RIAAフォノイコライザを FIR デジタルフィルタで実装する ④ 実践&聴き比べ編
【参考記事】
RIAAフォノイコライザをIIRデジタルフィルタで実装する ①準備編
RIAAフォノイコライザをIIRデジタルフィルタで実装する ②係数計算編
RIAAフォノイコライザをIIRデジタルフィルタで実装する ③シミュレーション編
RIAAフォノイコライザをIIRデジタルフィルタで実装する ④実装・評価編
RIAAフォノイコライザをIIRデジタルフィルタで実装する ⑤Octaveによる位相検証
RIAAフォノイコライザを FIR デジタルフィルタで実装する ① 予告編
RIAAフォノイコライザを FIR デジタルフィルタで実装する ② 係数計算編
RIAAフォノイコライザを FIR デジタルフィルタで実装する ③ シミュレーション編
前回までで、実際にダイレクトリッピングしたwavファイルを入力して、FIRおよびIIRフィルタでRIAAイコライジング処理をする具体的な方法を説明しました。
今回は私がもっている何枚かのアナログレコードからパソコンでダイレクトリッピングしたサンプルソースを紹介し、実際に聞き比べた結果をお知らせしたいと思います。
まずはダイレクトリッピングする際に使用した機材です。図1がそのブロック図、図2は使用したフラットアンプの回路です。
図1.ダイレクトリッピングブロック図
図2.フラットアンプ回路(電源は±12V)
実際のリッピング作業では、SoundForgePro11を使ってファイルフォーマットは96kHz24bitのwavで行い、今回の検証用に、同じSound ForgePro11を使って48kHz16bitにダウンサンプリングしました。
ダウンサンプリングした理由は、今回3種類のフィルタタイプによる比較を行うにあたって、どちらかというとロースペックにした方が差が出やすいのではないかと思ったからです。
今回試聴した曲を何曲か紹介します。以下はすべてダイレクトリッピングしてダウンサンプリングした48kHz16bitフォーマットですので、実際にOctaveでRIAAイコライザを通して聴くことができます。
かっこ内はアーティスト名と収録DISKです。
Minor Swing(Stephane Grappelli/Live in Sanfransisco)
Whisper Not(阿川泰子/Journey)
Autumn Leaves(Bill Evans/PORTRAIT IN JAZZ)
夏服のイブ(松田聖子/Seiko Town)
ロックンルージュ(松田聖子/Seiko Town)
Take Five(Dave Brubeck/TAKE FIVE(Single))
Mambo Mongo(Belmonte & His Afro Latin7/OLE)
NIGHT IN TUNISIA(HOT SALSA/Hot Salsa meets Swedish Jazz)
さて、実際に試聴してみた印象ですが、思ったほど違いはありませんでした。というかほぼ同じです。
ただ、ほんのわずかにですが、FIRの直線位相タイプは女性ボーカルのサ行やパーカッションのハイハット、トランペットの音、バイオリンの弦がこすれる音や、音が細く掠れる場面などが少し物足りないというか、リアリティに欠けるように聞こえる印象がしました。
FIRの非直線位相とIIRはほぼ違いがなく、FIRの直線位相に比べるとリアルな音、という印象です。
ピアノの音や、大編成の演奏の音はほとんど差を感じませんでした。
もっともこれはブラインドテストではなく、自分でどのEQでかけているかわかっていますから、先入観でそう感じた可能性は多いにあります。
機会があれば、少し広めの会場でたくさんの人に聴いてもらって比較をしてみたいと思います。
みなさんもぜひ試してみてくださいね(^-^)
【20250118追記】
2025年1月18日、秋葉原で行われた手作りアンプの会の三土会にて、この記事で比較した3種類のデジタルRIAAイコライザの試聴会を行いました。試聴方法は、イコライザタイプ(FIR非直線位相、IIR、FIR直線位相)に①~③の番号をつけて、タイプの異なる3曲について聴き比べを行い、あとで①~③のうちどれがよかったか、あるいは違いがわからなかったということをみなさんに伺いました。結果が出るまでどのタイプが何番かは伏せておきました。
参加人数は14~15名、会場は秋葉原の万世区民会館7階洋室Aで、この会場は会議室であるため音響的にはライブでした。
結果はとても意外で、FIR非直線位相(アナログ等価)を選んだ人が2名、IIR(アナログ等価)が2名、FIR直線位相が残り全員となりました(@_@)
また、違いがわからないという人はいませんでした。
今回の結果から、理論的に正しい音が心地よいとは限らないということです。
IIRタイプについてはナイキスト周波数に近づくほど誤差が大きくなり、このときゲイン誤差と位相誤差がトレードオフの関係にあるため、どちらを優先した方が良いか?という試聴会も過去に行ったことがありましたが、このときはゲイン誤差は耳で差がわかるが、位相誤差はまったくわからない、という結果になっています。
そうすると、人の耳は位相には鈍感らしいということがわかります。
何事もやってみないとわかりませんね。オーディオは奥が深い……
最近のコメント