Edition
DJソフト:MixVibes HOME
サウンドユニット:USB Sound Blaster Digital Music Premium HD SB-DM-PHD

この環境でも、最初のうちは謎の音飛びが発生し、悩まされました。
現在では音飛びは99%解消していますが、その要点は次のとおりです。

・自動デフラグをOFF
・ネットワークを無効化(有線、無線ともに)
・ACPIを無効化
・使用しないハードウェアを無効化
・スタートアップやバックグラウンドの不要なソフトを無効化

最近ではWindowsXP搭載のPCは入手が困難になりつつありますが、私のこれまでの研究では、ネットブック+Windows7(Starter)では、音飛びの問題が未だに解決できていません。
ですので、これからDJ用のPCの購入を考えている方は、WindowsXPモデルを探すか、WindowsXPを別に入手してインストールすることをおすすめします。
その際注意すべきことは、Windows7インストールモデルのノートPCやネットブックでは、WindowsXPをインストールしたとしても、WindowsXP用のデバイスドライバが入手できない場合があるということです。購入する前に調べておくことを強くおすすめします。

次回からはDJ用PCの具体的なセットアップ方法について説明していく予定です。

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2012年7月21日 (土)

【DJ講座中級編2】 圧縮CD-Rの見極め方

たとえ好意でいただいたディスクでも、それが圧縮されたものだったらクラブやパーティーではかけることはできません。使用する音楽の音質は、DJの責任において守らなければならないことのひとつだと思っているからです。

前回のリッピング編で書いたとおり、編集してCDを焼く場合、多くの人が残念なことに圧縮した状態でCD-Rを焼いてしまっています。
音を聴いてみて、「これはどうも音が冴えないな。圧縮くさいな。」と思ったとしても、根拠がなければ確信がもてません。
それに、非圧縮なのにもともとの音が悪い場合などもあって、耳だけを頼りに完全に圧縮音源を見極めることは困難です。
たとえば古いFANIAのアルバムなどは本当に音が悪く、もともと悪いのか圧縮で悪くなったのか、それとも両方なのかほとんどわからないのです。

でも、あるソフトを使えば全面解決します。

「 う う ぇ い ぶ  す ぺ く と ら 〜」 (ドラえもんの声で)

WaveSpectra
(このページの下の方で最新版の         WS150.ZIPがダウンロードできます。)

これはWAVEファイルを高速フーリエ変換(FFT)して、周波数成分を表示するソフトです。
簡単に言うと、音をグラフィック表示するものです。
素晴らしいソフトを提供してくださるefu氏に感謝します。

適当なところにファイルを展開して、WS.EXEを実行します。
WaveSpectraが起動したら、調べたいWAVファイルをドラッグ&ドロップして再生ボタンを押すと、音楽が再生され、音がグラフィック表示されます。
調べたいCD-Rから非圧縮でリッピング(前回説明)したWAVファイルを使います。
(ここでのリッピングで圧縮してしまうと、何を調べているのかわからなくなってしまいますから、注意しておこなってください。)

いくつかの例を見ていきましょう。

まずは、生CDからリッピングした非圧縮のWAVファイル。
Wav




下段のFFT表示を見てください。0~22KHzまできれいに音が出ています。








これはどうでしょう?

B1



20KHzから上がざっくり切り取られていますね。圧縮されています。










これはどうでしょう?
B2





先ほどのものよりさらに明らかですね。16KHzより上がざっくりやられています。










念のためもうひとつ。
B3





もう説明するまでもありませんね。見るも無残です。









(注)見やすくするために横軸をリニア表示にしています。WaveSpectraの設定ボタン(スパナマーク)から「Spectrum」の「横軸」を「リニア」にします。

このように、FFTソフトWaveSpectraを使うことで圧縮音源を完全に見極めることが可能になります。

圧縮音源を使うかどうかは完全に個人の自由ですから、個人的に使っている人にとやかく言うつもりは全くありません。
でも、私個人として、パーティーに来てくれたお客さんに提供することはできません。
圧縮音源に耳が慣れてくるということは、感性が鈍化する可能性があるということです。

人は感性や審美眼を高めるほど幸せが増えるのではないでしょうか。
たとえば雨上がりに出た虹を見て、

「ああ!虹が見られてラッキー!!」

「虹?だからなに?」

どちらが幸せそうでしょうか。
感性が鈍くなると幸福感が減っていき、うつになったりします。

圧縮音源を使って人の感性を鈍らせるということは、長い目で見ると人の幸せを奪っているということにもなりかねません。
また感性が鈍ればダンスもヘタになります。
そしてなにより、お客さんがだんだん減っていきますから、商売としても得策ではありません。SALSAという文化も衰退します。

パーティーに来てくれたすべての人が幸せに過ごせるよう願いをこめて、私は圧縮音源を使いません。

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2012年7月20日 (金)

【DJ講座中級編1】 リッピングとCD-R焼き

CDの生ディスク(正規盤)を使ってPLAYしようとすると、どうしても持って行くディスクが増えて効率が悪いので、使う曲だけ集めてCD-Rに焼いて使いたいというのは自然な考え方です。
ここでは、正規に購入したCDから曲を抽出し、私的使用のためにバックアップを取ることは合法であるという前提でお話を進めます。

CDから音楽データを抽出し、パソコンに保存することをリッピングといいます。
必要な曲だけを集めてCD-Rに焼くための手順は、

① CDから音楽データをリッピング
② リッピングした曲から必要な曲だけ選んでCD-Rに焼く

これだけです。
当たり前のことなのですが、こうして編集したCD-Rが音質的にもとのディスクより劣るようなことは避けなければなりません。
ところが①リッピングの工程において、大部分のソフトの初期設定では圧縮するようになっています。
音声信号の圧縮は現在のところそのほとんどが非可逆圧縮といって、2度ともとの音質には戻せないタイプの圧縮ですので、ここで失われたデータは2度と取り戻せません。

まずは予備知識として、音楽CDに入っている音楽データの品質を確認しておきましょう。
音楽CDのデータフォーマットは

44.1KHzサンプリング、16ビット、ステレオ

という形式です。
これはどいうことかというと、電気の波に変換された音楽信号を、
1秒あたり44100個にスライスし、音の大きさを16ビット(2の16乗=65536段階)
に分解して、これを左右チャンネルそれぞれのデータとして扱うということです。
1秒当たりのデータ数(ビット数)を計算すると、

44100x16x2(左右)=1411200=1411.2Kbps

つまり1秒当たり1411200ビットのデータで保存しているという意味です。
これをビットレートといいます。これが多いほど高音質ということになります。

さて、代表的なソフトのリッピング初期設定を見てみましょう。

まずはWindowsに標準的にインストールされているWindows Media Playerはどうでしょうか。
ファイル形式はWMA、ビットレートは128Kbpsです。
もとのCDのビットレートは1411.2Kbpsでしたから、なんと1/10以下です。
つまりもとの音楽データの90%以上が消えてなくなってしまうということですね。

もうひとつ、iTunesではどうでしょうか。
初期設定でファイル形式はAAC、ビットレートは同じく128Kbpsです。

リッピングしてCD-Rにコピーすると音が悪くなるような気がすると思っていたあなたは正しい。
なにしろ1/10以下ですから、これではワインを10倍に薄めて飲んでいるようなものです。
こういうものはお客様には出せませんね。
ネットでダウンロード販売しているmp3などの音源も、128Kbpsよりは若干高密度である
場合もありますが、本質的には同じくパーティーでは使えないと判断しています。

さて、いよいよ本題の、一切の圧縮(音の劣化)なしにリッピングする方法です。

まずはWindows Media Playerから。
動作環境はWindowsXP、Windows Media Player11です。
「取り込み」の「オプション」の「形式」で「WAV(無損失)」を選べばOKです。
リッピングしたファイルは、
「取り込み」の「その他のオプション」の「音楽の取り込み」の中の「取り込んだ音楽を保存する場所」
で設定された場所に保存されます。変更もできます。

つぎにiTunes。
「編集」の「設定」を選ぶと設定ウィンドウが出ます。
この中の「一般」の中ほどに「CDをセットしたときの動作」があります。
ここは「CDのインポートを確認」に設定しておき、その右の「インポート設定」ボタンを
押します。すると、読み込み設定ウィンドウが出ます。
インポート方法を「WAVエンコーダ」
設定を「カスタム」とするとWAVエンコーダウィンドウが出ます。ここで
サンプルレートを44.100KHz
サンプルサイズを16ビット
チャンネルをステレオ
に設定し、OKボタンを押します。
iTunesの場合は、CDを挿入すると曲目リスト画面が表示され、右下に「インポート設定」、「CDをインポート」の2つのボタンが出ます。念の為にその都度「インポート設定」を確認するのがいいと思います。というのは、iTunesは自動アップデートを行ったあとにリッピング設定が初期設定に戻るということが度々あったからです。
リッピングしたファイルの格納場所は、「編集」「設定」の設定ウィンドウで「詳細」を選ぶと、「[iTunes Media]フォルダーの場所」に設定されています。

リッピングができたら、そのファイルがWAV形式かどうか確認しましょう。
リッピングしたファイル名が*******.wavというファイル名ならOKです。
.wavの部分が無く、ファイル名のみの場合は、
フォルダーのウィンドウの「ツール」の「フォルダオプション」の「表示」の「詳細設定」で、
「登録されている拡張子は表示しない」のチェックを外します。
OKを押して、あらためて先ほどのファイルを確認します。
拡張子を表示したくない人は、ファイルを右クリックしてプロパティで「ファイルの種類」が「Waveサウンド」になっていることを確認してもOKです。

ここに書いたWindows Media PlayerやiTunes以外のソフトでリッピングを行う場合でも要点は同じで、取り込みのオプションでWAVを選択し、必要な場合は44.1KHz、16ビット、ステレオの設定を行えばOKです。

さて、非圧縮でリッピングができたら好きな曲を集めてCD-Rに焼きましょう。
CD-Rの再生では、プレーヤによっては音飛びを起こしたり、ひどい場合だと再生ができないなどということもあります。
できるだけそのような不都合が起こらないようにCD-Rを焼くコツがあります。

まず、使用するディスクですが、That's(太陽誘電)ブランドのものがベストです。
これは、太陽誘電がCD-Rの開発元であり、ドライブ(CD-R書き込み装置)開発各社は太陽誘電製のディスクを基準にドライブを開発しているからです。太陽誘電の次におすすめなのはTDKです。
パソコンでCD-Rを焼く場合はデータ用のディスクでかまいません。

次に書き込み速度ですが、書き込みソフトに表示される最高速度の半分か、それより少し遅い速度を選ぶのがベストです。
CD-Rの書き込みというのは、レーザー光線でディスクにデータを書き込んでいくわけですが、これは焼いたコテでプラスチックの表面を溶かして溝を掘っていくということに似ています。
コテを動かす速度が遅すぎるとプラスチックが溶けすぎて溝がべとべとヘゲヘゲになってしまい、コテを動かす速度が速すぎると、溝が浅くなってしまいます。
そういうことなので、真ん中あたりの速度を選ぶのが良いようです。
最高速度が48倍速なら24倍か16倍を、最高速度が32倍速なら16倍か12倍あたりを選ぶのがいいと思います。

編集したCD-Rを使ってDJをすることのメリットはなんといっても少ないディスクに必要な曲を詰め込んで持っていけるということですが、CD-Rの白や銀のレーベルばかりでディスクケースは殺風景になります。
ディスクケースの一部にはお気に入りの生CDを入れて、飾っておくといいかもしれませんね。
ディスクケースの見た目は大事です。

さて次回は、CD-Rに焼かれた音楽が圧縮かどうか見極める方法について書く予定です。
お楽しみに!

【参考文献】
ニールヤングの不満

ギタリストの恐怖

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