IH用電磁加熱回路(ZVS)の起動不良(20240219、20240221追記)
だいぶ前にAliexpressに注文して忘れていた誘導加熱(IH)用のZVS基板(写真1)が届いたので、実験してみた。
写真1.AliexpressのZVS基板
とても安いが、送料が335円だったのでトータルで700円弱だ。Amazonでも購入できるが若干高い。
【20240221追記その2】
センタータップ方式の回路が気になるので実験してみた。回路を図Eに示す。
図E.センタータップ付きZVS回路
基板はもとの購入品で、FETは交換品のM3004D(最大定格NG)。
誘導コイルは中間点のエナメル被覆を削って、0.65mmスズメッキ線2本撚りをはんだ付けしてセンタータップとした。
もともとついていた2つのトロイダルコイルのうち一方からセンタータップに接続し、もう一方のトロイダルコイルの接続端は開放とした。
写真Aに基板の様子、写真Bにセンタータップ引き出しの様子をそれぞれ示す。
写真A.基板改造の様子
写真B.センタータップをはんだ付けしたところ(しばらく通電実験をしていると溶けて外れてしまった。)
動作はセンタータップ無しのものと変わらず、発振周波数やコイル端の電圧波形、それにFETのドレイン電圧も、ほとんど元のものと変わらなかった。
電源電圧0Vから少しずつ電圧を上げていく起動では、3V手前で電流が2Aを越えてひやひやしたが、そのまま上げていくと発振を開始する。起動安定性は向上したように感じられた(ただし使用部品や他の部品の定数などによってちがう可能性があるので、100%だいじょうぶかはわからない)。
また、センタータップははんだ付けしていたが、しばらく通電していたら溶けて外れてしまった。長時間使用するにははんだ付けでは無理のようだ。
【20240219追記その1】
下の元記事を書いたあと、もう少し安定して起動できないかあれこれ実験していたが、FETをいくつか飛ばしてしまい、部品箱に入っていたM3004D(30V55A、RON=11mΩ(VGS=4.5V))というものに付け替えた。ただ、後述するが、このZVS回路で電源12Vのとき、FETのVdsは実測で37.6Vに達するので、このFETではNGである。やはり60V程度はほしいところ。
元記事で、LTSPICEで発振を開始するために、片方のFETのゲート初期値を0Vとしたが、実際の回路でもこれをやったら起動が安定しないかと実験してみた。図Aに実験回路を示す。
図A.検証回路 M3による遅延回路を追加した
結論を言うと、安定起動に効果があったかというとよくわからなかった(^-^;
12V印加でONすると、もともとそれほど失敗しないのだが、この回路でも失敗はしなかった。でも100%失敗しないかというとよくわからない。
やはり実用的には誘導コイルにセンタータップがついた回路にするべきだということだろう。センタータップ付きの回路では、起動が安定する上にエネルギー効率も改善するらしい。
元記事ではうっかりしていて評価回路の波形や動作の様子を観測しなかったので、次の通り図Aの回路での波形を示す。
図Bは無負荷時のL1両端の波形、図Cは負荷としてカッター刃を赤熱しているときのL1両端波形、図Dは駆動FET M1(=M2)のVds波形。
発振周波数はLTSPICEによるシミュレーションの88kHzよりも大幅に高い200kHz74Vpp、負荷にカッター刃を入れた場合は185kHz72Vppだった。
FETのVdsは37.6Vだったので60V程度のFETが必要。
図B.無負荷時のL1両端電圧 200kHz74Vpp(電源12V2.3A)
図C.カッター刃を挿入中のL1両端電圧 185kHz72Vpp(電源12V5~8A)
図D.FET M1(=M2)のVds 37.6V0-p
【20240218元記事】
いきなり電源をフルに入れるのは怖いので、電源装置で0Vから少しずつあげていった。
すると電流も徐々に上がっていき、10A程度まで達したあと実装されていたMOSFETからのろしが上がってしまった(^-^;
どうやら壊してしまったようだ。
調べてみるとこれはZVS基板あるあるで、電源電圧を0Vからじわじわ上げるのはNGで、いきなり電源電圧を印加しないとダメらしい。
気を取り直して、FETを交換してこんどはいきなり12V印加すると、また電流は10A程度を表示したのですぐにスイッチを切って、もう一度通電したところ、こんどは電流が2A程度になったので、コイルの中に使い古しのカッターの刃をラジオペンチでつまんで入れると、3秒ほどで赤熱した。なんとなくロマンがある(なんでだろう?)。
どうやら、発振開始が不確実で、発振しない場合はFETが定常的にON状態となり、直流電流がどかっと流れて昇天してしまう。
もともとついていて壊してしまったFETは24N6Gという型番で、60V35A、RON=30mΩ(VGS=4.5V)というスペックだったが、これを部品箱に入っていた同サイズのNP52N06SLG(60V52A、RON=25mΩ(VGS=4.5V))に交換した。
動作がどうなっているのかLTSPICEで検証してみた。回路を図1に示す。
かっこ内の部品型番は後述の実験で実際に使用した部品。
図1.シミュレーション回路
初期条件としてMOSFET(M2)のゲート電圧(v(n003) =0)を与えないとシミュレーションでも発振を開始しない。
初期値を何も設定しないで走らせると、発振せず、MOSFET M1,M2に90AのDC電流が流れる。これではFETは当然壊れる。
そこでMOSFET M2のゲートに初期値0Vを与えてやると発振を開始した。初期値は”.IC v(n003)=0” として与えている。このときの誘導コイルL1の電流波形を図2に示す。
図2.L1の電流波形 発振周波数は約88kHz。
さて、何かきっかけ(初期値)を与えてやらないと発振開始しにくい回路らしいので、念のため部品を替えて同じ回路で組み立てて検証してみた。
組み立てた回路は図1と同じ回路だが、部品はかっこ内に示したものを使用した。MOSFET IRFW540Aは以前秋月の福袋に大量に入っていたもので、佃煮にして食べるほどある。スペックは100V28A52mΩ(10V)。ゲートのツエナーダイオードは部品箱に入っていた7.5V品(型番不明)、L2,L3は秋月で入手したトロイダルコイル150μH9Aを使用した。誘導コイルに並列の共振用0.66μFコンデンサC1は、IH用としてAmazonで購入した0.33μF1200Vを2個並列とした。誘導コイルは今回Aliexpressで購入したZVSについてきたもので、Φ2線材をΦ20で10回巻いたもの。空中配線した回路を写真2に示す。
写真2.空中配線で試作したZVS回路 右の方に誘導コイルがある。
同じように電源電圧を12Vにセットして、いきなりONしてみたが、現象は同じで、10A流れてしまう場合はすぐに電源を切り、ONし直して電流が2A程度となれば起動成功だ。
誘導コイルに使い古しのカッターの刃をくぐらせて赤熱した状態を写真3に示す。
写真3.カッターの刃が赤熱している様子
このとき電源は12V5A程度を出力している。この試作では、FETの放熱はしておらず空中配線したワイヤーに多少熱が逃げる程度だが、
この駆動条件でFETは指でさわれる程度の発熱で、このレベルであれば放熱しなくてもなんとかなるレベルのようだ。
誘導コイルにカッターの刃を入れて、2~3秒で赤熱するので、すごい加熱力だ(@_@)
これで急な焼き入れにも対応できる。(ってそんな機会があるかーい!!)
冗談はさておき、小型のリフロー用ホットプレートを作ったら便利なのではなかろうか。
| 固定リンク | 1
コメント