« 2025年2月 | トップページ

2025年3月

2025年3月12日 (水)

DT71 ピンセット型デジマルの救済(2)

All
写真1.今回の改造品(中段)、オリジナルのピンセット型脚部(上段)
および改造に使用したプラスチックピンセット(下段)


前回の記事DT71 ピンセット型デジマルの救済(1)では、ピンセット型デジタルマルチメーターDT71の電池劣化救済策として、外付け基板を製作し、そこに電池とテストリード接続端子を設けることで、ふたたび使えるようになった。

しかしながら、テストリード長がオリジナル品よりも大幅に伸びたため、コイルのインダクタンス測定において精度が低下してしまい、オリジナル品ではおおむね1μHが測定下限だったのに対し、改造品では測定下限が10μH程度となってしまった。

そこで今回は市販のプラスチックピンセットを使用して、オリジナルと同じくピンセット型のデジタルマルチメータに改造した。
今回の目的は次のとおり。

①ピンセット型を踏襲することでテストリード長を短縮し、測定精度をオリジナルと同等にする
②電池を交換可能とし、劣化の場合でも交換できるようにする
③電源スイッチを設けて、電源の完全OFFができるようにする

ピンセット先端部がプローブとなっているので、プラスチックのピンセットに電極をつけるのがよさそうだ。
amazonで探したところ、使えそうなものを見つけた。10個で1109円。

これの先端を切って、そこにもとのDT71に予備として付属していたプローブチップを取り付ける。写真2参照。

Probes
写真2.プローブチップの取り付け 
プローブチップにはΦ2のネジ穴(M2.0の雌ネジ)と位置決め用のバカ穴が空いている。


現物合わせでネジ穴を空けて取り付けたが、思いのほか良い精度でできた(^-^)
極性がわかるように、短く切った黒と赤の熱収縮チューブをつけてある。

回路は前回と同じだが図1に再掲しておく。

Dt71_sub_sch_20250312152301
図1.回路図


本体のΦ3.5プラグを受けるジャックその他の部品をのせた基板を作って、プラスチックピンセットのトップ部分にネジ止めした。
基板の部品面と配線面の写真をそれぞれ写真3、写真4に示す。

Parts_side
写真3.基板の部品面


Wire_side
写真4.基板の配線面

今回もΦ3.5の4Pジャックが取り付けられるFMラジオ基板を流用して、ジャックの部分を切り取って使用した。
電源SWを取り付け、電源の状態がわかるようにLEDをつけてある。

さて、完成したので、インダクタンスの測定がオリジナルと同じ精度で行えるかどうかの検証だ。検証結果を表1に示す。

表1.測定評価結果
Table

いちばん左のピンセット型(オリジナル)に対して、前回の改造品(基板型改造品)では10μH以下のいずれの測定結果も精度が出ていない。
今回(ピンセット型改造品)の測定結果はオリジナルと同等レベルで、1μHまで測定が可能なようだ\(^o^)/


そういうわけで、ピンセット型デジタルマルチメータDT71は、姿を変えてまだまだ使えそうです(^-^)

| | | コメント (0)

2025年3月10日 (月)

中華製温調はんだごて(4)

Set
写真1.今回購入した温調はんだごてセット



アリエクで購入した格安はんだごてについて、2020年にこのブログで記事を書いた。そのときは、温調がまったく機能しておらず、回路を写し取って検討し、試行錯誤の末、フィードバック回路に抵抗を1個追加することで正常に機能するようになり、現在も使用中だ。

過去記事
中華製温調はんだごて
中華製温調はんだごて(2)
中華製温調はんだごて(3)

最近アリエクの広告に、はんだごての画像が付いていたので、なんとなく見てみると、どうやらデザインが新しくなっている。USプラグ付き110V仕様品が、保護キャップとこて先6本とハンダまで付いて、送料込みで1117円だったのでつい購入してしまった(^-^;
今回の新製品は温調が機能しない不具合は解消しているだろうか?

結論を先に言うと、温調機能はちゃんど機能している\(^o^)/
温度設定に対するこて先の実測温度のグラフを図1に、測定の様子を写真2に示す。

Photo_20250310163001
図1.設定温度と実測温度


Photo_20250310161501

写真2.温度測定の様子


測定結果では、400度以下の設定だと、こて先の温度は設定値から20℃~40℃程度低くなる。また420度以上の設定では、実際の温度は頭打ち気味になる。このこての動作電圧仕様は110~240Vとなっており、100Vは仕様外なので、ひょっとしたらその影響もあるのかもしれないが、いちおう温調はちゃんと機能している。

全体の出来はどうだろうか?

まず手に取って振ってみるとカラカラと音がする。
こて先を外して調べてみると、絶縁用あるいは断熱用と思われるセラミック製のスリーブが付いていて、遊びがあるため振ったときにこれが鳴っていた(写真3)。

Sleeve
写真3.スリーブがカラカラ鳴る

まあこれは特に問題はないので、気にしなければよいだろう。

実際に使ってみたところ、どうもこて先がぐらぐら動いて気持ちがわるい。動くといってもほんの0.数ミリだと思われるが、それでも小さなチップ部品や狭ピッチのICなどをはんだ付けすることを考えると、あまり使おうという気が起こらなくなるレベルだ。

分解して観察すると、こて先とカバーの間にすきまがあり、これによりこて先がガタついていることがわかった。これは前回購入品にはなかった問題点で、残念ながら改悪されてしまったようだ。
そこで、写真4に示すように、径1mmほどの針金(何かの部品の足の切れ端)をこて先とカバーの間に挟み込んで組み立てると、ガタは解消して、快適に使えるようになった。


1_20250310161501 2_20250310161501
写真4.ガタつき防止のため、こて先とカバーのすきまに針金を挟んで押し込む


次に、本体も分解して制御基板を取り出してみた。
前回2020年に購入したものの基板を写真5に、今回購入品の基板を写真6に示す。

 Pcb0_20250310181902
写真5.前回購入品の基板

Pcb0_20250310181901
写真6.今回購入品の基板


ちょっと見たところでは部品レイアウトはほとんど変っておらず、基本設計は同じように見える。

というわけで、今回のこのはんだごては、温調がまともに機能して使うことができます。こて先のぐらつきを自力で解決するか、または気にしないのであれば、まあまあおすすめできます(^-^)

 

| | | コメント (0)

2025年3月 8日 (土)

DT71 ピンセット型デジマルの救済(1)

Dt71
写真1.ピンセット型デジタルマルチメーター DT71

2021年にAliexpressでおよそ1万円で購入した、ピンセット型のデジタルマルチメーターDT71。
写真1に示すとおり、デザインが洒落ていて、ピンセット型なのでチップ部品を測定するのにも便利だ。
機能も充実していて、電圧、抵抗値の測定は当然として、コンデンサの静電容量と、コイルのインダクタンス、それに周波数カウンタ機能にシグナルジェネレータ(Sin波、方形波、ノイズ)まで付いている。
電源は超小型のリチウムイオン電池が内蔵されている。専用の充電ケーブルでUSBに接続して充電するようになっていて、交換はできないし、充電中の使用はできない。

気に入って使っていたが、いくつか問題点があった。

まず第1に、電源が完全に切れない。ふだん電源OFF状態はsleepとなっていて、ちょっとした振動を検知して自動的に電源をONする仕組みだ。また使わないでいると、1分ほどで自動的にsleep状態となる。
ただこれはかなり致命的な欠点で、たとえば出先で使いたいのでカバンに入れて持っていくと、移動中の振動で頻繁にスイッチが入ってしまい、現場に着いて使おうとすると電池切れになっていたりする。

動作状態での消費電流はおよそ6mA、sleep状態の消費電流はおよそ50μAで、電池はピンセット型の両脚の中に小型のリチウムイオン電池がそれぞれ1個ずつ内蔵されていて、容量はそれぞれ50mAhなので、合計で100mAh。そうするとフル充電では16時間程度はもつ計算だが、実感としてはそんなにはもたないような感じだ。おそらくいつもフル充電とは限らないことや、電池の劣化が早いということが理由として考えられる。

また、sleep電流50μAというのもリチウムイオン電池で使うには問題がある気がする。というのは、フル充電からの放置で100mAh/50μAで2000時間で空になる計算となる。2000時間というと83日、つまり3ヶ月弱だ。うっかり3ヶ月使わずに放置して電池を空にしてしまうと、かなり電池を傷めることになる。

ぼくの場合は、2年に満たないうちにかなり電池が劣化してしまい、使いたいときには電池切れ(-_-)という事態が頻繁に起こり、そこから充電していたのではもはや意味がない。
この機種に使われているリチウムイオン電池は、300829型、つまり厚さ3mm x 8mm x 29 mm というかなり小型の特殊サイズの電池で、これがピンセット型の両脚に1個ずつ入っている。1万円以上する測定器を2年くらいで使い捨てるのはあんまりなので、電池交換しようと思い、このサイズの電池を探したが、どこにも売っていない。特注品のようだ。

そういうわけで、せっかくデザインも洒落ていて機能も充実しているのに、電池が劣化して放置してあった。

そこで今回は、ピンセット型ということはあきらめて、電池を外から供給する改造をして使えないかを検証した。

まずこの製品の構造だが、写真2のようにピンセット部分と表示パネルの付いた本体部分に切り離すことができる。

Dt71parts
写真2.ピンセット部分(左)と本体部分(右)

ピンセット部分には両脚に電池、および充電回路、本体部分にはマイコンと表示パネルが付いている。
ピンセット部分と本体の接続は、4PのΦ3.5プラグとジャックで、これはイヤホンなどに使われるのと同じものだ。
今回の目的は、ピンセット部分はあきらめて、新しく電池とテストリード接続部を作って使えるようにするということで、先に写真3に完成写真を示す。


Overview1
写真3.今回の成果物(電池は基板裏面に搭載)

このとおり、本体部分に電池とテストリードのコネクタを載せた基板を接続した。
ピンセット型の使い勝手を捨てるのは惜しい気がするが、考えてみればわれわれ日本人はテスター棒を片手でお箸のように扱うのが普通なので、使い勝手はさほど変らないのである。ピンセット型が非常に便利だと感じるのは箸を使わない人たちだろう。

今回の工作をするにあたって、ピンセット部と本体の接続がどうなっている知る必要があるので、ネット検索したところ、見つけることができた。このひとは、このピンセット型のデジマルが故障してしまい、なんとか復活させたいということで改造を行ったそうだ。これはHackadayというサイト内の記事である。

ここに掲載されていた回路図を、図1に示す(無断)。

7766241652662938000
図1.ピンセット部の回路図(DT71と書いてあるプラグ状のものが本体)


回路図を見ると、電池とともに充電回路が内蔵されているが、今回の改造では電池は外して別の充電器で充電するということにした。電池を外せるようにしておく方が、急ぎの場合は電池を交換して使えるので便利だからだ。

今回製作した基板の回路と、本体のΦ3.5プラグの信号を図2に示す。J1、J2がテストリードの接続端子、Jk1が本体と接続するΦ3.5の4Pジャック。

Dt71_sub_sch Connect

図2.今回の回路図と、本体Φ3.5プラグの結線


今回の製作では、本体のスリープ機能には頼らずに電源スイッチを設けて、切り忘れがないように電源LEDを搭載した。
また、電池は交換(外部で充電)を前提として、付け外しがあることから、万が一逆接続した場合でも本体を破壊しないようにダイオードD1をつけた。

完成品はすでに写真3に示したとおり。裏面の様子を写真4に示す。

Sideb
写真4.裏面の様子

写真4に示すとおり、裏面にはドローン用の400mAhのリチウムイオン電池が搭載されている。

さて、この本体側のプラグが、少し奥に入り込んだところから出てきている(写真5)ため、基板を少し削って、本体の縁を逃がしている(写真6)。
基板は以前製作したFMラジオ基板の試作品を流用した。ちょうとΦ3.5の4Pジャックが使われていて好都合だったので。

Dt71plug
写真5.本体のプラグは奥に入り込んでいる

Plug_jack2
写真6.プラグ生え際が凹んでいる分、基板を削って本体の縁を逃がす


テストリードは汎用のテストリードを使えるように、マルチメーターによく使われているスリーブ付きのバナナプラグの受け側を使いたかったのだが、それが何という名前なのかわからずなかなか探し出せなかった。どうやら「絶縁体付きセイフティプラグ用Φ4ソケット」というものらしい。amazonでは「インディングポストコネクタ 4 mmバナナメスソケットジャックスピーカー端子」として販売されていた。
この端子を写真7に、取り付けた状態を写真8に示す。

4mm
写真7.今回使用した「絶縁体付きセイフティプラグ用Φ4ソケット」


Con_side
写真8.ソケットを取り付けた様子


このように、汎用のテストリードを使えるように作っておくと、ピンセット型のテストリードも使える(写真9)。

Pinset_probe
写真9.ピンセット型のテストリードを接続


ところで、ぼくは右利きなので、テスター棒は右手で持つ。ということは、テストリードのコネクタを右に、本体を左にすべきではなかったか?しまった!!
と一瞬思ったが、じつはこの本体の表示は傾きの方向に応じて自動的に表示方向を変えてくれるの問題なし(写真10)(^-^)


Overview1mirror
写真10.右利き配置でもだいじょうぶ!

どうやらこれで無事に完成したが、すこし心配だったのは、ピンセット状態に比べるとテストリード部の距離が大幅に長くなっているので、これが測定誤差になるのではないかということだった。直流の電圧や抵抗値は問題ないと思うが、パルスを使って測定を行う静電容量やインダクタンスは正しく計れるだろうか?
いくつかのコンデンサとインダクタを測定した結果を表1に示す。

表1.コンデンサとインダクタの測定
Sokuteilc


表1に示すとおり、おおむね良好な結果となった。インダクタは10μH以下は怪しいが、それ以上では使えそうだ。コンデンサ測定は一桁PFまで測定できていて、たいへん優秀だ。
測定端の信号をオシロ観測したところ、インダクタではインダクタンスに応じた周波数の連続波形が出ていたので、インパルス法ではなく、発振周波数を計測する方法で測定しているのかもしれない。またコンデンサは、小容量では同じように連続波形が印加されていたが、大容量では波形は出ていなかったので、容量によって測定方法を替えているのかもしれない。

表1の結果では、10μH以下のインダクタは怪しかったが、それではリード長の短いオリジナルのピンセット型との比較ではどうかと思い、あらためて比較測定をしてみた。表2に結果を示す。


表2.ピンセット型(オリジナル)と今回の改造品のインダクタンス測定比較
Inductor_check

やはりリード長の影響はあるようで、もとのピンセット型での測定では1μHまでは測定ができているが、今回の改造品では10μH以下はダメそうだ。10μH以下のインダクタンスを測りたい場合はもとのピンセット型に戻して測定する必要がある。


というわけで今回は、ほぼピンセット型デジタルマルチメーターDT71を救済することができた。
この製品は人気があるようで、いまだに売られている。デザインも良くとても便利だが、電池が劣化すると交換ができず、使い捨てるか、今回のように改造して使うかの選択に迫られるので、購入する場合は先々どうするかよく考えてくださいね。

【20250312追記】
ピンセット型に再改造する記事に続きます。DT71 ピンセット型デジマルの救済(2)

| | | コメント (0)

2025年3月 4日 (火)

プリンタヘッドのうがい(MG6230)

2012年に購入したインクジェット複合機MG6230。これはキヤノンのプリンタ・スキャナ複合機で、気に入って使っていたが、11月ごろにB200エラーが出て手がつけられなくなったので、また同じ機種を中古で買った。なぜあたらしい機種を買わなかったのかというと、互換インクの買い置きがたくさんあったからだ。それでしばらく使っていたが、年末年始にインク切れのまま放置してしまい、シアン(青)インクが詰まって出なくなってしまった。
強力クリーニングをすると、その直後は出るのだが、何ページか印刷するとすぐにシアンだけが出なくなってしまう。
何回か強力クリーニングをしても回復せず、ヘッドを丸ごと超音波洗浄機に数回かけてもなお回復せず同じ現象、すなわち洗浄直後は印刷できるが、数ページ印刷するとシアンが出なくなってしまう。シアンだけに思案することしばし(^-^;

クリーニング直後は印刷できるということは、インクを噴射する側のノズルとアクチュエータは正常だと考えられる。そうすると、インクを供給する側の経路が詰まって、インクが供給できなくなっているのではないか。

あれこれ試行錯誤しているうちに、わりと有効そうな洗浄方法にたどり着いた。
しょうゆ皿にキッチンペーパーを4回ほど折り重ねて厚いクッション状にしたものを敷いて、洗浄液(アルコールと水を半々)でひたひたにし、その上にプリンタヘッドの射出面を当てて、上から軽く、ぎゅっぎゅっと押し当ててやる。そうするとインクの供給口の細かいメッシュ面に洗浄液が逆流してくるのがわかる(動画1)。ご覧のとおりうがいをするような感じになる。


動画1.プリンタヘッドのうがい


洗浄液は最初エチルアルコールと水を半々位でやったが、ネット情報によると、エチルアルコールは樹脂部分を変質させる恐れがあるのであまり好ましくないとのこと。どちらかというとIPAのほうがいいらしい。
そして洗浄液を50~60度程度の湯に替えて、またしばらくうがい。

つぎに、ダメ押しに、大きめのプラスチックのスポイトにお湯を入れて、インクの吸い込み口めがけて勢いをつけて繰り返し注入(動画2)。


動画2.スポイトで洗浄

これでプリンタヘッドを戻して使ってみたところ、どうやら使えるようになった。
専用の洗浄液カートリッジとか、洗浄用ノズルなども売られているが、とりあえず手持ちのものでなんとかなったので、同じように困っている人は試してみてくださいね。


| | | コメント (0)

« 2025年2月 | トップページ