音楽

2022年6月24日 (金)

無帰還アンプ

このブログでは無帰還A級アンプ無帰還電流アンプ無帰還電流ヘッドホンアンプなど、無帰還アンプばかりを発表しているが、無帰還アンプを使い始めたのは実は最近のことだ。

2015年に金田明彦氏のフォノイコライザアンプの試作をした。
「電流伝送方式オーディオDCアンプ」金田明彦著
に掲載されていた「電流出力プリアンプ&パワーアンプ」のうちのフォノイコライザ部分のみを試作検証した。
このフォノイコは、DL-103のヘッドシェル内にJFETのVICを組み込んで電流伝送し、これをイコライザーIVCと呼ばれる電流入力の帰還型イコライザアンプで受けてRIAA処理する。オフセット対策としてSAOCと呼ばれる回路を搭載して、回路全体を通してDCを実現している。SAOCというのはDCサーボの一種だ。0.3mVという非常に微小なMCカートリッジの出力信号を、長旅させることなくヘッドシェル内で直接バッファアンプで受け取り、アンプまで送るというのは、理想的な考え方ではあるがなかなか実現は難しい。金田氏はこれを見事に実現した。
実際に作ってみると狙い通りSNRが非常に優れており、音質もよく、文句の付けどころは全くなかった。

このとき、ついでに以前から気になっていたCR型フォノイコライザを検証しておこう、と思ったことが、その後のアンプ設計に大きな影響を与えた。

高校生のときに2SK30を使ったシングルMCヘッドアンプを自作したが、それ以外はパワーアンプもフォノイコもすべて帰還アンプで、オーディオアンプというのはそういうものだと思い込んでいた。
ところが何かの記事で、「ツウは帰還型のイコライザを使わない。CR型を好む。」ということが書かれていたのが引っかかっていた。

CR型フォノイコライザを試作するにあたって参考にしたのは、安井章氏の製作記事だった。とはいってもそれほど正確に再現したわけではなく、CR回路の前後のバッファは部品箱にあったMUSES8920を使ってそれぞれ40dBとし、CR回路の定数だけ安井氏の設計にした。

音を聴いてみて驚いた。

SNRは金田式よりも劣っていたし、しかもカップリングコンデンサをつかってDCカットしているのに、音が鮮やかでリアルだった。
針を落としたときの音の印象も帰還型とはまったく違ってドライな印象がする(もっともこれはDCではないからかもしれないが)。
帰還型とCR型、DCと非DCなので、音の印象が違うのは当然といえば当然で、本当にCR型の方が音が心地良いのか?「ツウはCR型を好む」という言説に惑わされていないか?ということを念頭に、一か月ほど何度も取り替えて聴き比べをした。
その結果、特性はともかくとして自分はCR型の音の方が好きだという結論に達した。

帰還型のアンプというのは、つねに仕上がりの出力信号を入力信号と比較して、イコールになるように制御している。これを帰還制御といい、言葉通り動作していれば波形の再現性(=ひずみ)は理想的に仕上がるかもしれない。しかしながら実際に増幅回路を通過した信号は僅かながら遅れが生じる。常に遅れが生じた出力信号と入力信号を比較してこれらが等しくなるように増幅している、と考えれば帰還回路内の信号は非常に複雑な状態になっている。周波数が高くなるほど遅れの影響が大きくなり、ある周波数で位相遅れが安定度の限界を超えたときに発振が起こる。こうならないように、高域特性を制限したり、位相補償を行ったりして安定性を確保する。これが帰還型アンプの現実だ。
一方、無帰還アンプは、定数により決められた増幅度で増幅するだけであり、高域で位相が遅れたり信号振幅が減衰することがあっても、それが帰還されて動作に影響することはない。きわめてシンプルだ。ただし、帰還型アンプと違って、波形を比較修正していないので、信号がひずまないように設計するのは難しい。
帰還アンプではひずみ率が0.01%以下などというのはザラだが、無帰還アンプでは0.1%を切れれば好成績という感じで、ひずみ率には10倍以上の差が出てしまう。なのでカタログスペックを重視するメーカーは作りたがらないのだ。

その後、パワーアンプも無帰還で作ってみたいと思うようになり、それならAuratone用に電流駆動アンプを無帰還で作れないか?と考えて開発したのが、無帰還電流駆動アンプだった。開発方針としては
①DC(直結)構成とする
②DCサーボは使わない
の2つを目標とした。
最初の試作から少しずつ改良を加え、最終的な回路を決定するのに半年ほど要したが、いまでもAuratone用としてはベストのアンプだと思っている。
ただ、DC電流駆動アンプは原理的にネットワーク入りのマルチウェイスピーカーには使えないし、フルレンジだとしても、今風のハイコンプライアンスのスピーカーでは低域が増強されすぎて非常にブーミーな音になってしまうことが多い。
そこで、この無帰還電流アンプをベースに開発したのが無帰還A級25Wアンプだった。このアンプは通常と同じ電圧出力のアンプなのでAuratoneだけではなく、マルチウェイのスピーカーにも使える。基板頒布したところ、ありがたいことに好評を得ている。

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2022年6月19日 (日)

CDの音質評価

少し前の記事で、自分はCD(またはレコード)でしか音楽を買わない、と書いた。入手性がよいことと音質が安定していることがその理由だ。
しかしCDでも音の良いものと、いまひとつのものがある。
レコーディングに使用した機材やレコーディングエンジニアの技量、ミキサーのセンスなど要因は多くあると思うが、今回はCDの曲の聴感上の音質と周波数特性(f特)に相関があるかどうかを検証した。

「CDのf特は20kHzまでと決まってるんじゃないの?」

という意見があろうかと思うが、市販のCDを調べてみると、
①20kHz付近までで、それ以上をカットしているもの
②22.05kHzまで入っているもの
③ ①と②の中間のもの
の3種類が存在している(圧縮音源からCDをプレスしている悪質なケースもあるが今回は除外する)。

今回、たまたま手持ちのCDを大量廃棄するという人がいて、150枚ほどのCDをまとめていただいた。そのほとんどが、自分では持っておらず、当然ながらほぼ聴いたことのない曲ばかりだったので、今回のような試験を行うには好都合だ。なぜなら、知っていて好きな曲では客観的に音質のみを評価するのがなかなか難しいのではないかと思うからだ。

まず基礎知識として、CDの特性がどうなっているかということを簡単に説明したい。
音楽CD録音品質は、44.1kHzサンプリング16bit深度だ。
可聴帯域上限とされている20kHzの音を再生するには、サンプリング定理から、その2倍のサンプリング周波数が必要であることから、44.1kHzサンプリングであれば必要十分だということだ。
この場合、44.1kHzの半分である22.05kHzを境にエイリアシングが発生するので、22.05kHzより上の周波数は遮断したい。だとすれば、可聴周波数上限の20kHzは通して、22.05kHzより上は通さないというフィルタが必要になる。これはよく見る説明だ。

ところが実際に音楽CDに入っている音楽を解析してみると、上に述べたように、①約20kHzまででカットしているもの、②22.05kHzまで入っているもの、③ ①と②の中間のもの の3種類が存在していることがわかる。
(22.05kHzまで入っているCDについて、技術的になぜそういうことが可能なのかはここでは議論しない。)

つまり今回検証するのは、20kHz~22.05kHzまでの範囲の信号があるかどうかでCDの音質が聴感上変わるかどうか、ということだ。

まず、ヒトの耳の周波数特性は一般的に20Hz~20kHzくらいだといわれている。
自分についてはどうかというと、高校生の頃は単音で19kHz近くまで聞こえた。50歳を過ぎた今では、だいたい16kHzくらいまでしか聞こえなくなっている。それならば、そもそも20kHz~22.05kHzの議論など無駄だと思われるだろう。はたしてどうか。

評価は次の方法で行った。あらかじめリッピングしてPCに取り込んだデータ(44.1kHz16bit wavフォーマット)を再生する。
①ランダムに曲を選び、聴く
②音質評価点を1(最低)~3(最高)の3段階でつける
③その曲のFFTをwavespectraで観察し、20kHzでカットしているものを1、22.05kHzまで出ているものを3、中間のものを2として評価点を付ける

【結果】
先に結果を報告する。
20kHzでカットしているものと、22.05kHzまで入っているものでは、聴感上あきらかに差があった
聴いた曲の聴感評価と、FFTによるf特評価結果を表1に、それをグラフ化したものを図1に示す。

表1.聴感とFFTによる評価結果
(曲名の冒頭には、追跡可能なようにアルバムでの曲順を入れた。)
Photo_20220619142501

Photo_20220619142502
図1.聴感とFFTによる評価結果
聴感とFFTによる周波数特性には相関が表れている。

この評価の結果から、22.05kHzまで入っているものは聴感上音質に優れているといえる。
CDをリリースすることになって、サンプル版をもらったら、まずはこの解析をして、もし22.05kHzまで入っていなかったら改善を申し入れたほうが良いだろう。音質が冴えなければ売り上げにも響くかもしれないし、ヒットするかどうかにも影響が出るかもしれない。

この中で注目してほしいのは、11番と12番の「君がいるだけで」だ。
これは米米クラブの有名なヒット曲で、11番はアルバム”DECADE”に収録されたもの、12番はアルバム”HARVEST SINGLES 1992-1997”に収録されたものだ。憶測だがマスターは同じものではないかと思う。マスターが同じなのに音質がちがうなどということがあるのだろうか。
いままでサルサDJをやってきた経験上、ある有名な曲をかけるときに、オムニバス盤に収録されたものよりオリジナルのアルバムに収録されているものの方が音が良いような気がする、ということが度々あったが、今回、実際にそういうことがあるのだということが証明された。


【評価の詳細】
評価した13曲のFFTを図2~図14に示す。

082
図2.とうちゃん f特評価2
※21kHz付近から急峻に下がっている→評価2

09september3
図3.湘南SEPTEMBER f特評価3
※22kHzまで出ている→評価3

063
図4.あなたに逢いたくて f特評価3


1043
図5.君が僕を知っている f特評価3


01come-on-everybody1
図6.COME ON EVERYBODY f特評価1
※20kHz過ぎに段差がある→評価1

123
図7.いつか見上げた空に f特評価3


011
図8.君の歌、僕の歌 f特評価1


10luv-vibration3
図9.Luv Vibration f特評価3


04destino1
図10.DESTINO f特評価1


103
図11.浪漫飛行 f特評価3


023
図12.02君がいるだけで f特評価3


012
図13.01君がいるだけで f特評価2


02141
図14.青年14歳 f特評価1

以上

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2022年6月12日 (日)

音声圧縮と音楽業界の衰退

いつのことだったか正確にはおぼえていないが、1995年前後だったと思う。
当時勤めていた会社のレコーディング機材の事業部で、MDを使ったMTRの検討のため試聴会をやるので、希望者は参加してほしいとのことだった。おもしろそうなので参加した。
ジャズやクラシックの音源と、それをMDに録音したものの聴き比べだったのだが、MDに録音した方は聞き分けられるレベルで音質が劣化していた。
音楽用途で、しかもMTRということはピンポン録音の可能性まであるとすれば、これは使い物にならないだろうから企画倒れじゃないかと思っていたが、予想に反してMDを使ったMTRは開発され販売されたようだ。

その後、たしか2000年頃だったと思うが、mp3に音声圧縮ができる「午後のコーダ」というフリーソフトが話題になり、おもしろそうなのでダウンロードして、音楽をmp3に圧縮して聴いてみたが、とてもじゃないが音楽に使うようなものではなかった。

デジタルによる録音は、データが変化しないが故に高品質が保たれるのが最大のメリットなのに、非可逆圧縮してデータの再現性が損なわれてしまったら意味がない。

たしかに実用上不便が生じない範囲でデータ量を減らすことが有効なこともあるだろうが、それは語学教材とか、通話とか、とにかく伝わりさえすれば音質にはさほどこだわらない、という用途に限られるだろう。音楽に使うというのはありえないと思った。


ところが、2010年くらいからクラブシーンなどであきらかに圧縮音源とわかる悪質な音源を使う人が出始めると、あっと言う間に普及し、そういう店には行く気がしなかった。
クラブシーンだけではなく、一般の音楽再生にも普及し、気軽に安くダウンロードできる圧縮音源ファイルで音楽を聴くということが完全にあたりまえになってしまった。
これはぼくの考えだが、圧縮音源の普及は、作り手とリスナーの両方の感受性を蝕み、創作される音楽の質は低下し、リスナーは音楽から離れていく。ぼく自身、ある曲が圧縮音源でしか手に入らないなら、その曲は聴かない。
現在のぼくの立ち位置は、音楽の購入はCD(またはレコード)のみである。
もちろんCDが完璧というわけではないが、世界中のあらゆる音楽ジャンルにわたって供給と音質が最も安定しているからだ。

DJが圧縮音源を使ってクラブシーンを破壊してしまうのには、店側にも原因がある場合がほとんどで、多くの店はDJにお金を払いたくないので、ちょっと音楽に詳しい客に目を付けて、おだてて、DJという称号(?)を与え、タダ同然で使う。タダ同然なのでCDを買うようなお金はなく、ダウンロード音源を使う。ひどい場合はyoutubeから録音してるなんてことすらある。
また”プロ”と称しているDJでも信じられないことに圧縮音源を使う人がいる。信じられないとしかいいようがない。
あるいはまた、せっかくCDで購入しているのに、リッピングで圧縮してしまってる人がいる。もうどうしようもない。

それでは生演奏が至上なのか。
PAを介さずに完全に生音だけで耳に届く演奏であれば、生演奏に優るものはないと思う。
ところが現代の音楽は、生演奏といえどもほとんどの場合PAが介在する。
PAが入るコンサートやライブで、とくにポップスやロックの場合は、ほぼ例外なく音量がデカすぎる。ボーカルが歌っている内容が聴き取れるだろうか?おそらく全体の音量が大きすぎて聴き取れない場合がほとんどだと思う。
その点、CDであれば最適な録音ですべての楽器や歌がきれいに聴き取れるようになっている。
なのでぼくは必ずしも生演奏が至上とは思っていない。

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2022年5月 7日 (土)

PCM1704 16倍 24BitスーパーサンプリングDAC 基板頒布のお知らせ

PCM1704 16x 24Bit Super Sampling DAC Board Distribution Notice

Ss1704pic_20220508191601
写真1.PCM1704による16倍24BitスーパーサンプリングDAC基板
photo1. 16x 24 Bit Super Sampling DAC Board with PCM1704

今回、PCM1704を初めて入手し、16倍24BitスーパーサンプリングDACを新たに開発しました。

スーパーサンプリングDACは、デジタルデータ間を3次自然スプライン関数で補間する新しい技術で、従来のDACにくらべ、トランジェント応答に優れ、プリエコー、ポストエコーが大幅に抑えられたきめ細かい音質で音楽が楽しめます。

下位互換のPCM1702による16倍20BitスーパーサンプリングDACはすでに紹介していますが、PCM1702とPCM1704は電源ピンを一部変更するだけで互換性があるため、生基板はPCM1702スーパーサンプリングDACと共通です。

オシロで再生信号を見ただけでは、PCM1702や従来のSSDACとまったく同じですが、聴いた印象はかなり違います。
音はマルチビットのSS128(128倍16bit)やSS1702(16倍20bit)と同じ傾向ですが、PCM1704は繊細さがより際立っています。
具体的には、録音、Mixが派手なロックやラテンなどの音源も、とがってうるさい感じがかなり軽減し、その分裏に隠れていた微妙なニュアンスが聴こえてくるという印象です。
これはぜひとも多くの方々に聴いていただきたいと思いますので、今回も製作資料およびFPGAのオブジェクトファイルを公開します。

This time, I got the PCM1704 for the first time and developed a new 16x 24-bit supersampling DAC.

Supersampling DAC is a new technology that interpolates between digital data with a third-order natural spline function. Compared to conventional DACs, supersampling DACs have excellent transient response, and you can enjoy music with fine-tuned sound quality with significantly suppressed pre-echo and post-echo. We have already introduced a 16x 20- bit supersampling DAC

with a backward compatible PCM1702, but since the PCM1702 and PCM1704 are compatible with only a partial change in the power supply pin, the raw board is the same as the PCM1702 supersampling DAC. Just looking at the playback signal on the oscilloscope is exactly the same as the PCM1702 or conventional SSDAC, but the impression you hear is quite different. The sound has the same tendency as the multi-bit SS128 (128x 16bit) and SS1702 (16x 20bit), but the PCM1704 is more delicate. Specifically, the recording and sound sources such as rock and Latin with flashy mixes have a considerably reduced noisy feeling, and the impression is that the subtle nuances hidden behind them can be heard. I would like many people to listen to this, so I will publish the production materials and FPGA object files this time as well. 

製作マニュアル
図表
取扱説明書
FPGAオブジェクトファイル(10M08SCE144C8G用)


【主な仕様】
●Amanero COMBO384互換入力
●NOSおよび16倍24Bitスーパーサンプリング・サインマグニチュードDAC(PCM1704)音声差動出力
●入力電源:AC12V~AC15V x2(±電源)
●基板サイズ:112mm x 140mm

[Main specifications]
● Amanero COMBO 384 compatible input
● NOS and 16x 24 Bit Super Sampling Sign Magnitude DAC (PCM1704) Audio differential output
● Input power supply: AC12V to AC15V x2 (± power supply)
● Board size: 112mm x 140mm

Please contact us for overseas shipping.

 
次の3種類を頒布します。(すべて税、送料込み)
PCM1704を含む全部品実装基板②は、今回PCM1704が1台分のみ入手できたため、限定一台のみの頒布です。

①書き込み済みFPGA搭載基板   30,000円
・書き込み済みFPGAのみ搭載した基板です。
・納期:1週間~10日程度
※PCM1704は生産中止部品です。ご自分で手配される場合は不良品や偽品にご注意ください。

②全部品実装基板(動作確認済み) 180,000円
・書き込み済みFPGAを含む全部品を搭載した基板です。
・Amanero COMBO384は含まれません。
・すべて手実装です。
・納期:2~3週間程度(受注生産)

③生基板 3500円
・生基板のみの販売です。FPGA用pofファイルをダウンロードしてお使いいただけます。

●FPGA用pofファイルのダウンロードはこちら


購入ご希望の方は表題に「SSDAC1704頒布希望」とお書きのうえ、
dj_higo_officialアットhigon.sakura.ne.jp(アットを@に換えて)までメールにて
お申し込みください。
※ご希望のセット番号と、お名前、ご住所、電話番号をお書きください。
折り返し、代金振込先等のご案内をお送りします。

製造・頒布はSLDJ合同会社が行います。

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2021年10月15日 (金)

無帰還電流駆動ヘッドホンアンプ改良 (基板頒布あり)

Hpa0


【訂正情報】
・2021/10/21
Q9,Q11,Q21,Q23(2SA1020)のHFEが間違っていました。マニュアルおよび回路図の記載を280→240に訂正しました。


以前開発した、無帰還電流駆動ヘッドホンアンプを改良して基板を起こしたので報告する。

無帰還電流駆動ヘッドホンアンプを開発試作したのは2016年のことで、製作記事をこのブログにもアップした
その後、手作りアンプの会2016年冬のお寺大会に出品したところ、ありがたいことに最優秀賞をいただいた
手作りアンプの会での評価は、実際の試聴による音質に重きが置かれていて、評価されたことはとてもうれしかった。
作ってみたいという人が何人かいたため、基板を起こそうとも思ったのだが、いくつか問題点があって、どうしようか考えているうちに5年経ってしまった(^-^;

まず、この無帰還電流駆動ヘッドホンアンプとはどういうものなのか、簡単に説明したい。
通常、スピーカーやヘッドホンは電圧で駆動する。つまり入力信号に比例した出力電圧で負荷を駆動する。この場合、負荷の状態はまったく無関係で、たとえスピーカーがつながっていなくても電圧で音楽信号が出力される。逆にスピーカー端がGNDとショートされていたら、出力電流が無限に流れるので、アンプが壊れるかヒューズが飛ぶ。
対して、電流駆動の場合は、負荷に対して入力信号に比例した電流で負荷を駆動する。たとえ出力がショートされても問題なく出力電流が流れるため、スピーカー出力をショートするタイプの保護回路が使える。出力がオープンの場合は、負荷インピーダンスが無限大になるため、そこに電流を流すように動作して、出力はクリップしてしまう。
通常、スピーカーやヘッドホンは電圧駆動をする前提で、電圧駆動した時にフラットな特性が出るように開発、設計されている。
これを電流駆動するとどうなるかというと、スピーカーやヘッドホンのインピーダンス特性に沿った音圧特性で駆動される。
通常、スピーカーやイヤホンのインピーダンス特性はどのようになっているかというと、最低共振周波数f0で最大になり、その後一旦下がるが、高域では徐々に上昇する。
こういった特性を持ったスピーカーやイヤホンでも、通常の電圧駆動をすることで、フラットな特性を得るわけだが、電流駆動するとインピーダンス特性に沿った音圧特性になるのでインピーダンスが上昇するf0や高域が増強される。
見方を変えれば、インピーダンスが上昇するポイントは、そのスピーカーやヘッドホンが鳴らすのを得意とする帯域なので、その得意な帯域を伸び伸びと鳴らさせてあげる!というアンプだということもできる(こじつけくさくないか?)
そういうわけで、ほとんどのスピーカーやヘッドホンは電流駆動すると、f0付近と高域が持ち上がって、ドンシャリ傾向の音になる。
ただし、もしインピーダンス特性がフラットなスピーカーやヘッドホンなら、電圧駆動、電流駆動で差が出にくいとも考えられる。(もっとも出力インピーダンスがまったく真逆なので、ダンピング特性の差は出るだろうと思われるが)

そもそも無帰還電流駆動ヘッドホンアンプは、その前身となる無帰還電流駆動アンプをヘッドホン用にリメイクしたものだ。
無帰還電流駆動アンプはもともと、オーラトーン5Cを慣らすための専用アンプとして開発したものだ。

さて、上述のように、電流駆動アンプの特徴として出力をショートするタイプの保護回路が組めるので、ミュート&保護回路のリレー接点による音質劣化に悩まされないで済む。ただ、DCが出力されて保護回路が働いたということは、アンプに何か異常がある可能性があるので、その状態で出力をGNDに短絡すれば事故が起きる可能性がある。そのため、無帰還電流駆動アンプでは、保護回路動作時は出力をショートするとともに、SSR(ソリッドステートリレー)を使ってAC100V電源を遮断するという構成にした。

無帰還電流駆動ヘッドホンアンプの場合は、バッテリー駆動ということもあって、そこまでの検討はしていなかった。ショート方式の保護回路には欠点があって、出力にDCを検出したときに出力端をショートすると、検出されていたDCが0になってしまうので、保護回路が解除される。するとまたDCが発生し……ということ繰り返してしまう。つまりひとたび保護回路が働いたらラッチがかかって、リセットしない限り再起動できないような仕掛けが必要になる。そういう意味では上で説明した無帰還電流駆動アンプのACを落としてしまうやり方は合理的だ。
ヘッドホンアンプの場合、バッテリー駆動だし、ヒューズかポリスイッチでも入れとけばいいかな……でもなあ、電源のインピーダンスが上がるのできもちわるいよなあ……やるとしたら±両方の電源を同時に落とす仕掛けも必要だし……うーんうーん……とかやっているうちに5年の歳月が(^-^;

今回はちょっとがんばって±のバッテリー電源を両方遮断する回路を設計して搭載した。
これでいちばん大きな問題点がひとつ解決した(^-^)
ただ、少しスイッチの構成が特殊で、電源ONのタクトスイッチSW1と電源OFFのタクトスイッチSW2が別になっていて、ON時はSW1を長押し、OFF時はSW2を押す、という構成になった。ロジック回路かマイコンを使えばスイッチひとつでもできると思うが、どうもアナログアンプにデジタル回路を積む気になれなかったので、今回のような構成になった。

あとは細々した問題点として、前回の設計では終段に2SA1668/2SC4382を使っていたが、これでは大きすぎて小型化が難しい。今回はこれらを2SA1020/2SC2655に変更することで小型化した。
次に、前回はニッカド電池を8本つかって±4.8Vの構成にしたが、これでは大きくなりすぎる上に電池持ちもよくないので、これを±3.8Vのリチウムイオン電池にした。
動作電圧を下げたことで、保護回路も定数変更した。保護回路は前回同様、±150mV以上のDCを検出すると働く。

最終的な回路を図1,図2に示す。図1がアンプ回路で、図2が電源と保護回路だ。
見やすいきちんとした図面は、この記事の最後に頒布用のマニュアルをリンクするのでそちらを参照してほしい。

Hpac_sch
図1.無帰還電流駆動ヘッドホンアンプ回路(片チャンネル)


Protectsch
図2.電源回路および保護回路


図2の左上にあるJ3,J4がそれぞれマイナス側とプラス側のバッテリー入力で、そのすぐ右側がMOSFETを使った電源ON/OFF回路だ。マイナス側のON/OFFはプラス側に追従するようになっている。
同じ図2の中央より下の回路はDC検出保護回路で、従来トランジスタのVBEに反応して0.6V以上でプロテクトがかかる典型的な回路に対して、ショットキーダイオードを使って基準電圧を底上げすることで0.15Vでプロテクトがかかるようにしている。

このあたりの開発経緯も、前回の無帰還電流ヘッドホンアンプの記事に書かれているので参照してほしい。

今回設計した基板による諸特性を以下に紹介する。

まずはひずみ率雑音特性。左右チャンネルにつき、それぞれ負荷が33Ω、100Ωの場合のTHD+N(%)を図3~図6に示す。

Thdn33_l Thdn33_r
図3.Lch 33Ω負荷 THD+N               図4.Rch 33Ω負荷 THD+N



Thdn100_l Thdn100_r
図5.Lch 100Ω負荷 THD+N              図6.Rch 100Ω負荷 THD+N


ひずみ率雑音特性THD+Nは、ボトムでおよそ0.03%、実用域で0.1%以下で、これは前回とほぼ同じだ。

次に周波数特性。
周波数対ゲインのグラフを図7、図8に示す。L、R同等だったので、Lchのみ。

Ftoku33l Ftoku100l
 図7.周波数ゲイン特性 33Ω負荷(Lch)           図8.周波数ゲイン特性 100Ω負荷(Lch)

100Ω負荷では-3dBポイントが1MHz、33Ω負荷では1MHz超となり、前回よりも改善した。


次は方形波出力波形。
これもL、Rで差がなかったのでLchのみ、33Ω、100Ω負荷に対してそれぞれ10kHz、100kHの波形を図9~図12に示す。

10khz33ohml 100khz33ohml
図9.方形波出力33Ω10kHz(Lch)          図10.方形波出力33Ω100kHz(Lch)

10khz100ohml 100khz100ohml
図11.方形波出力100Ω10kHz(Lch)          図12.方形波出力100Ω100kHz(Lch)

以上のように、オーバーシュートやリンギングは一切ないので、位相補償は行っていない。

次は出力インピーダンス。
今回は1kΩと2kΩ負荷を切り替えてのON/OFF法で測定した。これもL、Rで大差ないので、Lchのみ表1に示す。

表1.出力インピーダンス(Lch)
Impedancel_20211017223901

前回の測定結果は11kΩだったので悪化しているが、測定方法の違いも影響があるかもしれない。
ヘッドホンのインピーダンスが16Ω~100Ω程度だと考えれば十分な値だろう。

最後に主要諸元を表2にまとめておく。

表2.主要諸元
Syogen

音質については電流駆動故に、使用するヘッドホン、イヤホンの個性が非常によく出る。
普段使いのパイオニアHDJ-1500とは相性がよく、低域、高域が若干持ち上がり気味で
メリハリの強い、なおかつクリアな音質となった。
ヘッドホン、イヤホンに対する音質の違いについても前回の記事で書いているので参照してほしい。

2021/10/18追記
3Dプリンタで専用ケースを製作した。単三型(14500)リチウムイオン電池がそのまま入れられるように、電池ホルダを一体形成した。
写真1にケース入りのヘッドホンアンプ(下)とスーパーサンプリングSDプレイヤーSSSDP4490(上)を示す。
写真2はフタを外したところ。

Hpacincase
写真1.今回製作した無帰還電流駆動ヘッドホンアンプ(下)とスーパーサンプリングSDプレイヤー(上)


Hpacincase2
写真2.フタを外したところ。左側の電池は単三型リチウムイオン電池2本。


ケースのstlデータ
ダウンロード - 20211017hpac_top000.zip



【基板頒布のお知らせ】
この記事の無帰還電流駆動ヘッドホンアンプ生基板をご希望の方に頒布します。
生基板1枚と、製作説明書と回路図、部品表等の資料、LTSPICEのシミュレーションファイルをセットで
1880円(税、送料込み)で頒布します。(自力で部品収集、部品選別、調整できる方が対象です。)

ご希望の方は表題に「無帰還電流ヘッドホンアンプ基板頒布」、
本文にお名前、送付先郵便番号、ご住所、電話番号をお書きのうえ、

dj_higo_officialアットhigon.sakura.ne.jp
(アットを@に替えてお送りください)

までメールをお送りください。

代金の振込先のご案内メールをお送りします。入金が確認でき次第発送します。

製作マニュアル、回路図、部品表、その他

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2021年7月 4日 (日)

16倍24Bit スーパーサンプリングSDメモリプレイヤー(AK4490REQ対応、基板頒布あり)

16x 24Bit Super Sampling SD Memory Player (with board distribution)

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写真1.16倍24bitスーパーサンプリングSDメモリプレイヤー
Photo 1. 16x 24bit super sampling SD memory player

2022年6月7日 new!!
基板改版により、廃盤AK4490EQに加えAK4490REQに新たに対応しました!!


5月より試作していた16倍24bitスーパーサンプリングSDメモリプレイヤーの基板が完成した。
スーパーサンプリングDACは、このブログで従来から説明している、3次自然スプライン関数でデータ補間を行うD/Aコンバータで、
今回はSDメモリに収録されたWAVデータを時間軸方向に16倍、ビット精度24bitでスーパーサンプリング処理し、AK4490でD/Aして出力する、SDメモリプレイヤーに応用した。
音質はスーパーサンプリングの特徴が出ていて、特に高音において、従来にないきめ細かな音になっている。

The board for the 16x 24-bit super-sampling SD memory player that was prototyped from May has been completed.
The supersampling DAC is a D / A converter that interpolates data with a third-order natural spline function, which has been explained in this blog. This
time, the WAV data recorded in the SD memory is multiplied by 16 in the time axis direction and bits. It was applied to an SD memory player that performs supersampling processing with an accuracy of 24 bits, D / A with the AK4490, and outputs it.
The sound quality is characterized by super-sampling, and especially in the high-pitched sound, it is a finer sound than ever before. 

2_20210704141501
写真2.スイッチ側から
Photo 2. From the switch side


基板サイズは57mm x 75mm、供給電源は6.5~9Vの単電源で、負電源チャージポンプを搭載してDC構成とした。
消費電流はおよそ200mA。
対応SDカードは、32GBまでのmicroSDHCで、対応ファイルフォーマットはWAV(44.1kHz16bit)。
出力はヘッドホンとLineの2系統をそれぞれΦ3.5ステレオミニジャックで出力している。ヘッドホン出力はアンプを搭載し、VRで音量調整可能。
ジャンパピンの設定により、スーパーサンプリングモードとNOS(生データ)モードの切り替えが可能。
主要諸元を表1に示す。

the board size is 57mm x 75mm, the power supply is a single power supply of 6.5 to 9V, and a negative power supply charge pump is installed to form a DC configuration. Current consumption is about 200mA. The compatible SD card is microSDHC up to 32GB, and the compatible file format is WAV (44.1kHz 16bit). The output is a Φ3.5 stereo mini jack for each of the two systems, headphones and Line. The headphone output is equipped with an amplifier, and the volume can be adjusted with VR. By setting the jumper pin, it is possible to switch between super sampling mode and NOS (raw data) mode. The main specifications are shown in Table 1. table 1. Please download the main specifications from the link below. 
● Circuit diagrams, parts lists , manufacturing manuals , operation manuals , IEEJ papers

表1.主要諸元
Table1.Spec
Sssdp4490spec_20210717220101

資料は下記リンクからダウンロードしてください。
回路図、部品表製作マニュアル操作マニュアル電気学会論文


【2021/07/07追記】
専用ケースを設計し、3Dプリンタで印刷してみた。写真3~写真5参照。

Sssdp_case1
写真3.専用ケースに入れたSDプレーヤー(500円玉は大きさ比較用)


Sssdp_case3
写真4.ジャケットの胸ポケットにも入る大きさ


Sssdp_case2
写真5.箱の中の様子


電源は単4型リチウムイオン電池を2本使用した。容量は350mAhなので、フル充電状態で1時間40分ほど使用可能。
材料にPLAを使う3Dプリンタによる造形では、精度、強度、ネジ穴のスペースなどを考慮すると無骨なデザインになりがちだが、
今回の設計ではケースの肉厚を1mmとし、ケースとフタはパッチン止めにしたので、スマートにデザインできた。

stlデータを公開しますので、ご自由にお使いください。

ダウンロード - bottom001.stl

ダウンロード - top001.stl


【2021/07/10追記】
単3型(14500サイズ)のリチウムイオン電池を入手したので、専用ケースを試作した。
写真6,写真7に示す。

Aacase1
写真6.単3(14500)サイズ電池入りケースは7mm長くなった


Aacase2
写真6.単3(14500)サイズの電池ホルダはケース一体型とした。

ケースサイズは前回の単4型電池にくらべて7mm長くなるが、電池持ちは3倍でおよそ5時間になり、より実用的になった。

stlデータは以下のとおり。

ダウンロード - bottomaa000.stl

ダウンロード - topaa000.stl

 

次の5種類を頒布します。

①書き込み済みFPGA(10M08SCE144C8G)およびPIC32MX250F128D搭載基板   24000円(送料、消費税込み)
・プログラム書き込み済みFPGAおよびPICマイコンのみ搭載した基板です。
・納期:1週間~10日程度

②全部品実装基板(動作確認済み) 52000円(送料、消費税込み)
・AK4490にはAK4490EQを使用しています。
・書き込み済みFPGAおよびPICマイコンを含む全部品を搭載した基板です。
・すべて手実装です。
・納期:2~3週間程度(受注生産)

③AK4490EQ 1000円(基板お買い上げ方限定、基板同梱)
・入手難となっているAK4490EQチップを、上記①または④、⑤基板お買い上げの方に限り、基板1枚につき1個限定にて頒布します。
・基板お申し込み時に「AK4490EQチップ希望」とお書きください。

④生基板 3200円(送料、消費税込み)
・AK4490EQおよびAK4490REQに対応しています。
・生基板のみの販売です。FPGA用pofファイルをダウンロードしてお使いいただけます。

⑤旧生基板  1300円(送料、消費税込み)
・AK4490EQのみに対応した旧基板の生基板です。AK4490REQには非対応です。
資料一式をダウンロードしてご参照ください。
・FPGA用pofおよびPICマイコン用hexファイルは共通です。


●FPGA用pofファイルおよびPICマイコン用hexファイルのダウンロードはこちら


購入ご希望の方は表題に「SSSDP4490頒布希望」とお書きのうえ、
dj_higo_officialアットhigon.sakura.ne.jp(アットを@に換えて)までメールにて
お申し込みください。
※ご希望のセット番号と、お名前、ご住所、電話番号をお書きください。
折り返し、代金振込先等のご案内をお送りします。

【注記】  現在、部品市場が品薄状態になっており、FPGA、マイコン、DACデバイスの入手が非常にわるくなっています。
 お申し込み順に在庫部品にて対応しますが、在庫切れの場合の納期については別途相談させていただきます。

製造・頒布はSLDJ合同会社が行います。

(Please contact us for overseas shipping.)

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2021年1月13日 (水)

128倍スーパーサンプリングDAC評価用基板(128x Super Sampling D/A Converter PCB)

128x Super Sampling DAC Evaluation Board



20210113ss_pcb
写真1.128xスーパーサンプリングDAC評価用基板
16bitマルチプライングDACによる出力を差動で、比較試聴用のAK4490およびPCM5102の出力をそれぞれRCAとステレオミニジャックで出力している。
Photo 1. 128x Super Sampling DAC Evaluation Board The
output of the 16-bit multiplexing DAC is differential, and the outputs of the AK4490 and PCM5102 for comparative audition are output by RCA and stereo mini jack, respectively.


昨年末より着手していた128倍スーパーサンプリングDAC(128xSSDAC)の基板があがってきたので紹介する。

SSDACはデジタルデータを3次自然スプライン関数で補間する技術で、トラ技2018年10月号で初めて発表され、その後64倍SSDACのキットが発売された。
今回はさらに進化させ、スーパーサンプリング比を128倍として16bitマルチプライングDAC、DAC8820からの出力を左右それぞれ差動で、さらに4倍および8倍スーパーサンプリングでアップサンプリングした24BitデータをI2Sで出力し、AK4490とPCM5102で比較試聴できるようにした。
アップサンプリングしたI2S信号は電源とともにピンヘッダに出力したので、子基板を載せれば任意のI2S DACデバイスで聴くことができる。

前回までの記事で何回か過渡応答の波形を示したが、インパルス演算の誤差があり、平坦部が波打っていた。

I would like to introduce the 128x super sampling DAC (128xSSDAC) board that I started at the end of last year.

SSDAC is a technology that interpolates digital data with a third-order natural spline function. It was first announced in the October 2018 issue of Tora Gi, and then a 64x SSDAC kit was released.
This time, it has been further evolved, with the supersampling ratio set to 128 times, the output from the 16bit multiplexing DAC and DAC8820 is differentially left and right, and the 24bit data upsampled by 4x and 8x supersampling is output by I2S. AK4490 and PCM5102 can be compared and auditioned.
Since the upsampled I2S signal is output to the pin header together with the power supply, it can be listened to by any I2S DAC device by mounting a child board.

In the previous articles, I showed the waveform of the transient response several times, but there was an error in the impulse calculation, and the flat part was wavy.

Ss128_sq1khz_20210113205701
図1.前回までの過渡応答波形
上下平坦部がサンプリング周波数で波打っていた
Figure 1. The upper and lower flat parts of the transient response waveform up to the previous time were wavy at the sampling frequency.


図1の示すとおり、上下平坦部がサンプリング周波数で波打っていた。これはインパルスを計算する回路の精度に見落としがあり、誤差が出ていたためだ。今回はこの部分を改善した。
最新の測定波形を以下に示す。
As shown in Fig. 1, the upper and lower flat parts were wavy at the sampling frequency. This is because the accuracy of the circuit that calculates the impulse was overlooked and there was an error. This time I improved this part.
The latest measurement waveform is shown below.


Ss1khz
図2.128倍スーパーサンプリング  1kHzサイン波
Figure 2. 128x supersampling 1kHz sine wave


Ss8khz
図3.128倍スーパーサンプリング  8kHzサイン波
Figure 3. 128x supersampling 8kHz sine wave


Nos8khz
図4.NOS  8kHzサイン波
Figure 4. NOS 8kHz sine wave


Ss16khz
図5.128倍スーパーサンプリング  16kHzサイン波
Figure 5. 128x super sampling 16kHz sine wave


Nos16khz
図6.NOS  16kHzサイン波
Figure 6. NOS 16kHz sine wave


Ss20khz
図7.128倍スーパーサンプリング  20kHzサイン波
Figure 7. 128x super sampling 20kHz sine wave


Nos20khz
図8.NOS  20kHzサイン波
Figure 8. NOS 20kHz sine wave


Sstr1khz
図9.128倍スーパーサンプリング  1kHz方形波
インパルス演算回路の改善により、上下平坦部の波が解消された
Figure 9. 128x supersampling 1kHz square wave
The wave in 
the upper and lower flat parts was eliminated by the improvement of the impulse calculation circuit 


Nostr1khz
図10.NOS  1kHz方形波
Figure 10. NOS 1kHz square wave


Ss_saw2khz
図11.128倍スーパーサンプリング  2kHzのこぎり波
Figure 11. 128x supersampling 2kHz sawtooth wave


Nos_saw1khz
図12.NOS  2kHzのこぎり波
Figure.12  NOS 2kHz sawtooth wave


 以上のように128倍スーパーサンプリングの動作が確認できた。
今後、引き続き評価と問題点の洗い出しを行う予定。
The operation of 128 times super sampling was confirmed as above.
In the future, we will continue to evaluate and identify problems.

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2020年12月18日 (金)

8倍スーパーサンプリング+AK4490 評価

Ssdacyak4490pcb
写真1.SSDAC基板(右)と、AK4490およびPCM5120の外部I2S_DAC基板(左)

データ間をスプライン関数で補間するSSDAC(スーパーサンプリングD/Aコンバータ)について、今回は8倍スーパーサンプリングデータを8倍アップサンプリングデータとしてAK4490に入力する検証を行った。

結論を先に言うと、今回のAK4490も、前回評価したPCM5102と同じく、8倍の352.8kにアップサンプリングした信号を入力するとNOSDACとして振る舞うようで、相乗的な効果は見られなかった。つまりマルチプライングDAC(DAC8820)の出力とほぼ同じ結果となった。

元データを44.1kHz16bitデータとし、これに8倍スーパーサンプリング処理をして352.8kHz24bitとしてAK4490のI2Sに入力した。

Ak4490_8xss
図1.1kHz矩形波8Xアップサンプリング→AK4490
AK4490のフィルタ設定に依存せず、すべて同じ結果となった。


Ak4490_8xss_saw2k
図2.2kHzのこぎり波8Xアップサンプリング→AK4490
AK4490のフィルタ設定に依存せず、すべて同じ結果となった。

Ak4490_8xss8k
図3.8kHzサイン波8Xアップサンプリング→AK4490
AK4490のフィルタ設定に依存せず、すべて同じ結果となった。


Ak4490_8xss16k
図4.16kHzサイン波8Xアップサンプリング→AK4490
AK4490のフィルタ設定に依存せず、すべて同じ結果となった。


Ak4490_8xss20k
図5.20kHzサイン波8Xアップサンプリング→AK4490
AK4490のフィルタ設定に依存せず、すべて同じ結果となった。


というわけで、スーパーサンプリング処理を行なったあとに、市販のDACを介して出力するという方法では、特筆すべき効果は得られなかった。まとめると次のようになる。

・オーディオ用I2S DACデバイスに対してアップサンプリングして入力する方法では、8倍スーパーサンプリング(384kHz)が限度
・出力波形はマルチプライングDACを使った場合と同等
・マルチプライングDACによる出力では現在128倍まで可能なので、音質的には8倍よりも128倍のほうが有利
・オーディオ用DACに入力する方法では、ΔΣのデバイスを使うとマルチプライングDACよりもノイズ面で有利
・マルチプライングDAC(DAC8820)よりも市販オーディオ用DACを使う方がコストが安い

つまり、
●スーパーサンプリング8倍でΔΣ方式の市販オーディオDACデバイスで妥協すると、ノイズ面とコスト面で有利
●スーパーサンプリング128倍でマルチプライングDACを使用し音質を優先すると、コスト高で、ノイズでやや不利になる
●ただし、DAC8820はビット分解能が16Bitであり、市販I2S DACでは24Bitであることを加味すると、数字的には市販I2Sか。

ということだ。
ぼくならマルチプライングで128倍を選ぶが、これは人によって判断がちがうと思う。

 

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2020年12月17日 (木)

8倍スーパーサンプリングデータをPCM5102で処理する

前回の記事で予告した、スプラインによる8倍スーパーサンプリングデータを市販品のオーディオDACデバイスPCM5102に入力する実験を行ったところ、おもしろい結果が得られたので、速報でお送りする。

いきなりだが、まずは再生波形を見てほしい。8kHzサイン波だ。

8x5102nos
図1.8kHzサイン波NOS(上:DAC8820マルチプライングDAC、下:PCM5102)


8x5102ss
図2.8kHzスーパーサンプリング
(上:128倍スーパーサンプリングDAC8820出力、下:8倍スーパーサンプリングPCM5102出力)


図1はNOS(オーバーサンプリング処理なしの生データ)だが、PCM5102へは8倍のI2S信号つまり352.8kHzサンプリングにアップサンプリングした状態で入力している。見たところ、DAC8820とPCM5102は同じくNOSDACとして振る舞っている。
PCM5102は最大384kHzサンプリングに対応し、最大8倍のオーバーサンプリングを行うデバイスで、44.1kや48kのデータは8倍オーバーサンプリングするが、352.8kや384kはオーバーサンプリングなし、つまりNOSとして振る舞う。データシートを読めばあたりまえのことだ。

図2は128倍スーパーサンプリングしてマルチプライングDAC、DAC8820で出力したものと、8倍スーパーサンプリングしてPCM5102で出力したものだ。
このときPCM5102はNOSとして振る舞っているので、同じスーパーサンプリングで128倍と8倍では勝負にならない、ということになる。

だとすれば、現状で最大128倍スーパーサンプリングしてマルチプライングDACで出力したものに対して、市販のDACデバイスの前処理にスーパーサンプリングを行う場合、使用するデバイスは8倍(384kHz)で入力してもなお少なくとも16倍オーバーサンプリングできる実力がないと勝負にならないということになるのではないか。

ちょうど昨日、実験に使おうと発注していたAK4490が届いたので、さっそく準備に取りかかろうと思う。
AK4490は最大768kHzサンプリング、256倍オーバーサンプリングのデバイスなので、上のPCM5102と同じ計算ならば、スーパーサンプリング8倍 x オーバーサンプリング32倍、ということができるのではないだろうか。

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2020年12月15日 (火)

128倍スーパーサンプリングDAC試作(128x Super Sampling DAC)

128xssdac
写真1.今回試作した128倍スーパーサンプリングDAC
今回は以前製作会で頒布した基板を使用した。FPGAのMAX10が直接実装されている。外付けI2S用の端子を引き出している

前回から引き続き、SSDACの試作検討をしている。
SSDACはオーディオDACの新手法で、サンプル点間を3次自然スプライン関数で補間する技術だ。
トランジスタ技術2018年10月号で発表され、試作回路やソースコードは同11月号に収録されている。
このとき収録されキット販売されたものは64倍スーパーサンプリング、すなわちサンプル点間を63点のスプライン関数で補間し、マルチプライングDAC(16ビットパラレル)DAC8820で出力するものだった。

前回は4倍スーパーサンプリングしたものをアップサンプリングデータとして市販のI2S入力DAC、PCM5102で再生する実験を行った。

今回はスーパーサンプリングレートを128倍に引き上げて、上記と同じDAC8820で出力する実験を行った。

64倍スーパーサンプリングの場合、I2S信号のSCLKがサンプリングクロックとしてそのまま使える。つまり、LRCLKが44.1kHzのときSCLKが2.8224MHzなので、

2.8224MHz / 44.1kHz = 64

となり、1データあたりちょうど64倍になっているのでこれに同期してスーパーサンプリングデータを出力すればよい。

今回はさらに倍の128倍スーパーサンプリングの実験を行った。128倍の場合はSCLKの2倍の周波数なのでMCLK(11.2896MHz)を分周して128倍のクロック(44.1Hkzの場合は5.6448MHz)を生成し、これに同期させた。

波形観測の元データはすべて44.1kHz16bitのCDと同じフォーマットで行った。観測波形は次のとおり。

Nos_8khz
図1.8kHzサイン波NOS
8kHzでも、なにもしないとこんなにガタガタしている。

Ss128_8khz
図2.8kHzサイン波128倍スーパーサンプリング

Nos_16khz
図3.16kHzサイン波NOS
もはやサイン波の面影はない


Ss128_16khz
図4.16kHzサイン波128倍スーパーサンプリング
3点確保できる周波数(44.1/3=14.7kHz)を超えるので、振幅が波打ち始める

Nos_20khz
図5.20kHzサイン波NOS

Ss128_20khz
図6.20kHzサイン波128倍スーパーサンプリング
3点確保できる周波数(44.1/3=14.7kHz)を超えるので、振幅が波打つ


Nos_sq1khz
図7.1kHz矩形波NOS
何も処理しなければお豆腐のような矩形波が再現される

Ss128_sq1khz
図8.1kHz矩形波128倍スーパーサンプリング
スーパーサンプリングの特徴ともいえる、1山ずつのオーバー、アンダーシュートが出る


Nos_saw2khz
図9.2kHzのこぎり波NOS


Ss128_saw2khz
図10.2kHzのこぎり波128倍スーパーサンプリング


というわけで、実装はおおむねうまくいっていると思う。

リスニングは、まず高域の出方がNOS(何も処理しないDAC)にくらべると良くなっているように感じる。
また、過去の試聴会では、32倍と64倍では違いがあり、64倍のほうがより良いとの評価が出ている。
今回の128倍はいまのところ64倍と比較して耳でわかるほどの違いはないように思えるが、しばらく音楽を聴いてみたい。

次回は、前回行った4倍アップサンプリング→市販DACへの応用を拡張して、8倍アップサンプリングの応用実験をする予定です。

 

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