日記・コラム・つぶやき

2023年11月13日 (月)

トランジスタ技術の圧縮

先日、フジテレビ『世にも奇妙な物語』で、「トランジスタ技術の圧縮」が放映されましたね(^-^)
この物語は、今年CQ出版社の月刊誌「トランジスタ技術」通巻700号記念企画で掲載された、宮内悠介さんの短編小説です。
電子回路技術者なら、ああ、やったやった!!ぼくもやったよ!!!と納得するネタですし、電子技術に縁のない人にはちんぷんかんぷんな内容だったと思います。

まず、「トランジスタ技術」とは、古くから日本にある電子技術の月刊専門雑誌で、電子回路技術者でこれを知らないといったらたぶんその人はモグリじゃないかという位の、その筋では超メジャーな雑誌です。毎号最新の技術情報が掲載されるので、貴重な情報源として大事にとっておくような性質の雑誌です。
トランジスタ技術はたしか80年代から90年代にかけて厚さが最大になり、ピーク時にはおそらく4センチ以上あったんじゃないかと思います。なぜそんなに厚いかというと、広告が多かったからです。おそらく広告が全体の60%程度を占めていたんじゃないかと思います。
毎号大事にとっておくと、どんどん本棚が塞がっていき、そのうち床に平積みになり、平積みの山が増えて行き……という恐ろしいことになります。そこで、広告部分だけ取りのぞいて捨て、薄く製本してとっておくわけです。これがトランジスタ技術の「圧縮」です。

当時ぼくは高校の無線部に在籍していて、無線部では同じCQ出版社の「月刊CQ」を定期購読していました。思い出してみると、当時の月刊CQはトランジスタ技術よりさらに厚かったような気がします。
これは余談ですが(というか全部余談ですが)、ある日無線部室で届いた月刊CQを読んでいたら、広告ページの”サンハヤト”(基板メーカー名)が”サンハトヤ”に誤植されていて爆笑したおぼえがあります。
当時トランジスタ技術の内容は、高校生にとってはかなり敷居が高く、父が購読していたトランジスタ技術を時々めくる程度でした。父はその遙か前よりトランジスタ技術の読者で、物置には未圧縮のトランジスタ技術のバックナンバーがぎっしり入っていました。

ところが、おそらく2000年を過ぎたあたりからトランジスタ技術はだんだんと薄くなり始め、いまでは全盛期の1/2か、ヘタをすれば1/3近くまで薄くなってしまいました。これはなぜかというと、業者が広告を出さなくなったからです。インターネットの普及によって、広告の方法が大きく変わったことが原因です。そうなると広告収入に頼る雑誌は存亡の危機になりかねません。やはり古くからある「無線と実験」は、今年いっぱいをもって季刊化するとのことですし、ラジオ技術も読者の高齢化が進んでいて、いつどうなるかわかりません。
それでもいまある雑誌はここまで生き残ってきた強い種なのです。ぼくが子供のころから親しんできた「模型とラジオ」、「子供の科学」、「初歩のラジオ」、「ラジオの製作」などはどれもだいぶ前になくなってしまったし、マイコン(パソコン)黎明期に夢中になった月刊I/O(現在同名の雑誌あり)もなくなってしまいました。
トランジスタ技術はいまも技術者にとって最新情報を知るためになくてはならない雑誌です。日本の電子産業を支えている要素のひとつといっても過言ではないと思います。いつまでも存続してほしいと思っています。

ところで、テレビの「トランジスタ技術の圧縮」のラストは、ジローラモ氏が登場し、雑誌「レオン」を手に「パーティーはこれからだ」というオチがついていました。これは原作にはありません。
これはたしかに、テレビ的にはオチを付けたい気持ちはよくわかるのですが、レオンはちょっと違うんじゃないかなあ……
いや、ジローラモ氏が登場して意表を突いてておもしろいんだけど、雑誌の性質が違いすぎるんじゃないかと。
ファッション誌は、1冊丸ごと広告のような性質があるので、圧縮できないんじゃないかという気がします。
じゃあ、レオンのかわりに何かあるか?といわれたら、月刊CQじゃあんまりだし、月刊JR時刻表じゃあ、あまり圧縮できなさそうだし、ほとんど思いつきません(^-^;
やっぱり「トランジスタ技術」は特別な雑誌なんだ!という気がします。

テレビの進行役はタモリさんでしたね。タモリさんはアマチュア無線家なので、月刊CQは当然ご存じでしょうから、おそらくトランジスタ技術も知っているでしょう。そこまで考えるとなかなか妙ですね。

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2023年8月26日 (土)

洗濯機NW-D6CXの給水弁の修理

【20230904追記 ゴムパッキン交換編】
下記の元記事に書いたとおり、洗濯機NW-D6CXの給水弁のゴムパッキンが破れて水が入らなくなってしまい、破れたゴムパッキンを接着剤でふさいで一週間ほど使っていたが、どうも止水時に「チー」というごく小さい音がする。どうやら少量だが水がもれているようだ。そこでふたたび給水弁ユニットを取り出し、ゴムパッキンを点検したところ、接着剤が白化し、接着が剥がれてしまっているようだ(写真1)。やはり破れたゴムパッキンを接着剤で補修するのは無理だったようだ。

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写真1.白化して剥がれてまった接着剤

給水弁ユニットは品切れだったが、その内部のゴムパッキンだけ交換できれば修理することができるので、ゴムパッキンが売られていないか探したところ、amazonにそれらしいものがあった(写真2、写真3)。

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写真2.ゴムパッキン1 ゴム面に白い突起が2つある


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写真3.ゴムパッキン2 ゴム面の突起はオリジナルと同じ1つ


写真2のゴムパッキン1には寸法図がある(写真4)。

Pkn_dim
写真4.ゴムパッキン1の寸法図


オルジナルのゴムパッキンは、写真4の厚さ9.5mmの部分が実測で14.5mmで、この部分が違うが、その他はほぼ同等だ。
やってみないとわからないと判断して、上記2種類のゴムパッキンを購入して動作を確認してみた。

実際に送られてきたゴムパッキンを写真5,写真6に示す。いずれの写真も真ん中の黄色いものがもともと付いてたオリジナルのゴムパッキン、左右が今回の購入品。

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写真5.オリジナルと購入品のゴムパッキン

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写真6.オリジナルと購入品のゴムパッキン


給水弁ユニットを開けて、写真7のようにゴムパッキンを今回購入したものに交換する(右上の白いゴムパッキンが交換品)。


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写真7.給水弁ユニットの破れたゴムパッキン(右上)を交換する


今回購入した2種類のゴムパッキンを付けて、それぞれ動作を確認したところ、どちらも問題なく給水、止水の動作ができた。
今回はオリジナル品と同じく、ゴム面の突起がひとつのもの(写真3 ゴムパッキン2)を採用することにした。

そういうわけで、こんどこそだいじょうぶだと思う。

治ってよかった\(^o^)/



【20230826元の記事】
20年使ってきた全自動乾燥機付き洗濯機HITACHI NW-D6CXが、給水ができずC1エラーを吐いて止まるようになってしまった。
これは典型的な給水弁故障で、給水弁の中のゴムパッキンが破れたり穴が開いたりした場合に起こるらしい。
故障時に水が入りっぱなしになるのではなく、水が入らなくなる、という設計はすごいと思う。給水弁の動作はこちらで説明されている。
今回のような給水弁故障の場合、通常は給水弁ユニットを丸ごと交換するのだが、この機種に使われる給水弁ユニットNW-D8CX 038がどこも品切れで、生産終了となっているため入手は難しそうだ。
給水ができないとはいっても、チョロチョロとは水が入るのでここ2週間ほど騙し騙し使ってきたが、それもしんどいので修理できないものかと考えて、とにかくバラして故障箇所を見て検討することにした。

結果からいうと、想像したとおりゴムパッキンが破れていて、通常ならあきらめるしかない状態だったが、ダメ元で接着剤でゴムパッキンの破れを塞いだところ、なんとか給水はできるようになって、どうやらもうしばらく使えそうだ。

今回の作業で最も困難だったのは、洗濯機の上部パネルの取り外しだった。やり方がわからず、給水弁ユニットを取り出すまでに一週間以上要してしまった。ネジの締め付けトルクが猛烈に高く、通常のドライバーではお手上げだったが、幸いねじ頭が六角だったため、対辺7mmの六角ドライバー(いわゆるナット回し)で対応した。またネジを外しても、上部パネルは強固なパッチン止め(押し込むとツメがかかってロックされる機構)になっていて、ここでほぼ一週間費やしてしまった。図面がないパッチン止めの機構は、無理やり力をかけて破損してしまうと取り返しがつかないので、慎重さが求められる。
次の難関は給水ユニットの本体からの取り外しで、これもフレームのツメをドライバーでこじ開けないと取り外せない。
そして最後の難関は給水弁ユニットの分解。給水弁ユニットのネジはピン6ロブといわれる特殊ネジで、通常ならあきらめるところだが、幸い工具箱にこのドライバーセットが入っていた。

とにかく
「ぜったいに素人には手を出させねえ!」
という、メーカー側の非常に強い意志が感じられる造りだ。

実際の作業内容を以下に紹介する。(なお参考にされる場合は自己責任でお願いします。)

1 ACプラグを抜く

2 給水用の水道の蛇口を閉め、給水ホースを外す

3 上パネルを外し、給水弁ユニットを取り出して修理する

①上面パネル奥2箇所のネジ蓋を開け、ネジを外す(図1)
ただし、このネジは締め付けトルクが猛烈に高く、ジャストサイズのプラスドライバー3番ビットでも歯が立たなかったため、対辺7mmの六角頭をナットドライバーで回して外した。

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図1.背面側の2箇所のネジ穴の蓋を開けて、ネジを外す


②左右の手前側カバーを外す(図2)
手前側カバーは、ツメがかかってロックされているので、手でこじり外すかすきまにマイナスドライバーなどをこじ入れて外す。
左右ともカバーを外すとネジがあるので、これを外す。

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図2.手前側左右のカバーを外すとネジがあるので外す


③洗濯機の蓋を外す
・蓋の左ヒンジは奥に赤い樹脂ツメがあるので、これを右にスライドして止め軸を引っ込める(図3)。右ヒンジはワイヤスプリングが付いているので、ピンセットなどで外す(図4)。止め軸とワイヤスプリングを外したら、左右それぞれのヒンジをマイナスドライバーなどでこじって、手前側に引いて蓋を外す。

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図3.蓋の左ヒンジの赤い樹脂ツメを右にスライドして、止め軸を引っ込める

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図4.右ヒンジのワイヤスプリングを外す


④固定ピンを引き抜いて(図5)、洗剤投入口を外す(図6)

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図5.蓋後部にある、洗剤投入口ロックピンを外す

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図6.洗剤投入口を外す


⑤奥側の上面パネルを外す
図7のように奥側上面パネルの左右手前側からドライバーを差し込んで、柄を上に引き上げるようにしてバキバキとツメを外す。

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図7.奥側上面パネルの左右手前側からにドライバーを差し込んで柄を引き上げて外す


⑥給水弁ユニットから洗濯槽への配管のホースを、ホースバンドをゆるめて外す(図8)

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図8.洗濯槽への配管ホースを、ホースバンドをゆるめて外す
黒いのが配管ホース、銀色がホースバンド。


⑦給水弁ユニットと洗剤クリーマーが一体となったユニットを、左右手前、右うしろ側および左奥の4箇所のネジを外してから手前のツメがかかっている部分をドライバーでこじり広げて外す(図9)

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図9.給水弁ユニットと洗剤クリーマーを、手前側爪がかかっている部分をこじって外す


⑧給水弁ユニットを取り外す(図10)

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図10.取り外した給水弁ユニット

⑨給水弁ユニットのネジ(ピン6ロブ)を外して分解する(図11)
給水弁を開けると、図12のようになっているので、ゴムパッキンを外して点検する(図13)。

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図11.ピン6ロブネジを外して、給水弁ユニットを分解する


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図12.給水弁ユニットの内部
右上のゴムパッキンを外したところ。

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図13.ゴムパッキンを点検して破れを発見!

⑩ゴムパッキンの破れ部分が露出するように、ゴムパッキンを浮かせた状態で引っぱって固定するジグを作る(図14)
ゴムパッキンを浮かせるためのスペーサーは10セントユーロ硬貨がちょうどよかった。

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図14.ゴムパッキンを浮かせて固定し、破れた部分を露出するジグ。ネジに木綿糸を巻き付けてゴムパッキンを固定する。

⑪10セントユーロ硬貨と木綿糸を使って、ジグにゴムパッキンを浮かせた状態で固定して破れを露出し、そこに接着剤(コニシ ウルトラ多用途SU ソフト)を塗布して破れを塞ぐ(図15)
接着剤を乾かしてゴムパッキンの補修完了(図16)。

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図15.ゴムパッキンの破れに接着剤を塗布して塞ぐ

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図16.接着剤が乾いたらゴムパッキンの補修完了


⑫以上の手順を逆に行い、洗濯機を元の状態に戻す


以上、おおざっぱですが給水弁ユニット内部のゴムパッキンの補修を紹介しました。
これで給水は元通りジャバジャバと入るようになりました\(^o^)/

さて、あとどれくらい使えるか……


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2022年10月 1日 (土)

東京の生き物 ~蝶類編~

前回は初めてカワセミを見て感動し、東京の生き物 ~鳥類編~を書いた。
今回は東京で見た蝶を記録しておこうと思う。

・モンシロチョウ
・スジグロシロチョウ
・キタキチョウ
・モンキチョウ
・ツマキチョウ
※ツマキチョウは2年前に中野の緑道で、生まれて初めて見て感激しました。

・ヤマトシジミ
・ルリシジミ
・ウラナミシジミ
・ベニシジミ
・ウラギンシジミ

・ヒメアカタテハ
・ルリタテハ
・テングチョウ
・ツマグロヒョウモン
※ツマグロヒョウモンは今ではよく見る蝶ですが、初めて目撃したのは2002年頃で、カバマダラかと思ってぎょっとした記憶があります。

・アカボシゴマダラ
※アカボシゴマダラも最近はよく見られますが、初めて目撃したのはたしか2005年頃で、明治神宮でした。アサギマダラかと思ってびっくりして追いかけて観察したらアカボシゴマダラでした。

・ヒメジャノメ
・サトキマダラヒカゲ

・チャバネセセリ
・キマダラセセリ
・ダイミョウセセリ

・アゲハ
・キアゲハ
・クロアゲハ
・アオスジアゲハ

東京都内でもこれくらいの蝶は見つけることができます。
自由研究には事欠かないと思うのだが、東京の子供たちは興味がないのかな?

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2022年9月26日 (月)

東京の生き物 ~鳥類編2~

Kiminonaha
写真1.君は誰?

ベランダにお米を撒いておくと、キジバトやすずめがやってくる。
先日もたぷたぷした感じのキジバトとすずめが来たので動画を撮ったのだが、あとから見てみると、すずめに混じってすずめではないような小鳥が映っていた。ぱっと見すずめそっくりだが、すずめより少し小さめで、顔の斑がないし、お腹の白い部分も不鮮明だ。

動画:20220922ベランダに来た鳥たち

鳥には詳しくないのでネットで調べてみたが、似た感じの鳥でノビタキという小鳥がいる。北方や高山で子育てをして、秋には南方に移動する。もしこの鳥がノビタキなら、移動中にすずめに混ざってうちに立ち寄ったのだろうか。

鳥に詳しい方、この写真と動画でわかったらお教えください。


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2022年9月22日 (木)

東京の生き物 ~鳥類編~

20220922_20220922114801
写真1.初めて見たカワセミ

中野区に住んで20年ほどになる。
ここ2年はコロナ禍で出かける機会が激減したので、運動不足の解消も兼ねて毎朝散歩に出かけている。
もともと昆虫、中でも蝶は昔から好きだったので、ふだんから注意して見ていたが、朝の散歩をするようになると野鳥をよく見るようになった。
けさは公園の池でカワセミを初めて見て感動したので、記念に、この2年ほどで身近なところで目撃した鳥を記録しておこうと思う。

・スズメ
・ツバメ
・メジロ
・ドバト
・キジバト
・ヒヨドリ
・ムクドリ
・シジュウカラ
・ハシブトガラス
・ワカケホンセイインコ
・カルガモ
・カイツブリ
・アオサギ
・コゲラ
・ツグミ
・カワセミ
・ハクセキレイ

もしかしたら漏れがあるかもしれない。それでも17種。
案外いるものですね(^-^)

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2022年8月29日 (月)

なんとなくフラクタル

いつのことだったか、スーパーの野菜売り場を歩いていたら一瞬ゾッとした。
なぜゾッとしたのかわからず、しばらくあたりを見回してみると、視界に見慣れない名前の野菜が置いてあった。

「ロマネスコ」

初めて見る野菜だった。
気を取り直してその野菜をもう一度見て、しばし凝固してしまった。

Romanesco
写真1.ロマネスコ(Wikipediaより)

その形状は数式が具現化したようなものだった。
数学、その中でも虚数が出てくるような世界はもはや現実的ではなく、概念としてしか捉えることはできない。せいぜい複素平面上のグラフとしてしか目で見ることができないようなものだと思っていたが、それがいきなり野菜に姿を変えて目の前に現れたのだった。

「これはマンデルブロイ集合のフラクタル図形のようではないか……」

はるか30年前の数学の授業で教わったマンデルブロ集合(その当時はマンデルブロイ集合と言っていた)。
マンデルブロ集合とは、

f(z) = z^2 + Cという関数を、z0 = 0から始めて、
z1 = f(z0), z2 = f(z1), z3 = f(z2), …
とくり返し計算して数列を作っていったときに、k → ∞で|zk|が発散しない複素数Cの集合

で定義される複素平面上の集合で、どんな意味があるかはさておき、そのグラフにはとてもおもしろい性質がある。
それはフラクタル(自己相似性)という性質で、図形のある箇所を拡大していくと、もとの図形が現れる、ということが無限に繰り返されるような性質のことだ。
ロマネスコを一目見て、フラクタルな野菜だと直感し、想像上の生物が突然目の前に現れたかのような衝撃を受けてゾッとしたのだった。

マンデルブロ集合を実際にグラフに書いていろいろな場所で拡大縮小、彩色をすると、非常におもしろい模様が現れる。座標の位置、尺度、彩色のパターンは無限に選べるので、無限のパターンのマンデルブロ集合が楽しめる。
このページでは、マンデルブロ集合の描画プログラムを提供している。
「マンデルブロ集合描画スクリプトを開く」ボタンを押すと、別窓でプログラムが起動するので、「おまかせ描画」ボタンを押すと、ランダムな座標や尺度、彩色でマンデルブロ集合を描画してくれる。

おもしろい絵が出たら保存しておいて、ネクタイを作ってみたい。

Mandelbrot
図1.おまかせ描画でランダムに描画されたマンデルブロ集合

【参考ページ】
マンデルブロ集合の不思議な世界

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2022年6月24日 (金)

無帰還アンプ

このブログでは無帰還A級アンプ無帰還電流アンプ無帰還電流ヘッドホンアンプなど、無帰還アンプばかりを発表しているが、無帰還アンプを使い始めたのは実は最近のことだ。

2015年に金田明彦氏のフォノイコライザアンプの試作をした。
「電流伝送方式オーディオDCアンプ」金田明彦著
に掲載されていた「電流出力プリアンプ&パワーアンプ」のうちのフォノイコライザ部分のみを試作検証した。
このフォノイコは、DL-103のヘッドシェル内にJFETのVICを組み込んで電流伝送し、これをイコライザーIVCと呼ばれる電流入力の帰還型イコライザアンプで受けてRIAA処理する。オフセット対策としてSAOCと呼ばれる回路を搭載して、回路全体を通してDCを実現している。SAOCというのはDCサーボの一種だ。0.3mVという非常に微小なMCカートリッジの出力信号を、長旅させることなくヘッドシェル内で直接バッファアンプで受け取り、アンプまで送るというのは、理想的な考え方ではあるがなかなか実現は難しい。金田氏はこれを見事に実現した。
実際に作ってみると狙い通りSNRが非常に優れており、音質もよく、文句の付けどころは全くなかった。

このとき、ついでに以前から気になっていたCR型フォノイコライザを検証しておこう、と思ったことが、その後のアンプ設計に大きな影響を与えた。

高校生のときに2SK30を使ったシングルMCヘッドアンプを自作したが、それ以外はパワーアンプもフォノイコもすべて帰還アンプで、オーディオアンプというのはそういうものだと思い込んでいた。
ところが何かの記事で、「ツウは帰還型のイコライザを使わない。CR型を好む。」ということが書かれていたのが引っかかっていた。

CR型フォノイコライザを試作するにあたって参考にしたのは、安井章氏の製作記事だった。とはいってもそれほど正確に再現したわけではなく、CR回路の前後のバッファは部品箱にあったMUSES8920を使ってそれぞれ40dBとし、CR回路の定数だけ安井氏の設計にした。

音を聴いてみて驚いた。

SNRは金田式よりも劣っていたし、しかもカップリングコンデンサをつかってDCカットしているのに、音が鮮やかでリアルだった。
針を落としたときの音の印象も帰還型とはまったく違ってドライな印象がする(もっともこれはDCではないからかもしれないが)。
帰還型とCR型、DCと非DCなので、音の印象が違うのは当然といえば当然で、本当にCR型の方が音が心地良いのか?「ツウはCR型を好む」という言説に惑わされていないか?ということを念頭に、一か月ほど何度も取り替えて聴き比べをした。
その結果、特性はともかくとして自分はCR型の音の方が好きだという結論に達した。

帰還型のアンプというのは、つねに仕上がりの出力信号を入力信号と比較して、イコールになるように制御している。これを帰還制御といい、言葉通り動作していれば波形の再現性(=ひずみ)は理想的に仕上がるかもしれない。しかしながら実際に増幅回路を通過した信号は僅かながら遅れが生じる。常に遅れが生じた出力信号と入力信号を比較してこれらが等しくなるように増幅している、と考えれば帰還回路内の信号は非常に複雑な状態になっている。周波数が高くなるほど遅れの影響が大きくなり、ある周波数で位相遅れとゲインの関係が安定度の限界を超えたときに発振が起こる。こうならないように、高域特性を制限したり、位相補償を行ったりして安定性を確保する。これが帰還型アンプの現実だ。
一方、無帰還アンプは、定数により決められた増幅度で増幅するだけであり、高域で位相が遅れたり信号振幅が減衰することがあっても、それが帰還されて動作に影響することはない。きわめてシンプルだ。ただし、帰還型アンプと違って、波形を比較修正していないので、信号がひずまないように設計するのは難しい。
帰還アンプではひずみ率が0.01%以下などというのはザラだが、無帰還アンプでは0.1%を切れれば好成績という感じで、ひずみ率には10倍以上の差が出てしまう。なのでカタログスペックを重視するメーカーは作りたがらないのだ。

その後、パワーアンプも無帰還で作ってみたいと思うようになり、それならAuratone用に電流駆動アンプを無帰還で作れないか?と考えて開発したのが、無帰還電流駆動アンプだった。開発方針としては
①DC(直結)構成とする
②DCサーボは使わない
の2つを目標とした。
最初の試作から少しずつ改良を加え、最終的な回路を決定するのに半年ほど要したが、いまでもAuratone用としてはベストのアンプだと思っている。
ただ、DC電流駆動アンプは原理的にネットワーク入りのマルチウェイスピーカーには使えないし、フルレンジだとしても、今風のハイコンプライアンスのスピーカーでは低域が増強されすぎて非常にブーミーな音になってしまうことが多い。
そこで、この無帰還電流アンプをベースに開発したのが無帰還A級25Wアンプだった。このアンプは通常と同じ電圧出力のアンプなのでAuratoneだけではなく、マルチウェイのスピーカーにも使える。基板頒布したところ、ありがたいことに好評を得ている。

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2022年6月15日 (水)

Auratone 5Cと電流駆動アンプ

2000年頃、今日の必ずトクする一言というサイトで、スピーカーを電流駆動して使うという記事があるのをみつけた。帰還型のパワーアンプとスピーカーなら、スピーカーとGNDの間に電流検出抵抗を入れて、アンプはスピーカー出力から帰還をかける代わりに電流検出抵抗から帰還をかければ電流駆動になる。
さっそく当時使っていた金田式B級アンプに手を入れて電流駆動化し、ひとり暮らし開始時に買ったSX-100を鳴らしてみると、なるほど高域と低域が持ち上がって、少しにぎやかな感じの鳴り方になった。電流駆動では、スピーカーのインピーダンスにかかわらず入力信号に比例した電流でスピーカーを駆動するので、インピーダンスのピークがあるf0付近と、インピーダンスが緩やかに上昇する高域で音圧が持ち上がる。これは小音量時にラウドネスをかけるのと似た感覚で、とくに部屋で小音量で音楽を聴く場合などに適している。

また、同じサイトでAuratone 5Cというスピーカーが紹介されていた。これはかつてアメリカのスタジオにほぼ常備されていたニアフィールドモニタスピーカーで、ニュートラルな音と堅牢性に定評があって、愛好家がいるという。ただ残念なことにこれは70年代から80年代にかけて製造されたスピーカーで、もはや新品では入手不可能であった。
サイトでは、Auratone 5Cは電流駆動するのが良い、と書いてあって、これはいつか試してみたいと思っていた。

それからしばらく経った2010年頃、ふと思い出して、ヤフオクでAuratone 5Cを検索すると、なんといくつか出品されていたので購入して、音を聴いてみた。
聴いた最初の印象は「なんだか地味でとくに……」という感じだった。ボーカルだけは素直できれいに聴こえるが、楽器の鳴りが物足りない。低域も高域も足りない感じがした。
そこで、上記の電流駆動に切り替えて鳴らしてみたところ、低域と高域が持ち上がって、楽器の鳴りにもかなり厚みが出た。上のサイトで言っていた、Auratoneは電流で鳴らすとよい、というのはこういうことだったか!と感銘を受けた。

もともと使っていたSX-100はどうかというと、音を聴いて買ったスピーカーなので気に入って使っていたが、Auratoneと比べると、楽器はいいのだがボーカルが弱く感じる。
そこで、これはかなり変則的だが、SX-100とAuratone 5Cを直列にして鳴らしてみるとなかなかよろしい。Auratoneが弱い楽器をSX-100が補い、SX-100が弱いボーカルをAuratoneが補う。2022年現在もこのセッティングで聴いている。
アンプはすでにこのブログで紹介した無帰還電流アンプと無帰還アンプを気分によって使い分けているが、どちらできいてもよい感じで鳴っている。

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2022年6月12日 (日)

音声圧縮と音楽業界の衰退

いつのことだったか正確にはおぼえていないが、1995年前後だったと思う。
当時勤めていた会社のレコーディング機材の事業部で、MDを使ったMTRの検討のため試聴会をやるので、希望者は参加してほしいとのことだった。おもしろそうなので参加した。
ジャズやクラシックの音源と、それをMDに録音したものの聴き比べだったのだが、MDに録音した方は聞き分けられるレベルで音質が劣化していた。
音楽用途で、しかもMTRということはピンポン録音の可能性まであるとすれば、これは使い物にならないだろうから企画倒れじゃないかと思っていたが、予想に反してMDを使ったMTRは開発され販売されたようだ。

その後、たしか2000年頃だったと思うが、mp3に音声圧縮ができる「午後のコーダ」というフリーソフトが話題になり、おもしろそうなのでダウンロードして、音楽をmp3に圧縮して聴いてみたが、とてもじゃないが音楽に使うようなものではなかった。

デジタルによる録音は、データが変化しないが故に高品質が保たれるのが最大のメリットなのに、非可逆圧縮してデータの再現性が損なわれてしまったら意味がない。

たしかに実用上不便が生じない範囲でデータ量を減らすことが有効なこともあるだろうが、それは語学教材とか、通話とか、とにかく伝わりさえすれば音質にはさほどこだわらない、という用途に限られるだろう。音楽に使うというのはありえないと思った。


ところが、2010年くらいからクラブシーンなどであきらかに圧縮音源とわかる悪質な音源を使う人が出始めると、あっと言う間に普及し、そういう店には行く気がしなかった。
クラブシーンだけではなく、一般の音楽再生にも普及し、気軽に安くダウンロードできる圧縮音源ファイルで音楽を聴くということが完全にあたりまえになってしまった。
これはぼくの考えだが、圧縮音源の普及は、作り手とリスナーの両方の感受性を蝕み、創作される音楽の質は低下し、リスナーは音楽から離れていく。ぼく自身、ある曲が圧縮音源でしか手に入らないなら、その曲は聴かない。
現在のぼくの立ち位置は、音楽の購入はCD(またはレコード)のみである。
もちろんCDが完璧というわけではないが、世界中のあらゆる音楽ジャンルにわたって供給と音質が最も安定しているからだ。

DJが圧縮音源を使ってクラブシーンを破壊してしまうのには、店側にも原因がある場合がほとんどで、多くの店はDJにお金を払いたくないので、ちょっと音楽に詳しい客に目を付けて、おだてて、DJという称号(?)を与え、タダ同然で使う。タダ同然なのでCDを買うようなお金はなく、ダウンロード音源を使う。ひどい場合はyoutubeから録音してるなんてことすらある。
また”プロ”と称しているDJでも信じられないことに圧縮音源を使う人がいる。信じられないとしかいいようがない。
あるいはまた、せっかくCDで購入しているのに、リッピングで圧縮してしまってる人がいる。もうどうしようもない。

それでは生演奏が至上なのか。
PAを介さずに完全に生音だけで耳に届く演奏であれば、生演奏に優るものはないと思う。
ところが現代の音楽は、生演奏といえどもほとんどの場合PAが介在する。
PAが入るコンサートやライブで、とくにポップスやロックの場合は、ほぼ例外なく音量がデカすぎる。ボーカルが歌っている内容が聴き取れるだろうか?おそらく全体の音量が大きすぎて聴き取れない場合がほとんどだと思う。
その点、CDであれば最適な録音ですべての楽器や歌がきれいに聴き取れるようになっている。
なのでぼくは必ずしも生演奏が至上とは思っていない。

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2022年6月 8日 (水)

レコードからCDへ

高校に入ると、カートリッジによってレコードの音が変わるのがおもしろくて、カートリッジの収集を始めた。
初めてアンプを設計したのもこの頃で、一番最初は2SK30を使ったシングルMCヘッドアンプだった。
手作りしたアンプで音楽が聴けるのはとても楽しいことで、このあたりからアンプの道に入っていった。

この頃になるとCDプレーヤーが10万円を切るくらいの値段になってきていて、高校2年の時に友達がアルバイトをしてCDプレーヤーを買った。ただ、CDプレーヤーを買ったらすっからかんで、CDを買う金がないというオチがついていた。

大学に入ると、CDプレーヤーの値段もかなりこなれてきた。ぼくもアルバイトしたお金で初めてYAMAHAのCDプレーヤーを買った。大学の生協で3~4万円くらいだったと思う。

このころから金田式アンプの本などを参考にあれこれ試行錯誤し、最終的に金田式ベースのプリアンプとパワーアンプを作って、それから卒業後も含めて10年以上このセットを使って音楽を聴くことになった。


実家で父に借りて使っていたスピーカーは、テクニクスの12センチフルレンジ+ツイータ+パッシブラジエータの2WAYだったが、どうもツイータの鳴りが不自然な気がして、結局ネットワークを外してツイータは使わずにフルレンジ直結で使っていた。

大学を卒業して就職したときには、初めて実家を出て会社の寮でひとり暮らしを始めたが、実家ではスピーカーを父から借りて使っていたため、引っ越したときに新しいスピーカーを買いにいった。このとき買ったのが、今も使っているビクターのSX-100だった。12.5センチアルミコーンフルレンジ+バスレフだ。
このときは、実は見た目のかっこいいホワイトコーンのNS-10Mを買うつもりで秋葉原に行ったのだが、試聴させてもらったらまったくピンとこず、結局予算内で、聴いた中でいちばん印象がよかったSX-100にしたのだった。実家で聴いていたフルレンジに耳が慣れていたせいか、マルチウェイはどうもツイータが耳障りな感じがして違和感があったのだ。

就職して最初に配属されたのはMO(光磁気ディスク)ドライブの開発部隊だった。本当はオーディオ部門に入りたかったのだが叶わなかったのだ。MOドライブというのは非常に多くの種類の技術を必要とする分野で、入社当時は大学の専門に合わせて機構設計のチームに配属されたが、どうもあまりおもしろくなかったので、無理を言って回路設計に配置換えをしてもらった。
このとき、アクチュエータドライブICの回路を見る機会があったのだが、この回路はBTL電流駆動という、オーディオでは見ることのないおもしろい駆動方式だった。BTL電流駆動のICは日立のHA13490というデバイスだった。
「スピーカーを電流駆動するとどんな音がするんだろう?」
ふとそんなことを思ったが、当時仕事は充実していて、ジャズピアノを習いに行ったり、ジャズダンスを習いに行ったり忙しく、寮の部屋も狭かったため、部屋ではんだごてに火を入れて実験するようなことはなかった。

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