超シンプルAMトランスミッタ

図1.超シンプルAMトランスミッタ
3月に行われた手作りアンプの会の「三土会」で、SさんがAMトランスミッタを発表されて、おもしろそうだったのでぼくもやってみようと思った。Sさんの回路は500kHzのセラミック振動子をクラップ発振回路で発振させ3逓倍したものをキャリアとし、DBM(ダブルバランスドミキサ)μPC1037でAM変調をかけて、出力バッファを経て送信するという、とても本格的なもの。
ぼくとしては当初トランジスタ1石のシンプルな発振回路にAM変調をかけて、簡単に実験して動作確認すればいいか……と思っていた。よくある回路は次の図2に示すような感じのもの。これはネットで見つけた、電子ブロックに付いてきたという回路。
図2.電子ブロックのAMワイヤレスマイク
とてもシンプルで、これなら手持ちの部品ですぐに作れそうだ(^-^)
しかし、これをこのまま作って、動きましたね、おもしろかったですね、ではおもしろくない。
なにかおもしろいやり方はないかな……と思っていたら、まくら様(眠ってると知恵をくれる神様)の啓示で図1のような回路が天から降ってきた。
74HCU04と水晶を使ったよくある発振回路の電源に音声信号を重畳すれば、発振波にAM変調がかかる。
電源に音声信号を重畳するには、単に直流電源に音声信号を直列に入れてやれば良いのではないか?
74HCU04の動作範囲は2V~6Vなので、電源として4Vを中心として、±2Vの音声入力を重畳することができるだろう。
ただし、これをやるには音声信号がDC出力(コンデンサでDCカットしていない直結状態)で、なおかつ振幅が4Vp-p程度欲しい。
ちょうどSSDACを使ったSDプレーヤーが直結出力で、出力レベルが最大2Vrms程度なので、簡単に実験することができそうだ(^-^)
もし直結出力でない信号を入れたい場合は、トランスを使えばできそうだが、今回は検証していない。
入力にトランスを使って2次側を電源と直列にすれば実現できる(後述)。
原理的には図1の回路で動作可能だが、74HCU04は6個のインバータが入っているので、残り5個の入力を処理しなければいけない。
そこで実際には残りのインバータの入力処理の意味も含めて図3の回路を作ってみた。
図3.AMトランスミッタ回路
U1B~U1Fは余ったので接続しただけであり、図1の回路にして残りをGNDに入力処理しても同じように動作する。
この回路でBT1はリチウムポリマ電池で、消費電流は約5mA、アンテナは60センチほどのビニール線だ。
この回路で送信し、ラジオで受信した様子は次の通り。
動画1.送信、受信再生の様子
入力はSDプレーヤー、使用曲は、LA INDIAの"En Nueva York"
このとおり音声変調がかかり、送信できている。参考のため100kHz正弦波での変調波形を図4に示す。
図4.変調波形
1MHzの搬送波の上半分に100kHzの正弦波が重畳してAM変調になっている。
この回路では変調波形は上半分になってしまうが、上の動画で示したように音声はちゃんと送れている。
また、搬送波は方形波なので、奇数次の高調波が出まくっている。実用的には出力はDCカットしてLPFをつける。
さて以上は最終的な回路だが、じつはここまで多少の紆余曲折があった。
まず、手持ちの部品にAM放送帯の水晶がなかったので、4MHzの水晶を使って4分周して1MHzとして実験した(図5)。
図5.4MHzの水晶を使って4分周して1MHzの搬送波を得る回路
原理的にはまったくこれでOKであるし、動作も問題なかったが、とにかく超シンプルに作りたかったので、やはり分周回路は省きたいところだ。
AMラジオ周波数帯の水晶なんかはどこにでもあるだろうと思って、ネットで探したがどこにもない(^-^;
さすがにdigikeyにはあったが、なんと1MHzの水晶1個で1700円位している。送料を入れたら4000円近い。お遊びに使うにはちと高すぎる。
そこで秋葉原へ水晶を探す旅に出た。いまとなっては、心当たりは日米商事くらいか……たしか大量の水晶発振子を見た記憶がある。
はたして、日米商事の水晶の部品棚を端から端まで探したが、ついぞAM周波数帯の水晶は出てこなかった……
ダメ元で千石とラジオデパートも巡ったが、やはりなかった。一昔前なら鈴商か、国際ラジオか、最後の砦の小沢電気があったのに……orz
というわけで、秋葉旅もむなしく途方に暮れて帰ってきて、念のためヤフオクを探していたら、かなり古めの巨大な1MHz水晶が950円即決で出ていた。送料は180円。うーむ、水晶というと100円かせいぜい200円くらいでほしいところだが……
ちょっと保留にして、念のためメルカリを探したらなんと、5個346円(送料込み)で出品されていたので嬉々として購入した\(^o^)/
図5の試作回路に対して、水晶をメルカリの1MHzのものに差し替えたが発振しない……
負荷容量を50pF位までの範囲であれこれ変えたり、出力側に抵抗を入れてみたりと、いろいろ試したがうんともすんとも発振しない。
これはひょっとして不良品か……となかば落胆しながらもなお試行錯誤をしていたら、もとの回路で電源電圧を2Vまで下げると1MHzの発振を開始した。そうすると条件次第で発振させられることがわかったので、さらに試行錯誤を続けた結果、出力側の負荷容量を1000pFにすると安定して発振開始することがわかった。負荷容量が1000pFというのはあまり聞いたことがない異常な数値だが、本当に水晶なのだろうか。じつはセラミック発振子だったりして……?
現物の写真を写真1に示す。
写真1.YTK(?)の捺印が入った1MHz水晶
念のため購入した5個すべてに対して動作確認を行ったが、やはり出力側負荷容量1000pFとすると、安定して発振した。
このあたりは追求したいところだが、仕様が謎なので、とりあえず良しとする。
そういうわけで、とりあえずは超簡単AMトランスミッタが構成できました。
ネットで探してみると、タイマーIC555を使ったものが出てきますが、今回の方式はみつからなかったので、なかなかユニークなのではないかと思います(^-^)
【追記】
1MHzのセラミック振動子(写真2)がAliから届いたので、図3の回路の水晶の代わりに装着したらまったく問題なく動作しました。動作状態は水晶発振子を使った場合と同等です。
写真2.セラミック振動子
【20250402追記】
トランスを使って入力する方法を、以下のとおり検証した。
図3の超シンプル回路で音声をAM送信するには、音源がDC構成の出力になっていることが条件だったが、トランスを使って入力することで非DCの音源(コンデンサでDCカットされたもの)も入力できる。
今回検証したのは部品箱に入っていたST-52、ST-72(いずれもドライバートランス)、ピエゾ用ドライブトランスの3種類。
ピエゾ用ドライブトランスというのは、あまりなじみがない部品だが、これは防犯ブザーなどでピエゾスピーカーを大音量で鳴らすために使われるトランスで、1次巻線と2次巻線が絶縁されていないオートトランスのような構成の3端子のトランスだ。写真を写真3に示す。
写真3.今回使ったトランス
左から、ピエゾ用ドライブトランス、ST-72、ST-52。
ピエゾ用ドライブトランスは図6に示すような構造になっている。あまり販売しているのを見ないし、正式名称もよくわからないが、aliexpressで販売されていた。
図6.ピエゾ用ドライブトランスの構造
今回検証したトランスの実測データは表1に示すとおり。
表1.実測データ
いずれも1次側の巻線抵抗が低めなため、音源のドライブ能力が要求される。とくにピエゾ用ドライブトランスは12Ωしかないので要注意だ。
入力にこれらのトランスを使用する場合の回路図を図7、図8に示す。
図7.入力にST-XXトランスを使用した回路
図8.入力にピエゾ用ドライブトランスを使用した回路
図7または図8の回路を使うことで、DCのソースも非DCのソースも使うことができる。
この回路では74HCU04の稼働電圧範囲2V~6Vをいっぱいに使ってAM変調をかけたいので、入力信号レベルをこれにあわせて4Vp-pとしたいところだが、入力でトランスによって昇圧できるのもメリットになる。ピエゾ用トランスでは7倍の巻線比があるのでお得な感じだが、入力側の巻線抵抗が12Ωしかないので音源側のドライブ能力が要求される。
【20250407追記 アンテナ追加】
以上の実験では、アンテナは60センチ程度のビニル線をつないだだけであり、ノイズなしで受信できる距離は高々1m程度だった。
アンテナの工夫だけでもう少し放射効率を上げられないか検討したところ、バーアンテナとバリコンで同調式のアンテナを組むことで放射効率が上がり、3-5m程度まで飛距離が伸びた。
【注意】電波法では無許可で出せる電波の範囲が決められていて、1MHzでは3mの距離における電界強度を補正した値が500μV/mより低いことと定められています。実験は自己責任でお願いします。
今回実験した1MHzでは、波長は約300mであり、アンテナを検討する場合、1/2λダイポールで150m、1/4λホイップなら75m必要なので、60センチのビニル線ではまったくデタラメに近い。そこで、ローディングコイルを入れて、1~2m程度の小型のアンテナが作れないかと考えていたが、それならばAMラジオ用のバーアンテナとバリコンで共振回路にしてこれをアンテナにすれば良いんじゃね!?と思い、実際にやってみた。アンテナはLC直列共振回路と等価と見なせるので、図9の構成にした。実装写真を写真4に示す。
図9.バーアンテナコイルとバリコンによるアンテナ
写真4.バーアンテナコイルとバリコンによるアンテナ実装の様子
白い円盤はバリコンのツマミ。
この状態でラジオをチューニングして少し離れた場所に置き、もっとも受信状態がよくなるようにアンテナのバリコンを調整する。
この結果、思いのほか飛距離が伸びて、60センチのビニル線ではまったく届かなかった隣室まで電波が飛ぶようになった(^-^)
なお、ビニル線アンテナでは消費電流は5mAほどだったが、このアンテナで同調させると消費電流は7~8mA程度に増加する。
【20250416追記 受信波形観測】
話が前後するようだが、通常のAM変調波形は図10のようになる。
図10.AM変調の波形
ところが今回の超シンプルトランスミッタではすでに図4で示したとおり、変調波形が上半分になる。この場合、復調するとどんな波形になるのだろうか?
AM変調波の場合、通常はダイオードで包絡線検波を行う。簡単にいうと片側だけを通すように整流してエンベロープを復調波として得るというやり方だ。図10の波形であれば、ダイオードの向きによってプラス側が出てくるかマイナス側が出てくるかの違いがあるが、いずれにしても復調波が得られる。
それでは今回の片側だけの変調波形(図4)の場合はどうなるのだろうか?
ダイオードがA→Kの向きならエンベロープで復調波形が得られそうだが、逆の場合は?
下側が平坦なので復調波形は得られない?いや、それは違う気がする……
今回のトランスミッタ回路で1kHzの正弦波を送信して、実際にゲルマラジオを組んで音を聴いてみると、ダイオードがどちらの向きでも同じように聞こえた。回路を図11、図12に示す。
図11.ゲルマラジオ① ダイオード向きがK-A
図12.ゲルマラジオ② ダイオード向きがA-K
試聴は1MΩに並列にセラミックイヤホンをつないで行った。
それでは波形はどうなっているのだろうか?1MΩの両端をオシロで観測した波形を図13、図14に示す。
図13.ダイオード向きがK-Aの場合の出力波形
図14.ダイオード向きがA-K場合の出力波形
このようにダイオードの向きがどちらであっても復調波形が得られている。
ただし、送受信機間の距離が10センチ程度であったため、直流電界も含めて受信しているようだ。両図とも、1のマークが付いたカーソルラインが0Vなので、図13(ダイオードK-A向き)はマイナス、図14(ダイオードA-K向き)はプラスのオフセットが発生していることがわかる。直流電界は距離とともに急激に減衰し影響は小さくなる。
以上のように、今回のような片側変調でも、通常の復調回路で復調できることがわかりました(^-^)























































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