動作に謎のあるAMラジオ
写真1.再現してみたFET1石ラジオ
2025年になってはや1ヶ月経った。2028年まであと3年になってしまった……
技術関係のノートを見ていたら、何年か前にお遊びで実験したAMラジオの回路が出てきた。
これはごく普通にFETで一段高周波増幅をしてゲルマダイオードで検波してクリスタルイヤホンで聴くというものだった(図1)。
図1.AMラジオ回路
C1はどこで買ったかわからないAM用のポリバリコン、L2はだいぶ前にたぶんaitendoで買ったバーアンテナ、ゲルマニウムダイオードはたぶん1N60同等品、FETは秋月で売っている高周波用のJFET、BF256Bだ。イヤホンはクリスタルイヤホンのフリをしたセラミックイヤホン。
実験現場は東京都中野区の鉄筋コンクリートのマンション3階の室内で、ゲルマラジオだと電灯線アンテナを使ってTBS(954kHz)だけがかろうじて聞こえる(何を言っているかは聞き取れない)程度だ。
それに対し、FET1石でこの回路を組むと、バーアンテナに50センチほどのアンテナ線をつけた状態で、
・TBSは内容が聴き取れる
・NHK第1、NHK第2、AFN、文化放送は内容までは聴き取れないが、受信できていることがわかる
という具合に、感度が大幅に改善する。
チューニングをしていると、局の近くでキュルキュルと再生式ラジオのような音がするので、どうも再生気味に動作しているような感じがするのだが、回路は再生がかかるようにはなっていない。ためしにFETのソースやドレインからバーアンテナの2次巻線にFB(フィードバック)するなど、明示的なFBをかけてあれこれいじってみたが、うまく動作しなかった。結局よくわからないままノートに書いてそのままになっていた。
今回ノートから出てきたこの回路をもう一度組んでみたが、やはり上に書いた受信状態は再現した。コツは電源に電池を使うこと。スイッチング電源やUSB電源などではノイズが乗ってラジオが聞こえないからだ。
なぜ今になってAMラジオを組んでみたのかというと、AM局廃止期限まであと3年しかなく、この回路ももう作ることもなくなるかもしれないと思ったからだ。備忘録としてブログに書いておこうというわけだ。
今ある国内のAMラジオ局は、秋田と北海道の3局、それにNHKとAFNを除いて、すべて2028年までに停止となる。ゲルマラジオが発端となって技術者になったものとしては少し寂しい気がする……
【20250218 追記】
回路をもう少し変更して追加実験を行った。今回検討した回路を図2に示す。
図2.追加実験を行った回路
今回試してみた回路は、FETのドレインからバーアンテナのアンテナコイルに明示的にFBをかけて、FB量をVR1で調整できるようにした。図中L2,L3がバーアンテナで、L2が同調用コイル、L3がアンテナコイル。
最初の図1の回路では、明示的なFBが無いにもかかわらず再生動作しているようだったが、再生を通り越して発振しているようでキュルキュル音がして、局によってはこの発振音がじゃまをして音声が聞き取れなかった。そこで今回はFB量を調整できるようにしてみた。
また図1の回路では検波回路にD1が付いていたが、これは無しにした方が若干聞き取りやすかった。
VR1で聴きやすいFB量を調整することによって、TBSだけでなくNHK第2も内容が聞き取れるようになり、AFNはかかっている曲がわかるようになった。NHK第1は音声が小さく聞き取りは難しかった。文化放送は微弱で入感があったり無かったり、ニッポン放送はまったく入感がなかった。
この回路では消費電流は10~15mA程度。今回は極力シンプルな回路で試したかったのでソース抵抗なども省いて、消費電流はかなり多めだと思うが、もし実用を考えるなら感度との兼ね合いを見ながらソースやドレインに抵抗を入れるのが現実的だと思う。
自作ラジオの醍醐味は、ゲルマラジオか、あるいは一石か二石のシンプルな回路でどれだけ高感度にできるかというところにあると思うが、中でも再生式や超再生式は非常に魅力のある分野で、奥が深く、のめり込むとキリがない。実用性ではスーパーヘテロダインにかなうものではないが、スーパーラジオはあまりにもあたりまえに高性能が得られるのでかえって面白みに欠けるような気がする。
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