ステレオレコードの左右

写真1.1964年のアルバム”Oscar Peterson Trio Plays”
オスカー・ピーターソン・トリオの1964年のアルバム”Oscar Peterson Trio Plays”に収録された”Fly Me To The Moon”がとても好きで、数あるアーティストの”Fly Me To The Moon”の演奏の中でもトップだと思っている。
この録音に出会ったのはおそらくぼくが大学生の頃で、時期としては1980年代のうしろの方ではないかと思われる。CDの値段がだいぶこなれてきて、古いジャズのオムニバス盤がさかんに出された時代だった。
どこで購入した、何というタイトルのCDだったかも今となってはわからないのだが、”オスカー・ピーターソン・トリオ・ベスト”のような感じの16曲入りのオムニバスCDで、ディスクは行方不明だが、リッピングしたものが残っている。
この”Fly Me To The Moon”の演奏がとにかくサイコーなのだが、残念なことに音質がいまひとつだ。
そこで、先日リリースしたParametric Wav PlayerでのRIAAレコード音源再生の検証も兼ねて、1964年のアルバム”Oscar Peterson Trio Plays”を購入してダイレクトリッピングして、Parametric Wav PlayerでRIAA再生して聴いてみた。
オムニバス盤は、音源にオリジナルマスターが使われているとは限らないので、音質が落ちるケースもあり、最初にこの演奏が収録されたレコードで聴いたほうが音質がいいのではないかという期待もあった。演奏の最初の方だけキャプチャーしたので聴いてみてほしい。
Fly Me To The Moon オムニバスCD
Fly Me To The Moon オリジナルアルバム(LP)
聴いていただくとわかると思うが、残念ながら音質は大差なかった。
ただ、面白いことに気がついた。
オリジナルアルバムの方は、ウッドベースが右から聴こえてくるが、オムニバスCDは配置が逆だ。つまり左右が入れ替わって録音されている。
いままでなんとなく、音楽アルバムのMixは、左側に低音、右側に高音が配置されることが多いような感じがしていた。これはぼく自身ピアノやキーボードをやったことがあるから、そういう気がしていただけで、統計的にそういう傾向があるのかどうかはわからない。ピアノの場合は左が低音で右が高音なので、演奏者の感覚では左低右高になるのだ。
この2つのFly Me To The Moonでは、オリジナルアルバムは右からベースの音が聞こえるので、感覚からすると逆の感じがする。一方でオムニバスCDは左にベースがいるので、なんとなくこの方が自然な感じがするのだ。
これはオムニバス盤を作るときに意図的に反対にしたのか、それとも単につなぎ間違えたのかはわからない。しかしオムニバス盤の制作で左右が逆になっているケースがあるということだ。
実際のライブシーンでは、どんな配置になっているのかを考えてみた。
ピアノトリオで、グランドピアノとドラムスとウッドベースの場合、ステージはどのような配置になるだろうか?これはステージの広さにもよるが、ほぼ図1のようにしかなり得ないのではないか?
図1.ジャズピアノトリオの配置
グランドピアノは、胴体の凹んでいる部分から斜め方向への音がもっとも良いとされる。この図で矢印の方向だ。つまりこれを客席の中央方向とするには、ピアノは客席から見て舞台の左側(下手側)に図のように配置する。こうするとピアニストの顔も客席から見えて都合が良い。
ドラムスは全体のバランスから考えると、中央の後ろの方に配置したい。そうなればウッドベースは必然的に舞台右側(上手側)となる。
これがもっとも自然な配置ではないだろうか。
そうすると、右からベースが聴こえるオリジナルアルバムのほうが自然な配置だということになる。
実際のライブでの配置と、左低右高の感覚は逆だということなのだ。
おもしろいので、手持ちの音楽ソースがどうなっているか調べてみた。
ビル・エバンスのポートレートinジャズ(1959年)に収録された枯れ葉は、左にベース、右にドラムなので、演奏者感覚の左低右高だ。
ミルト・ジャクソンのBAGS&FLUTES(1957年)のBag's New Grooveも同じく、左にベース、右にドラム(やや不明確)。
デイブ・ブルーベックのTake Five(1959年)では、左にピアノ、中央にベース、右にドラム、B面のUnsquare Danceは左にピアノ、ベースは中央、ドラムは左右にパンを振っている。
サンプルとしては少ないものの、どちらかというと左低右高の演奏者感覚でMixされたもののほうが多いような印象だ。
最近の録音(特にJAZZ、POPS)ははっきり左右に楽器を分けるようなMixはあまりやらなくなっていて、いかに自然に、それでいてステレオの立体感を出すか、あるいは作品としてどのように仕上げるのがいいのか、などいろいろな要件を検討して制作されているのだろうと想像されるが、時代とともにステレオMixの傾向があるということを意識して音楽を聴くのも面白いかもしれない。








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