【20251218 追記】
pseudonym_xenoさんよりコメントにて、accutronの設計思想から考えると、「逆起電力でのトランジスタ破壊防止のために保護ダイオードをつけたほうがよいのではないか?」という考えは違うのではないかとのご指摘がありました。ありがとうございます(^-^)
急ぎ調べたところ、ご指摘の通りアキュトロンにおいてコイルの逆起電力をクランプしてしまうと、音叉のQの低下、フィードバック量の低下などにより発振が不安定または動作不能になる可能性が高いようです。
つまり設計思想からすると、そもそもクランプダイオードを付けてはいけない、ということのようです。
それならば、トランジスタの破壊はなぜ起きたのか?というと、どうやら経年劣化と考えるのが妥当なようです。アキュトロンのような微小電力の発振では、トランジスタを破壊するほどの逆起電力は生じない、という検証の上での設計なのかもしれません(このあたりは実測して検証してみたいところです)。
したがいまして、下記の本文中、逆起電力によってトランジスタが破壊したのではないかという仮説と、保護ダイオードをつけるといいかもしれない、という部分は間違っている可能性が濃厚ですので、この追記をもってお詫びと訂正といたします。なお、本文はそのまま残します。
【これより元記事】
踊りに行くときは普段使いのG-SHOCKを外して、シンプルな外装の時計をしていくことが多い。これは踊っていて相手の女性の髪に引っかかったりすると申し訳ないからだ。特に気に入ってつかっていたのが写真のアキュトロン・スペースビューで、いまはもう絶滅してしまった音叉式の腕時計だ。この時計は要修理状態で父から譲り受け、たしか1995年頃に修理可能なショップを見つけて修理してもらい、これまで大事に使ってきた。ロット番号をみるとM4となっているので、1964年製だ。サイドにリューズがないのでスッキリしている。
2017年の11月頃、いつものようにこのアキュトロンをつけて出かけようとすると、止まってしまっている。電池が切れたのかと思い交換してみたが、どうも発振音が弱々しく、しばらくすると止まってしまう。回路はいたってシンプルなので、故障するとしたら接触不良か、トランジスタの劣化かコンデンサの容量抜けくらいしか考えられない。だが修理に出すと高くつきそうだし、暮れに向けて忙しかったこともあって放置してあった。
図1にアキュトロンの回路を示す。(
こちらのサイトからいただきました。)
今回トランジスタが故障したとすれば、考えられるのはコレクタに最大定格を超える逆起電力がかかったか、ベース電圧がマイナスに振れてブレークダウンを起こしたか、まあそんなところではないか。そこでLTSpiceを使ってシミュレーションしてみた。
図2.シミュレーション回路
図1の回路にしたがって回路を入力し、L1とL2は結合、ただしL1~L3は定数が不明なのでシミュレーション上で発振が起ればとりあえずOKとした。シミュレーション結果を図3~図5に示す。
図3.シミュレーション結果(全体)
図4.発振開始直前を拡大
図5.発振開始
ピンクがコレクタ電圧、緑がベース電圧。
図3をみると、発振開始前にコレクタ電圧が大きく+に、ベース電圧が大きくマイナスに振り込んでいる。どちらもトランジスタを破壊するには十分なレベルだ。通常こういうことでトランジスタが破壊しないように保護用のダイオードを入れることが多いが、図1の回路を見る限りそのような対策はとられていない。
図4はコレクタ電圧とベース電圧のピークの拡大図、図5は定常発振開始の様子。発振が開始してしまえば問題はなさそうなので、危険なのは電池交換時か。
もともとついていたトランジスタを外し、手元にあったチップ品の2SC1815(Aliで100個170円送料込み)に交換してみると、力強い発振音と共にアキュトロンは息を吹き返した。
図6.トランジスタ交換前(左)、交換後(右)
保護用のダイオードを追加することも考えたが、スペースがせまく作業が難しいことと、オリジナル回路を尊重するということで今回は見送った。
もともとついていたトランジスタがどのように劣化したのかは当然測定してみたかったのだが、うかつなことに取り外すときに足をもいでしまって計測不能になってしまった。
図6.もとのトランジスタ。本体2mmほど。
【アキュトロン音叉時計について】
腕時計の主流が機械式(ゼンマイ)からクオーツに変わるすきまの十数年間だけ存在した形式で、音叉の固有振動を使ってゼンマイよりも高精度を実現した時計。もともと1.35Vの水銀電池を使用する設計だったため、一時期は電池が入手不能となり実使用が不可能となったため絶滅したかに思われたが、補聴器用の空気亜鉛電池(1.35~1.4V)が使えることから中古市場などにも復活している。スケルトンで音叉やコイルが見え、秒針も連続的に動くスイープ運針なので、いまではとても個性的だし、中古の取引価格も2万円から10万円くらいなのでお手頃である。
2010年に世界限定1000個が復刻された。定価39万9千円。高すぎ(汗)
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