日記・コラム・つぶやき

2022年6月24日 (金)

無帰還アンプ

このブログでは無帰還A級アンプ無帰還電流アンプ無帰還電流ヘッドホンアンプなど、無帰還アンプばかりを発表しているが、無帰還アンプを使い始めたのは実は最近のことだ。

2015年に金田明彦氏のフォノイコライザアンプの試作をした。
「電流伝送方式オーディオDCアンプ」金田明彦著
に掲載されていた「電流出力プリアンプ&パワーアンプ」のうちのフォノイコライザ部分のみを試作検証した。
このフォノイコは、DL-103のヘッドシェル内にJFETのVICを組み込んで電流伝送し、これをイコライザーIVCと呼ばれる電流入力の帰還型イコライザアンプで受けてRIAA処理する。オフセット対策としてSAOCと呼ばれる回路を搭載して、回路全体を通してDCを実現している。SAOCというのはDCサーボの一種だ。0.3mVという非常に微小なMCカートリッジの出力信号を、長旅させることなくヘッドシェル内で直接バッファアンプで受け取り、アンプまで送るというのは、理想的な考え方ではあるがなかなか実現は難しい。金田氏はこれを見事に実現した。
実際に作ってみると狙い通りSNRが非常に優れており、音質もよく、文句の付けどころは全くなかった。

このとき、ついでに以前から気になっていたCR型フォノイコライザを検証しておこう、と思ったことが、その後のアンプ設計に大きな影響を与えた。

高校生のときに2SK30を使ったシングルMCヘッドアンプを自作したが、それ以外はパワーアンプもフォノイコもすべて帰還アンプで、オーディオアンプというのはそういうものだと思い込んでいた。
ところが何かの記事で、「ツウは帰還型のイコライザを使わない。CR型を好む。」ということが書かれていたのが引っかかっていた。

CR型フォノイコライザを試作するにあたって参考にしたのは、安井章氏の製作記事だった。とはいってもそれほど正確に再現したわけではなく、CR回路の前後のバッファは部品箱にあったMUSES8920を使ってそれぞれ40dBとし、CR回路の定数だけ安井氏の設計にした。

音を聴いてみて驚いた。

SNRは金田式よりも劣っていたし、しかもカップリングコンデンサをつかってDCカットしているのに、音が鮮やかでリアルだった。
針を落としたときの音の印象も帰還型とはまったく違ってドライな印象がする(もっともこれはDCではないからかもしれないが)。
帰還型とCR型、DCと非DCなので、音の印象が違うのは当然といえば当然で、本当にCR型の方が音が心地良いのか?「ツウはCR型を好む」という言説に惑わされていないか?ということを念頭に、一か月ほど何度も取り替えて聴き比べをした。
その結果、特性はともかくとして自分はCR型の音の方が好きだという結論に達した。

帰還型のアンプというのは、つねに仕上がりの出力信号を入力信号と比較して、イコールになるように制御している。これを帰還制御といい、言葉通り動作していれば波形の再現性(=ひずみ)は理想的に仕上がるかもしれない。しかしながら実際に増幅回路を通過した信号は僅かながら遅れが生じる。常に遅れが生じた出力信号と入力信号を比較してこれらが等しくなるように増幅している、と考えれば帰還回路内の信号は非常に複雑な状態になっている。周波数が高くなるほど遅れの影響が大きくなり、ある周波数で位相遅れが安定度の限界を超えたときに発振が起こる。こうならないように、高域特性を制限したり、位相補償を行ったりして安定性を確保する。これが帰還型アンプの現実だ。
一方、無帰還アンプは、定数により決められた増幅度で増幅するだけであり、高域で位相が遅れたり信号振幅が減衰することがあっても、それが帰還されて動作に影響することはない。きわめてシンプルだ。ただし、帰還型アンプと違って、波形を比較修正していないので、信号がひずまないように設計するのは難しい。
帰還アンプではひずみ率が0.01%以下などというのはザラだが、無帰還アンプでは0.1%を切れれば好成績という感じで、ひずみ率には10倍以上の差が出てしまう。なのでカタログスペックを重視するメーカーは作りたがらないのだ。

その後、パワーアンプも無帰還で作ってみたいと思うようになり、それならAuratone用に電流駆動アンプを無帰還で作れないか?と考えて開発したのが、無帰還電流駆動アンプだった。開発方針としては
①DC(直結)構成とする
②DCサーボは使わない
の2つを目標とした。
最初の試作から少しずつ改良を加え、最終的な回路を決定するのに半年ほど要したが、いまでもAuratone用としてはベストのアンプだと思っている。
ただ、DC電流駆動アンプは原理的にネットワーク入りのマルチウェイスピーカーには使えないし、フルレンジだとしても、今風のハイコンプライアンスのスピーカーでは低域が増強されすぎて非常にブーミーな音になってしまうことが多い。
そこで、この無帰還電流アンプをベースに開発したのが無帰還A級25Wアンプだった。このアンプは通常と同じ電圧出力のアンプなのでAuratoneだけではなく、マルチウェイのスピーカーにも使える。基板頒布したところ、ありがたいことに好評を得ている。

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2022年6月15日 (水)

Auratone 5Cと電流駆動アンプ

2000年頃、今日の必ずトクする一言というサイトで、スピーカーを電流駆動して使うという記事があるのをみつけた。帰還型のパワーアンプとスピーカーなら、スピーカーとGNDの間に電流検出抵抗を入れて、アンプはスピーカー出力から帰還をかける代わりに電流検出抵抗から帰還をかければ電流駆動になる。
さっそく当時使っていた金田式B級アンプに手を入れて電流駆動化し、ひとり暮らし開始時に買ったSX-100を鳴らしてみると、なるほど高域と低域が持ち上がって、少しにぎやかな感じの鳴り方になった。電流駆動では、スピーカーのインピーダンスにかかわらず入力信号に比例した電流でスピーカーを駆動するので、インピーダンスのピークがあるf0付近と、インピーダンスが緩やかに上昇する高域で音圧が持ち上がる。これは小音量時にラウドネスをかけるのと似た感覚で、とくに部屋で小音量で音楽を聴く場合などに適している。

また、同じサイトでAuratone 5Cというスピーカーが紹介されていた。これはかつてアメリカのスタジオにほぼ常備されていたニアフィールドモニタスピーカーで、ニュートラルな音と堅牢性に定評があって、愛好家がいるという。ただ残念なことにこれは70年代から80年代にかけて製造されたスピーカーで、もはや新品では入手不可能であった。
サイトでは、Auratone 5Cは電流駆動するのが良い、と書いてあって、これはいつか試してみたいと思っていた。

それからしばらく経った2010年頃、ふと思い出して、ヤフオクでAuratone 5Cを検索すると、なんといくつか出品されていたので購入して、音を聴いてみた。
聴いた最初の印象は「なんだか地味でとくに……」という感じだった。ボーカルだけは素直できれいに聴こえるが、楽器の鳴りが物足りない。低域も高域も足りない感じがした。
そこで、上記の電流駆動に切り替えて鳴らしてみたところ、低域と高域が持ち上がって、楽器の鳴りにもかなり厚みが出た。上のサイトで言っていた、Auratoneは電流で鳴らすとよい、というのはこういうことだったか!と感銘を受けた。

もともと使っていたSX-100はどうかというと、音を聴いて買ったスピーカーなので気に入って使っていたが、Auratoneと比べると、楽器はいいのだがボーカルが弱く感じる。
そこで、これはかなり変則的だが、SX-100とAuratone 5Cを直列にして鳴らしてみるとなかなかよろしい。Auratoneが弱い楽器をSX-100が補い、SX-100が弱いボーカルをAuratoneが補う。2022年現在もこのセッティングで聴いている。
アンプはすでにこのブログで紹介した無帰還電流アンプと無帰還アンプを気分によって使い分けているが、どちらできいてもよい感じで鳴っている。

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2022年6月12日 (日)

音声圧縮と音楽業界の衰退

いつのことだったか正確にはおぼえていないが、1995年前後だったと思う。
当時勤めていた会社のレコーディング機材の事業部で、MDを使ったMTRの検討のため試聴会をやるので、希望者は参加してほしいとのことだった。おもしろそうなので参加した。
ジャズやクラシックの音源と、それをMDに録音したものの聴き比べだったのだが、MDに録音した方は聞き分けられるレベルで音質が劣化していた。
音楽用途で、しかもMTRということはピンポン録音の可能性まであるとすれば、これは使い物にならないだろうから企画倒れじゃないかと思っていたが、予想に反してMDを使ったMTRは開発され販売されたようだ。

その後、たしか2000年頃だったと思うが、mp3に音声圧縮ができる「午後のコーダ」というフリーソフトが話題になり、おもしろそうなのでダウンロードして、音楽をmp3に圧縮して聴いてみたが、とてもじゃないが音楽に使うようなものではなかった。

デジタルによる録音は、データが変化しないが故に高品質が保たれるのが最大のメリットなのに、非可逆圧縮してデータの再現性が損なわれてしまったら意味がない。

たしかに実用上不便が生じない範囲でデータ量を減らすことが有効なこともあるだろうが、それは語学教材とか、通話とか、とにかく伝わりさえすれば音質にはさほどこだわらない、という用途に限られるだろう。音楽に使うというのはありえないと思った。


ところが、2010年くらいからクラブシーンなどであきらかに圧縮音源とわかる悪質な音源を使う人が出始めると、あっと言う間に普及し、そういう店には行く気がしなかった。
クラブシーンだけではなく、一般の音楽再生にも普及し、気軽に安くダウンロードできる圧縮音源ファイルで音楽を聴くということが完全にあたりまえになってしまった。
これはぼくの考えだが、圧縮音源の普及は、作り手とリスナーの両方の感受性を蝕み、創作される音楽の質は低下し、リスナーは音楽から離れていく。ぼく自身、ある曲が圧縮音源でしか手に入らないなら、その曲は聴かない。
現在のぼくの立ち位置は、音楽の購入はCD(またはレコード)のみである。
もちろんCDが完璧というわけではないが、世界中のあらゆる音楽ジャンルにわたって供給と音質が最も安定しているからだ。

DJが圧縮音源を使ってクラブシーンを破壊してしまうのには、店側にも原因がある場合がほとんどで、多くの店はDJにお金を払いたくないので、ちょっと音楽に詳しい客に目を付けて、おだてて、DJという称号(?)を与え、タダ同然で使う。タダ同然なのでCDを買うようなお金はなく、ダウンロード音源を使う。ひどい場合はyoutubeから録音してるなんてことすらある。
また”プロ”と称しているDJでも信じられないことに圧縮音源を使う人がいる。信じられないとしかいいようがない。
あるいはまた、せっかくCDで購入しているのに、リッピングで圧縮してしまってる人がいる。もうどうしようもない。

それでは生演奏が至上なのか。
PAを介さずに完全に生音だけで耳に届く演奏であれば、生演奏に優るものはないと思う。
ところが現代の音楽は、生演奏といえどもほとんどの場合PAが介在する。
PAが入るコンサートやライブで、とくにポップスやロックの場合は、ほぼ例外なく音量がデカすぎる。ボーカルが歌っている内容が聴き取れるだろうか?おそらく全体の音量が大きすぎて聴き取れない場合がほとんどだと思う。
その点、CDであれば最適な録音ですべての楽器や歌がきれいに聴き取れるようになっている。
なのでぼくは必ずしも生演奏が至上とは思っていない。

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2022年6月 8日 (水)

レコードからCDへ

高校に入ると、カートリッジによってレコードの音が変わるのがおもしろくて、カートリッジの収集を始めた。
初めてアンプを設計したのもこの頃で、一番最初は2SK30を使ったシングルMCヘッドアンプだった。
手作りしたアンプで音楽が聴けるのはとても楽しいことで、このあたりからアンプの道に入っていった。

この頃になるとCDプレーヤーが10万円を切るくらいの値段になってきていて、高校2年の時に友達がアルバイトをしてCDプレーヤーを買った。ただ、CDプレーヤーを買ったらすっからかんで、CDを買う金がないというオチがついていた。

大学に入ると、CDプレーヤーの値段もかなりこなれてきた。ぼくもアルバイトしたお金で初めてYAMAHAのCDプレーヤーを買った。大学の生協で3~4万円くらいだったと思う。

このころから金田式アンプの本などを参考にあれこれ試行錯誤し、最終的に金田式ベースのプリアンプとパワーアンプを作って、それから卒業後も含めて10年以上このセットを使って音楽を聴くことになった。


実家で父に借りて使っていたスピーカーは、テクニクスの12センチフルレンジ+ツイータ+パッシブラジエータの2WAYだったが、どうもツイータの鳴りが不自然な気がして、結局ネットワークを外してツイータは使わずにフルレンジ直結で使っていた。

大学を卒業して就職したときには、初めて実家を出て会社の寮でひとり暮らしを始めたが、実家ではスピーカーを父から借りて使っていたため、引っ越したときに新しいスピーカーを買いにいった。このとき買ったのが、今も使っているビクターのSX-100だった。12.5センチアルミコーンフルレンジ+バスレフだ。
このときは、実は見た目のかっこいいホワイトコーンのNS-10Mを買うつもりで秋葉原に行ったのだが、試聴させてもらったらまったくピンとこず、結局予算内で、聴いた中でいちばん印象がよかったSX-100にしたのだった。実家で聴いていたフルレンジに耳が慣れていたせいか、マルチウェイはどうもツイータが耳障りな感じがして違和感があったのだ。

就職して最初に配属されたのはMO(光磁気ディスク)ドライブの開発部隊だった。本当はオーディオ部門に入りたかったのだが叶わなかったのだ。MOドライブというのは非常に多くの種類の技術を必要とする分野で、入社当時は大学の専門に合わせて機構設計のチームに配属されたが、どうもあまりおもしろくなかったので、無理を言って回路設計に配置換えをしてもらった。
このとき、アクチュエータドライブICの回路を見る機会があったのだが、この回路はBTL電流駆動という、オーディオでは見ることのないおもしろい駆動方式だった。BTL電流駆動のICは日立のHA13490というデバイスだった。
「スピーカーを電流駆動するとどんな音がするんだろう?」
ふとそんなことを思ったが、当時仕事は充実していて、ジャズピアノを習いに行ったり、ジャズダンスを習いに行ったり忙しく、寮の部屋も狭かったため、部屋ではんだごてに火を入れて実験するようなことはなかった。

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2022年6月 5日 (日)

ヘッドホンステレオ

中学生になると、世間ではウォークマンというヘッドホンステレオが流行り始めた。ポータブルオーディオの先駆けだ。
たしか中学2年生のクリスマスに、AIWAのカセットボーイというヘッドホンステレオを買ってもらい、持ち歩いて音楽を聴いていたが、なんとこれが運のわるいことに欠陥個体だった。
本体を表向きにした場合と裏向きにした場合とで、再生スピードが変わってしまう。保証期間が1年あったので、すぐに修理に出した。修理から戻ってきたものを確認すると、フタを止めていた小ねじ2本がついていなかったが面倒なのでそのままにして、しばらくは問題ないかのようだったが、また少しすると同じ症状になってしまうため、再度修理に出した。2回目の修理では、「モーター交換」と書かれていて、さらに「ねじ2箇所欠損」と書いてあった。これで直っただろうと思い使っていると、またまた同じ症状になってしまった。これはもう修理もあてにならないだろうと判断して、自分であれこれ調べてみたが、わるそうな箇所は見つからなかった。速度がふらふらして気持ちがわるいので、あまり使うこともなくなったが、一年ほどたったある日、最後だと思って動作を確認していると、どうやら原因と思われるものを発見した。この機種のモーターにはコアレスモーターが使われていたが、コアレスモータはコアありのモータと違って、磁石によってローターが引き込まれないため、ローターの軸方向の位置が勝手には決まらない。そこでシャフトの本体軸受けの近くに溝がついていてEリングを嵌めることで位置が変わらないように設計されているようなのだが、このEリングがなくなっていて、本体の裏表でシャフトが0.5mm程度ずれるのだった。その結果モーターの特性が裏表で変わってしまい、回転数が変わってしまっていた。ということは、修理で「モーター交換」と書かれていたのはウソで、グリスでも塗ってごまかしたのではないかと思われた。
原因がわかったものの、ぴったり合うEリングが見つからないので、秋葉原で買ってきた適当なモーターに電子ガバナ回路を付けて改造して使っていた。多少のノイズが入るようになったが、回転が安定しないよりははるかにマシだったため、これでしばらく使った。
それにしても、不良品を引いてしまったのは不運だったが、そのあとの修理対応もひどいものだったので、もうこのメーカーの製品は買う気がしなかった。
それからしばらくしてこのメーカーは消滅してしまった。修理をきちんとする会社だったら、あるいは生き残っていたかもしれない。

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2022年6月 2日 (木)

アジマスとテープ速度

小学2年生ではんだごてと、科学教材社のゲルマラジオキットを買い与えられ、それ以来はんだごてをにぎって工作する種類の人間になったが、はっきりオーディオと関係ができたのは、小学5年生あたりではなかったかと思う。
その当時、初めてステレオラジカセを買ってもらい、レコードは父にカセットテープに録音してもらって、このラジカセで聞いていた。お小遣いで初めて買ったレコードはピンクレディーのベスト盤だった。
この頃から友達とテープの貸し借りをするようになり、借りたテープをダビングして聴きたいという欲求が出てきたため、父からカセットデッキを借りて、自分のラジカセとつないでダビングした。父のカセットデッキはビクターのCCR-667だった。ラジカセとカセットデッキをピンケーブルで接続し、再生したものをカセットデッキで録音していた。
ところが、ダビングしたテープを聴いていると、なにか違和感があった。ダビングすれば音質は劣化するが、どうもそれだけの問題ではない違和感だった。しばらく聴いていると、早さが少し遅いのではないか?と思うようになり、父に相談して、ラジカセの蓋を開けて、ラジカセのカセットテープのスピード調整用のVRを教えてもらい、カセットデッキでピアノの単音を録音したものをラジカセで再生したときに、耳で聴いて同じ音程になるように調整した。(この問題は後にもときどき発生したため、中学生の頃には耳ではなくギター用のチューニングメータを使って調整するようになった。)
これが、”オーディオ”に関わった最初の記憶だと思う。

中学生になって、FMを録音したり、友達とカセットテープの貸し借りをしたりと、より活発にオーディオを活用するようになると、漠然とした疑問を抱くようになった。
「どうして他人に録音してもらったテープは音が冴えないような感じがするのか」
これは漠然とそう感じていただけで、根拠もなく、しばらくどうしようもない問題として、できる限り録音は自分でやる、という消極的な対応しかとれなかったが、あるとき父と話をしていて、「それはたぶんアジマスの問題ではないか」ということを教えてもらった。アジマスというのは、テープの録音再生に使われる磁気ヘッドのギャップと、テープの走行方向の角度のことで、これが90度なら理想だが、多くの場合メーカーや機種によってまちまちで、録音と再生で少しでもアジマスが違うと、信号の位相ずれによって打ち消しが起こり、具体的には高域が出なくなる。さっそく、誰かにとってもらって音が冴えないと思っていたテープに対して、再生するラジカセのアジマスを調整してみたところ、急に霧が晴れるように音質が改善した。それ以来、家の中にあるすべてのデッキとラジカセのアジマスを、家の中でいちばん信頼できそうなカセットデッキに合わせた。他人に録ってもらったテープに関してはどうしようもないので、できる限り録音、ダビングは自分でするというルールにした。

ナカミチが自動でアジマス調整をする画期的なカセットデッキ”DRAGON”を発表したのは、この数年後だった。

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2021年6月27日 (日)

浄水器の蛇口アダプタ

キッチンの水道の蛇口に浄水器をつけている。
クリンスイCB013-WTという製品で、1700円程度、カートリッジのみなら2個で2400円ほどで買える、比較的廉価なタイプだ。
最初はおまじないのつもりで買ってつけてみたが、この程度でも水道直接と浄水器で濾過した水では味が違う。
いきなり一杯出されてどちらか当てろと言われれば無理かもしれないが、ふたつ並べて出されて、どちらが浄水器を通したものかといわれたら、おそらく当てられるであろう程度の効果がある。

キッチンの蛇口はもともと金属のねじ込み式の泡沫金具が付いていたが、浄水器を使うには 泡沫金具の代わりにプラスチックのアダプタをねじ込んで、浄水器に接続する。

Jousuiki
写真1.浄水器と蛇口を接続するアダプタ


ところで、ベランダの鉢植えが最近は増えてきてしまったので、水遣りに自動散水機を使っているが、散水機を使うにはその都度浄水器を外して、散水機に付け替えなければならない。夏場の水遣りは毎日なので、少なくとも一日に一度は浄水器と散水機の付け替えをすることになる。
すると、浄水器のアダプタのプラスチックのネジが、蛇口の金属のネジに負けて、だんだんに摩耗したり、あるいはねじ込むときに曲がって入れてしまったりして、ネジがバカになってしまう。どれくらいでダメになるかというと、1シーズン持つかどうかといった具合だ。

それで、このアダプタのネジがバカになってしまったらもう使えないのだが、このアダプタ部分だけを買うことはできないので、浄水器を買い直すしかないということになる。それで毎回モヤモヤするわけだ。

今回もまさに今日、ネジをバカにしてしまって悔しいので、この部分だけ3Dプリンタで作れないかどうか検討した。

これまで3Dプリンタでネジを造形したことはないし、最小1mm幅程度の造形しかできないような精度の3Dプリンタで、はたして実用できるネジが造形できるだろうか。やってみるまではかなり悲観的で、でもやってみてダメならあきらめもつくだろう、程度の意気込みだった。


Jousuiki_adapter
写真2.ねじをバカにしてしまったアダプタ(左)と3Dプリンタで造形したアダプタ(右)

Jousuiki3d
図1.浄水器アダプタの設計の様子


写真2にもとのアダプタと今回3Dプリンタで造形したアダプタを示す。
図1にはDesignSpark Mechanicalでの設計の様子を示す。

1回目は径が小さく蛇口にねじ込めなかったが、2回目の設計でうまくいった。
黒いゴムのパッキンを新しく造形したアダプタに付け替えて、蛇口に装着すると、なんと問題なく使えた\(^o^)/
これで人生のモヤモヤがひとつ減った。

今回製作したアダプタはクリンスイCB013-WTに付属のW-22というタイプのものだ。
おそらくそんな人はいないとは思うが、ぼくと同じ悩みを抱えている人に3Dプリンタのデータをさしあげます。
ダウンロードしてお使いください。

ダウンロード - jousui_adapter001.stl

 

 

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2020年9月 3日 (木)

中華温調はんだごて(3)

表題の件についてアキーロさんよりメッセージで、

「2ボタン同時押しで補正モードに入る」

との情報をいただきました。アキーロ さんありがとうございます(^-^)

 

ぼくは2本入手しましたが、どちらも取説が付いておらず、補正入力のことは知りませんでした(^-^;

補正のやり方は、

① 2ボタン同時押しして補正モードに入る

② 補正値(℃)を+ ーで設定する

③ 数秒放置すると自動的に補正モードから抜け、補正値が反映される

たとえば、補正値を20℃に設定すれば、コテの温度は同じ設定値で約20℃高くなり、補正値がー30℃なら約30℃低くなります。

 

中華温調はんだごて(2)で紹介した改造を施した状態で試してみたところ、補正は反映されているようです。

 

ついでなので近況です。

コロナ禍でずっと自粛モードが続いているので、ここ数ヶ月引きこもってここぞとばかり工作や実験をやっています。こういうときは、「よくわからない分野なのでまとまった時間があれば検証してみたい」といった課題に取り組むチャンスです。
ぼくはこの数日、FPGA/CPLDの開発環境整備とVHDLの実習をしています(^-^)

 

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2020年5月20日 (水)

LTSpiceでトライアックをシミュレーションする

中華製はんだごての件でトライアックにほとんど初めて触れたので、この機会にサイリスタについて考察しておこうと思い、まずはLTSPICEでのシミュレーションをしようとしたが、なんとLTSPICEにはトライアックもダイアックも記号があるだけで中身がない。たとえば図1のような回路を書いてシミュレーションしようとするとエラーが出る。

2_20200520090301
図1.トライアックに関するエラー
これは、「”トライアック”という部品の中身がわかりません」ということ。


トライアックやダイアックは、LTSPICEの部品としてLib\sym\Miscに格納されているが、これは部品記号だけで中身(部品としてのパラメータ)をもっていないので、このままでは使えないということのようだ。
こういう場合はどこかからシミュレーションモデルをもらってきて、回路記号に対して割り付けてやる手続きが必要だ。備忘録として書いておく。

今回はSTmicro社からトライアックとダイアックのシミュレーションモデルを入手した。
STmicroのホームページの検索で、”Triac SPICE”で検索するといくつか候補が出るので、今回はこの中から
en.standard_snubberless_triacs_pspice.zip
をダウンロードした。ダイアックも同様に”DIAC SPICE”で検索して、
en.diacs_pspice.zip
をダウンロード。

ダウンロードしたら解凍して、
C:\Users\higo\Documents\LTspiceXVII\lib
の下にホルダごとコピー。(どこでもよい)

次にLTSPICE上で.opを使って、”.lib”と入力し、回路図上の適当な場所に貼る。
その貼付けた”.lib”を右クリックし、BROWSEボタンを押して、先ほど解凍してコピーしたホルダの中の.libファイルを指定する。たとえば次のようになる。

.lib C:\Users\higo\Documents\LTspiceXVII\lib\standard_snubberless_triacs_Pspice\st_standard_snubberless_triacs.lib

そしてこんどはコピーしたホルダの中にあるst_standard_snubberless_triacs.libをメモ帳などで開くと、部品型番ごとに

.subckt BTA12-600B A K G

などの記述があるので、使いたい部品の型番部分をコピーしておく。この場合は”BTA12-600B”(A K Gはピン名なのでコピーしない)。

回路に戻って、回路図上のTRIACを右クリックするとComponet Attribute Editorという窓が出るので、
①prefixがXになっていることを確認(違っていたらXにする)
②valueに先ほどコピーした部品型番BTA12-600Bをペースト

ダイアックも同じように行う。

回路は図2のようになる。V1が入力する交流電源(100V 50Hz)、R1が負荷だ。

 

3_20200520093801
図2.シミュレーション回路
DIACにDB3をTRIACにBTA12-600Bをそれぞれ割り付けた

 

図2の回路で、位相制御のタイミングを決めるC1,R2のうちR2を10kΩから300kΩまで50kステップで変化させたときのtransientシミュレーションを図3に示す。

 

1_20200520090301
図3.シミュレーション結果
閾値を決めるR2をステップで変化させると、負荷にかかる電源波形が削られていくのがわかる。


おもしろいですねー\(^o^)/

ちなみにLTSPICEの参考書はオーム社の「LTSPICEで学ぶ電子回路」がおすすめです。
著者の渋谷さんとはCQ社のイベントで一度お目にかかりました。サインもらっておけばよかったなあ。

 

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2020年5月10日 (日)

無帰還A級25Wパワーアンプ(基板頒布あり)

Cimg5979

【20210929訂正情報】
  頒布基板において、Q1、Q4の2SK117BLのシルクの向きが逆になっています。
 正しくはそれぞれの印字面がシルクとは逆の向きとなります。おわびして訂正します。

  ただし、JFETはゲートを中心にソース、ドレインが対称構造となっており、ソース、ドレインは互換性があるため、
 シルク通りの実装でも問題はありません。すでに実装してしまった場合は修正する必要はありません。

以前、無帰還電圧アンプをこのブログで紹介したが、保護回路をどうするか保留にしたまま4年経ってしまった。
通常はスピーカー保護回路をつけて、リレーを使ってDC検出時にスピーカーを切り離すということをするが、リレー接点が入るのがいやなのでどうするか保留にしていたのだった。

この問題を解決するため、フォトボルでMOSFETを駆動してリレーの替わりにするという手段がある。これは一般的に知られたやり方なのでおそらく問題はないだろうと考えていたが、自分でやってみて特性に問題が出ないことを確かめたいと思っていた。今回コロナで自粛生活が続いており時間もあったので検証し、問題がなさそうだったので保護回路入りでアンプ基板を起こして作り直してみた。アンプ回路を図1に示す。

Schematic

図1.無帰還A級25W電圧アンプ
保護回路はベースとエミッタから入力する古いタイプのシンプルなものにした

 

回路は初段ダイヤモンドバッファで受けた後カレントミラーで電流を約2.2倍増幅し、RV2でI/V変換するとともにここでオフセット調整し、この段でバイアス電圧を発生してQ14、Q15以降の終段をドライブする。

全高調波歪+ノイズ(THD+N)の測定結果を図2、図3に示す。

Thd_l

図2.THD+N(Left)

 

Thd_r

図3.THD+N(Right)

 

今回は半導体のペア取りをまじめに行ったためか、あるいはひずみ率測定にwavegeneの「FFTに最適化」を試したためか、
前回の測定よりも若干よい特性になり、図3では一部0.01%を割り込む結果となった。

周波数特性は図4に代表して右チャンネルを示す。
また図5には10kHz矩形波の出力を示す。

Freq_res

図4.周波数特性
-3dB ポイントはおよそ300kHzあたり

 

10krect

図5.10kHz矩形波出力
群遅延によるひずみもないので位相補償なし

 

周波数特性と矩形波も問題なし。

出力インピーダンスと、スピーカープロテクト電圧の実測値を表1,表2に示す。

 

表1.出力インピーダンス
Impedance

 

表2.スピーカープロテクト電圧
Protect

 

出力インピーダンスは前回の測定とほぼ同じだ。むやみに低いよりも若干電流駆動気味になるため、スピーカーの低域と高域の特性がほんの少しだが持ち上がる。

スピーカープロテクトは±で若干非対称だが、問題のないレベルだと思う。

 

今回の実装基板を写真1に、アンプ組み込みの様子を写真2に示す。

Imgp3495

写真1.今回製作した基板

 

Imgp3512

写真2.組み込んだ様子

 

前回に引き続き今回も使用したCincon社のスイッチング電源CFM60S240は小さく安価だが、50Hz系のリップルやノイズが非常に小さく、フェライトコアのみの対策で十分な特性が得られた。

 

部屋では相変わらずauratone 5cをメインのスピーカーとして使っており、以前発表した無帰還電流駆動アンプを普段使いにしていたが、1年ほど前に知人が遊びに来た際に聴き比べをして、それ以来この電圧アンプを(保護回路がない状態で)つないだままになっていた。
通常、音に何か問題があると1~2ヶ月で機材を替えることになる(なぜか替えた瞬間は判断できない)が、この電圧アンプは1年ほど問題なく聴いていたのでスジは良いのだろうと思う。

今回はすんなりうまくいって残りの基板があるので、ご希望の方に頒布します。
生基板2枚ひと組(ステレオ分)と、製作説明書と回路図、部品表等の資料、製作例、LTSPICEのシミュレーションファイルをセットで2000円+レターパック代520円の合計2520円で頒布します。(自力で部品収集、部品選別、調整できる方が対象です。)

ご希望の方は表題に「無帰還電圧アンプ基板頒布」、本文にお名前、送付先郵便番号、ご住所、電話番号をお書きのうえ、

dj_higo_officialアットhigon.sakura.ne.jp
(アットを@に替えてお送りください)

までメールをお送りください。

代金の振込先のご案内メールをお送りします。入金が確認でき次第発送します。


回路図、部品表、製作マニュアル等

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