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2025年11月

2025年11月26日 (水)

SDRドングルでAM受信(2) 【基板頒布あり】

Blogpcballover
図1.ワンセグチューナードングル用クリスタルコンバーター基板

前回の記事もどうぞ!

というわけで、少し前に安価なワンセグ用USBドングルとフリーソフトSDR#でAMラジオを受信する実験を紹介しましたが、その後回路を改良し、定数を見直した結果、かなり感度アップして放送局によっては実用レベルとなったので、基板を起こしました(図1)。

実験室は東京都中野区の鉄筋マンションの3階で、室内に7mほどのビニル線アンテナを張って実験していますが、各局の受信状況は次のとおりです。

NHK1(594kHz)

NHK2(693kHz)

AFN(810kHz)

TBS(954kHz)

文化(1134kHz)

NHK1、2はまあまあ聞き取れるレベル、AFNとTBSは十分実用レベル、文化放送はかろうじて何かが聞こえるレベル、ニッポン放送はほとんど聞こえない、という状況です。

SDR#での各局のスペクトルは次のとおり。

20251126_crycon_sdr_all_freq
図2.受信スペクトル


このように、受信強度は前回に比べるとかなり改善しました。

今回製作した基板の回路図を図3に示します。

Blog_sch_20251128143301

図3.今回製作した基板回路図(きれいな図面を見たい方は記事末尾のマニュアルをDLしてください。)


回路左側のJ3(アンテナ入力)にアンテナ線を接続し、回路右側のJ4出力から、ワンセグチューナーのUSBドングル(DS-DT308SV
)のアンテナ入力に接続しています。

アンテナ入力(J3)から入力したRFを信号を、NJU77701(34MHz CMOSオペアンプ)で増幅し、トロイダルトランスを使ったDBMに入力します。局部発振器は100MHzとし、電源はパソコンのUSBポートから供給しています。

前回の記事で紹介した受信音声では、ブーンという100Hzのノイズが聞こえたため、その後追求したところ、パソコンのACアダプタからかなり強力な100Hzのリップルが出ていて、USBアイソレータを使ったり、基板の電源をバッテリーに換えたり、アンテナと基板をPCから離すなどの対策をしても解決しませんでしたが、ACアダプタを交換したらウソのようにノイズが消えました。ACアダプタのケミコンがへたっていたか、それともそのACアダプタの仕様なのか……AMはかなりノイズの影響を受けやすいのですが、今回はACアダプタの交換によってパソコンのUSBからの電源供給でもほぼ問題のないレベルにできました。使用するPCやACアダプタ、その他の状況によってはノイズ対策が必要になる可能性があります。

今回は局部発振器を100MHzとしました。そうすると理想的にはたとえば810kHzのAFNは100.810.000Hzになりますが、100MHzの発振器に誤差があり、実際の100MHz発振器の周波数は100.001940MHzでした(図4)。

   Xtaloscfreq
図4.100MHzの局部発振器の周波数は100.001940MHz


そのため、810kHzのAFNの受信周波数は100.811940となってしまい、見づらいので、SDR#の周波数シフト機能を使って表示周波数をシフトします(図5)。


  F_shift_marking
図5.周波数をシフトすることで、AFNの周波数表示を810kHzに調整する


左下の枠で囲った部分がshift設定で、さきほど局部発振器の周波数が100.001940MHzだったので、shift値に-100.001940を設定して、shiftにチェックを入れると、AFNがぴったり810kHzに表示されます(^-^)

今回は周波数の変換がわかりやすいように局部発振器の周波数を100MHzにしましたが、この機能を使えば、局発にどのような周波数を使っても気にする必要はなくなります。

今回の基板では、追加実験のために、局部発振器を7050サイズの表面実装発振器のほかに14P DIPサイズの長方形型発振器、同じく8P DIPサイズの正方形型発振器、それに74HCU04(DIP)とHC-49パッケージの水晶発振子を使ったオシレータなどに変更できるように実装パターンを用意しています。
また、RFプリアンプについても追加実験ができるよう、SOT-23-3、SOT-89-3、SOT-343-4、SOT-363-6の各実装パターンと、2.54ピッチユニバーサルスペースを設けています。
電源はUSB-CのVBUS(+5V)となっていますが、2.5ピッチ2ピンコネクタからの電源入力(3.3~5V)も可能です。


民法AM放送はあと3年ほどでほとんど廃止になってしまいますが、この機会にSDR#でAMラジオ受信に挑戦してみるのもおもしろいと思います。


今回製作した基板を次のとおり頒布します。
今回は生基板の他に、
チップ部品実装済みで、リード部品とトロイダルコア2個、コイル用0.2Φホルマル線、ドングル接続用MCXコネクタ付き同軸ケーブルをセットした、すぐに実験・体験ができるキットをご用意しました(^-^)

マニュアルは以下リンクからダウンロードしてください。
MF_Conv_Manual.pdf


① 生基板のみ 1枚 1000円(税・送料込み)
 
② チップ部品実装済み基板 & 部品セット 1セット 3500円(税・送料込み)
チップ部品実装済み基板+リード部品、トロイダルコア、0.2Φホルマル線、MCXコネクタ付き同軸ケーブルセット
※アンテナ線とワンセグチューナードングル、電源用USB-Cケーブルはご用意ください。

ご希望の方は表題に「AMコンバーター基板頒布」、
本文にご希望のセット番号、お名前、送付先郵便番号、ご住所、電話番号をお書きのうえ、

dj_higo_officialアットhigon.sakura.ne.jp
(アットを@に替えてお送りください)

までメールをお送りください。


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2025年11月 6日 (木)

インダクタの不思議

Nvna
写真1.高周波測定に革命を起こしたnanoVNA
2020年頃にアリエクで12000円ほどで購入。


前回、安価なワンセグチューナ用USBドングルを使用するSDRでAM放送を受信することを目的に、アップコンバータを付加する記事を書いたが、使用するDBM(ダブルバランスドミキサ)のコイルをまじめに設計して測定しておこうと思い、nanoVNAを使って作業していたら、ちょっと不思議な感じがする事象に出会ったので備忘録として書いておこうと思う。
高周波の世界の住人なら常識かもしれないが、オーディオ帯域に生息する私としては少々不思議な感じがしたのだ。

DBMに使用するトロイダルコアトランスの、コアや巻き数を変えて何パターンかを作って、それが狙い通りのインダクタンスになっているかどうか確認作業をしていた。その作業中、ふと、

「バイファイラ巻きにした2巻線の両端をそれぞれ接続して並列接続にしたもののインダクタンスはどうなるんだろう?」

つまり、断面積が2倍の導線を同回数巻いたのと同一(インダクタンスは等しい)なのか、それとも個別のインダクタを並列に接続したの(インダクタンスは1/2)と同等だと考えるのか。
コアが共通で、コイルを通過する磁束は共通しているので、前者になりそうな気がするのだが、どうも確信が持てないので、nanoVNAで実測してみることにした。

測定対象は、以前アリエクで購入した外径8x内径4xt3の特性不明なフェライトトロイダルコアに、Φ0.2mmホルマル線を、①2巻線分離で5T(5回巻き)、②2巻線バイファイラで5T、③比較用として単線で5Tの3種類のトロイダルコイルを用意し(写真2)、①、②の2巻線のものについては、2巻線をそれぞれ単体で測定(他方はオープン)、および2巻線を並列接続して測定、の組み合わせで、周波数を1MHz、100MHzの2とおりで評価した。
測定結果を表1、表2に示す。

Inductors
写真2.測定対象のトロイダルコイル
左からバイファイラ5T、分離巻き5T、単線巻き5T


表1.1MHzでの測定結果
L1mhz

表2.100MHzでの測定結果
L100mhz


まず、表1の1MHzでの測定結果は、予想通りいずれの巻き方においてもインダクタンスは同等の結果となった。つまりバイファイラでも分割巻きでも、同じコア上に同回数巻いたコイルの並列接続は、単線の同回数巻きのコイルと同等ということだ。

次に同じ測定を100MHzで行った結果を表2に示す。
この結果がとても興味深い。バイファイラ巻きの場合は、それぞれの単線で測定しても並列接続にして測定してもほぼ同じ結果となり、これは単線巻きのみのものともほぼ等しくなった。
ところが、同じコア上に分離して巻いた場合は結果が異なっている(表中赤文字)。
分離巻きの各単線のインダクタンスは、バイファイラ巻きの場合のおよそ1.7倍、そしてこれらを並列接続するとインダクタンスは半減している。

バイファイラ巻きと分離巻きでもっとも違うところは、2巻線の線間容量だろう。1MHzという低い周波数では線間容量は無視できたが、100MHzでは顕在化したということか。
また、分離巻きで並列接続時に、個別のインダクタンスのおよそ半分になっているのは、2巻線間の結合係数の低下が原因だろうか。周波数が上がって、結合係数が低下するということは、周波数の上昇に伴い透磁率μが低下しているからとも考えられる。
そうすると、今回使用したコアは、100MHzではかなり性能が低下している可能性がある。ちなみに、今回使用したトロイダルコアでは、インダクティブからキャパシティブに転じる周波数は約350MHzだったので、100MHzではまだ余裕があるように思う。

そういうわけで、数MHzから上の帯域を扱う場合はオーディオ領域の感覚ではなく、厳密に物理的に考える必要がある、ということがわかった。

ところで、今回測定に使用したnanoVNAは、高橋知宏氏が2016年頃に個人的に開発したものが世界に広まって進化したものだそうだ。これまでVNA(ベクター・ネットワークアナライザ)は企業の高周波開発部隊にしかないような、大変高価(数百万円~数千万円)な計測器で、個人で所有するようなことはまず考えられなかったし、企業であっても高周波を専門に扱う部門でなければ縁がなった。つまり高周波は計測の敷居が高いので、小規模の開発グループや個人では、なかなか定量化して事象を考察したりすることが難しく、どうしても出たとこ勝負や勘や経験に頼る傾向が強かったように思う。ところがnanoVNAが世に出たおかげで、高周波の測定、解析の敷居が大幅に下がり、理詰めで検討することが容易になったことは非常にありがたいことで、これはここ10年で起こった大革命だといっても過言ではないと思う。髙橋知宏さん、ありがとうございます。


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