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2025年10月

2025年10月 1日 (水)

SDRドングルでAM受信

Overview_20250930153901
写真1.ブレッドボードに組んだアップコンバータとドングルSDR


ワンセグチューナのUSBドングルを使って、パソコンを広帯域受信機(SDR)として使用する方法はよく知られていて、おおよそ30MHz~1.6GHzの範囲をオールモードでカバーすることができる。

構成としては写真2に示すようなAmazonでも売っているUSBのワンセグチューナーと、フリーのラジオ受信用ソフトSDR#、それにデバドラの置き換えユーティリティZadigを使って簡単に導入することができる(たとえばこのサイトで説明されている)。


Dsdt308sv
写真2.Amazonで1200円ほどの安価なSDRドングル  DS-DT308SV

ドングルに付属のロッドアンテナだけでは少々受信感度が低いので、感度よく受信するには大きめのアンテナをつなぐ必要がある。FM放送を受信する程度であれば、ロッドアンテナに1~2mほどのビニル線をつなぐだけでもわりと受信できる。

ところで、ちょっと残念なのはこのドングルは受信周波数の下限が24MHz程度なので、それ以下のAM放送や短波帯は受信できない。そこでよく紹介されているのは、ドングルを改造してトランスを介してQ信号をダイレクトに入力して、SDR#の受信設定をDirect Samplingにする方法と、もうひとつはアップコンバータを使用してターゲット周波数を高い周波数に変換して受信する方法だ。

今回は、後者のアップコンバートによる方法で、極力入手性のよい部品(っていうか部品箱に入ってた部品)でAMラジオの受信を試してみた。この方法ではドングルを改造しなくて済むので、工作難易度は低い。
アップコンバートは、任意の周波数を足して、ターゲットの周波数を高い周波数に変換する方法で、たとえば954kHz(TBS放送)に100MHzの発振周波数を足して100.954MHzとして受信する。
アップコンバータを構成する主な要素は、加算周波数の信号を生成する発振器と、加算周波数信号を足し込むDBM(ダブルバランスドミキサー)で、発振器はESP32からarduinoでSi5351(PLLオシレータ)を使用して100MHzを生成し、DBMは秋月で150円で入手できるNJM2594と、手持ちのフェライトコアとショットキーバリアダイオードを使って手作りしたものの2通りを試してみた。

100MHzを生成する部分はESP32+Si5351を使用したが、これは単に100MHzのオシレータを使ってもよい。
Si5351のモジュールは秋月でもAmazonでもaliでも売っているので、容易に入手可能で、サンプルプログラムも豊富にある。
今回は、ESP32をArduinoで使用し、こちらサンプルプログラムを使って100MHzを生成した。この中で、次のようにclk0を100MHzに設定した。

si5351.set_freq(10000000000ULL, SI5351_CLK0);

DBMにNJM2594を使用した回路は図1の通り。

Njm2594sch
図1.DBMにNJM2594を使用した回路


電源は、PCにUSB接続されたESP32のブレークアウトボードから5Vと3.3Vを供給している。
アンテナからの入力信号は、広帯域オペアンプNJU77701Fで高周波増幅してからDBMに入力している。
Si5351のみ電源が3.3V、NJM2594およびNJU77701の電源は5Vなので注意してほしい。
USBドングルチューナーのロッドアンテナはmcxコネクタになっているので、ここに回路の出力(J1)を接続する。
アンテナには、室内で2mほどのビニル線を接続した。

SDR#で受信している様子を図2に示す。

20250930_2594tbs_l
図2.DBMにNJM2594を使用したコンバータでの受信

放送内容が聴き取れたのは954kHzのTBSラジオのみだったが、いちおう目的は達成された。
実際にやってみると、Si5351による100MHzの発振周波数が実際には100.020MHzになっているため、TBSラジオの受信周波数は100.974MHzとなっている。録音は次の通り。

20250929TBS_NJM2594

ほかの局については、AFNはなにか放送されていることはわかるが、内容はまったく聴き取れない程度、NHK1,NHK2は僅かにSDR#のスペクトル表示がされているように見えるものの、音としてはまったく聞こえなかった。

次に、DBMにNJM2594のかわりに、トロイダルトランス2個とショットキーダイオードを使ったものを試してみた。回路を図3に示す。

Trans_dbmsch_20250930164701
図3.トロイダルトランスとショットキーダイオードのDBMを使用した回路

この回路はNJM2594の部分をトランスとダイオードを使ったDBMに置き換えている。
トロイダルコアは以前秋月で購入したTR-10-5-5ED使用したが、現在は販売終了となっているため、代替品はFT-37-43がよいと思われるが、入手困難な場合は、秋月で入手できるFT-50-43またはFT-50-61などでも使用可能と思われる。
今回はついでにAliで入手した正体不明の8x4xt3のトロイダルコアも試してみた。
ダイオードは部品箱に入っていたND412Gというショットキーを使用したが、これも秋月で入手可能な高周波用の1SS106などが代替可能だと思われる。
100MHz入力側のトランスT1、Mix出力側のトランスT2は、線を3本束ねて巻くトリファイラ巻きとして、回路図のように結線する。
巻線にはΦ0.2のホルマル線を使用し、巻き数は次の通り。


表1.トランスT1、T2の巻き数(トリファイラ巻き)
Trans_data_20250930164701

Aliの正体不明のトロイダルコアはμが低いかもしれないので、巻き数を若干増やし巻いた。根拠はまったくない……
トロイダルトランスを使用したDBMを写真3,写真4に示す。
また、コア単体の写真を写真5に示す。大きい方がTR-10-5-5ED。


Tr10trans
写真3.トロイダルコアTR-10-5-5EDを使用したDBM


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写真4.Aliで購入した正体不明のトロイダルコアを使用したDBM


Cores_20250930164701
写真5.トロイダルコア 大きい方がTR-10-5-5ED


それではまずはTR-10-5-5EDを使用したDBMによる受信の様子を図4に示す。

20250930_sdr2l
図4.TR-10-5-5EDを使用したDBMによる受信

NJM2594に比べて、受信感度がかなり上がっている。ノイズフロアも上がっているが、信号レベルがかなり上がっているため、聞こえる局が増えた。実際に聞いた感じでは、TBS(954kHz)ははっきり聞き取れるレベル、AFN(810kHz)も音楽や言葉が聞き取れる(英語は聞き取れない)。NHK第2(693kHz)は、何か受信できているのはわかるが聞き取れない。NHK第1(594kHz)、文化(1134kHz)、ニッポン(1242kHz)は画面上スペクトルが出ているが、聞こえなかった。
TBSの録音は次の通り。

20250930TBS_Troidal_DBM


次に、Aliで購入した正体不明のトロイダルコアを使用したもの。図5に受信の様子を示す。


20250930_sdr_ali2l
図5.Aliで購入したトロイダルコアを使用したDBMによる受信

これはTR-10-5-5EDとほぼ同等か、若干高感度という意外な結果となった(@_@)
TBSの録音はつぎのとおり。

20250930TBS_Troidal_Ali_DBM

以上の通り、TBSラジオは受信レベルが高く、完全に聞き取れる受信状態となった。ただ、ブーンというノイズが大きく、これはESP32に接続しているPCのUSB電源か、ESP32モジュールが由来の可能性が高い。電源に電池などを使い、発振器も単体のものを使用すれば改善する可能性がある。
アンテナは室内のビニル線2mほどという条件で、この程度の受信ができたので、満足な結果だったと思う。


今回の検証では上記のほかに、バーアンテナとバリコンによる同調回路、およびLCによるLPFも検討したが、いずれも感度が低下してしまい、期待した効果が得られなかった。
ほとんど秋月で入手可能な部品で構成できたので、中波受信に挑戦してみたいという方におすすめします。AM放送はあと3年ほどでなくなってしまうので、記念に実験してみてはいかがでしょうか?



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