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2023年4月

2023年4月24日 (月)

各種SSDACの信号ひずみ率 THD+N の比較(20230506データ追加)

【20230506】SS128基板のPCM5102出力および市販DAC(AK4396、PCM2704、ES9018K2M)のデータを追加しました。

デジタル音楽データをスプライン関数で補間するSSDACについて、実際に波形がどのように補間されているかはこれまで波形を紹介してきたが、今回は1kHzの正弦波信号を再生した場合の全高調波歪率+雑音(THD+N)がどうなっているかを紹介する。
比較参考用として、同じ測定系で市販DACデバイスAK4396、PCM2704、ES9018K2Mの測定を行った(20230506追加)。

測定条件は次のとおり。

パソコンOS  :windows XP
正弦波発生   :WaveGene1.4    44.1kHz、F32bit
FFT       :WaveSpectra1.4  96kHz、24bit
サウンドカード  :SoundBlaster Premium HD

windowsXP上のWaveGeneで正弦波を発生させ、USBでSSDACのAmaneroに入力、
SSDACのアナログ出力をSoundBlasterのラインに入力し、WaveSpectraで測定した。

SSDACの測定結果を表1に、市販DACの測定結果を表2にそれぞれ示す。

表1. 1kHz正弦波再生時の全高調波歪+雑音(THD+N)
20230506thd_table2_20230506160801


表2.市販DACの1kHz正弦波再生時の全高調波歪+雑音(THD+N)
20230506thd_table3


スーパーサンプリングのTHD+Nが最小なのはSSDAC128基板AK4490出力の0.00268%、最大だったのは同基板PCM5102出力の0.00907%だ。これは+Nの部分が支配的だが、耳で聞いてわかるほどの差はない。
また、NOSのTHD+Nは多くが4%前後と、非常にわるい結果となっているが、これは信号周波数1kHzとサンプリング周波数44.1kHzのエイリアシングが出ており、測定系が96kHzであったために観測された(下記参照)。
PCM5102NOS出力のTHD+Nは他の4%前後より大幅に低い0.0933%になっているが、これは出力回路のローパスフィルタのカットオフが低いため、44.1kHz±1kHzのエイリアシングのレベル低下による。

代表例としてSSDAC128の16bitDAC、DAC8820の128倍スーパーサンプリング出力のFFTを図1に、同NOS出力のFFTを図2に示す。

Ss8820
図1.SS128のDAC8820スーパーサンプリング出力


Nos8820noise
図2.SS128のDAC8820 NOS出力


図1、図2の比較において顕著なのが図2のAで示したエイリアシングで、これがTHD+NがNOSで約4%になっている主な原因だ。信号周波数が1kHzに対して、サンプリング周波数が44.1kHzであるため、44.1kHz±1kHzのエイリアシングが発生している。
また、Bで示した範囲にもノイズが発生していることがわかる。
これらのノイズは、図1のスーパーサンプリング出力では抑えられている。

以上のとおりTHD+Nは同じスーパーサンプリングでも、デバイスやスペックの差により最小0.00268%から最大0.00907%と開きがあるが、音を聞く限り、この差はあまり音質に影響していない。
音の傾向に影響をもたらすのは、マルチビットかΔΣか、あるいは中間型のアドヴァンスドセグメントかの違いが大きいのではないかと思われる。

主観的な傾向としては、PCM1704、PCM1702およびDAC8820のマルチビットDACは表情が繊細、アドヴァンスドセグメントのPCM1795はビビッドで鮮烈、AK4490やPCM5102はそれらの中間のような印象がする。



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2023年4月16日 (日)

【修正情報】SSDAC使用時のWindows10の設定について

[Correction Information] Windows 10 settings when using SSDAC

パソコンからSSDACを使用する場合に、
過去記事「SSDAC使用時のパソコン設定について」においてCDからリッピングした16bit 44.1kHzサンプリングのWAVファイル再生について、windows10のコントロールパネル→サウンド→Amanero(使用する再生デバイス)のプロパティ→詳細で、「既定の形式」を「2チャンネル、16ビット、44100Hz(CDの音質)」を設定することとしていましたが、windows10の仕様(あるいは不具合)により、16bit設定時のみノイズが発生することを確認しました。つきましては、16bit設定を使用せず、24bitまたは32bit設定を使用してください。

【例】CDからリッピングしたWAVファイル(16bit 44.1kHz)を再生する場合、windowsの「既定の形式」を
●「2チャンネル、24ビット、44100Hz(スタジオの音質)」
●「2チャンネル、32ビット、44100Hz(スタジオの音質)」
のいずれかに設定します(16ビットは使わないでください)。

つまり、サンプリングレートを再生するファイルに合わせ、ビット深度は24ビットまたは32ビットを選択してください。

詳細については以下のとおりです。

When using SSDAC from a computer, regarding playing WAV files ripped from a CD at 16-bit 44.1kHz sampling in the past article "Regarding computer settings when using SSDAC", it was recommended to set the "default format" in Control Panel -> Sound -> Amanero (playback device used) properties -> Advanced to "2 channel, 16 bit, 44100Hz (CD quality)". However, it has been confirmed that noise occurs only when the 16-bit setting is used due to Windows 10 specifications (or a bug). Therefore, please use the 24-bit or 32-bit setting instead of the 16-bit setting.

For example, when playing a WAV file (16-bit 44.1kHz) ripped from a CD, set Windows "default format" to either "2 channel, 24 bit, 44100Hz (studio quality)" or "2 channel, 32 bit, 44100Hz (studio quality)" (do not use 16 bits).

In other words, please select 24-bit or 32-bit depth depending on the file's sampling rate for playback.

For more information, please refer to the following.


【詳細説明】

過去記事「SSDAC使用時のパソコン設定について」において、パソコンのサウンドの設定を、再生する音声ファイルのフォーマットに合わせるということを書いたが、
その後の調査で、パソコンのサウンド設定の「既定の形式」が16bit(44100Hz、48000Hz、88200Hz、96000Hzのすべて)の場合のみ、無音時にノイズが乗る現象を確認した。現象は以下のとおり。

●16bit 44.1kHzサンプリングフォーマットの1kHz正弦波Lchのみ(Rchは無音)を、パソコンのサウンド設定「既定の形式」を「2チャンネル、16ビット、44100Hz(CDの音質)」に設定して再生した場合の、AmaneroCombo384のI2S出力を図1に示す。

[Detailed Explanation]

In the past article "Regarding computer settings when using SSDAC," it was mentioned to adjust the sound settings on the computer to match the format of the audio file being played. However, after further investigation, it was confirmed that when the "default format" of the computer's sound settings is set to 16-bit (all of 44100Hz, 48000Hz, 88200Hz, and 96000Hz), noise occurs during silent periods. The phenomenon is as follows:

Figure 1 shows the I2S output of the Amanero Combo384 when playing only a 1kHz sine wave on the L channel (with R channel silent) of a 16-bit 44.1kHz sampling format, with the computer's sound settings set to "2 channel, 16 bit, 44100Hz (CD quality)" as the "default format."




3_20230416101101
図1.16bit 44.1kHz設定時のAmanero I2S出力
Figure1.I2S output of the Amanero Combo384 when playing only a 1kHz sine wave on the L channel (with R channel silent)


図1はAmaneroCombo384のI2S出力で、上の紫色の波形がDATA、下の緑色の波形がLRCKだ。
LRCKが”L”のときLチャンネル、”H”のときにRチャンネルのデータがDATAに出力される。
この元データは、Lチャンネルに1kHzが入っており、Rチャンネルは無音のためデータは無い。
ところが図1を見ると、データが出ないはずのLRCK=”H”の区間にノイズが出ている。このノイズの部分を拡大したものを図2~図4に示す。

Figure 1 is the I2S output of the Amanero Combo384, with the purple waveform at the top representing DATA and the green waveform at the bottom representing LRCK. When LRCK is "L", data for the L channel is outputted to DATA, and when LRCK is "H", data for the R channel is outputted to DATA. The original data in this case has a 1kHz signal in the L channel, and no data in the R channel due to it being silent.
However, as shown in Figure 1, noise appears in the interval where LRCK="H" when there should be no data outputted. Figures 2 to 4 show an enlarged view of this noisy section.




1_20230416101101
図2.ノイズパターン1
Figure2. Noise pattern1


2_20230416101101
図3.ノイズパターン2
Figure3. Noise pattern2




3_20230416101201
図4.ノイズパターン3(出力なし)
Figure4. Noise pattern3(No output)


図2において、MSBが16bitの最上位ビット、LSBが16ビットの最下位ビットを示しているので、このときのデータは
0000 0000 0000 0001
となっている。

図3においては、16bitすべてがHになっているので、このときのデータは
1111 1111 1111 1111
である。

図4においては、16bitのすべてがLになっているので、このときのデータは
0000 0000 0000 0000
である(つまりデータなし=無音)。

I2Sのデータは「2の補数表現」というフォーマットになっていて、たとえば16ビットのデータなら表1のようになっている。

In Figure 2, MSB represents the most significant bit of the 16-bit data and LSB represents the least significant bit of the 16-bit data. Therefore, the data at this time is 0000 0000 0000 0001.

In Figure 3, all 16 bits are set to "H," so the data at this time is 1111 1111 1111 1111.

In Figure 4, all 16 bits are set to "L," so the data at this time is 0000 0000 0000 0000 (i.e., no data = silence).

I2S data is in the "two's complement representation" format, and for example, for 16-bit data, it looks like Table 1.



表1.16ビットデータの「2の補数表現」
Table1."Two's complement representation" of 16-bit data.
2_20230416102901

16ビットデータとは、2の16乗=65536段階のデータであり、これを2の補数表現にすると、表1のように-32768~ +32767の範囲のデータとして定義される。
ここで、先ほどの図2~図4に示したノイズデータはどうだったかというと、-1、0、1の値が出ていることがわかる。
つまり、無音(DATA=0)であるはずのRチャンネルに、-1、0、1の値のノイズが出ているということだ。

windowsのサウンド設定の「既定の形式」を24bit 44.1kHzに設定した場合のI2S出力を図5に示す。

16-bit data refers to data with 65536 levels, which is defined as data within the range of -32768 to +32767 when represented in two's complement format, as shown in Table 1.
Regarding the noise data shown in Figures 2-4 earlier, it can be seen that values of -1, 0, and 1 are present.
In other words, noise with values of -1, 0, and 1 are present in the R channel, which should be silent (DATA=0).

Figure 5 shows the I2S output when the default format of the Windows sound settings is set to 24-bit 44.1kHz.




44100_24bit
図5.24bit 44.1kHz設定時のI2S出力波形
Figure 5. I2S output waveform at 24-bit 44.1 kHz setting.


図5ではRチャンネル(LRCK=H)の区間は正しく無音(データなし)の状態になっている。これは32bit 44.1kHzに設定しても同様だった。

以上の検証は、手持ちのwindows10パソコン3台、AmaneroCombo384およびAmaneroのコンパチ基板で確認したが、すべて同じ結果となった。

以上により、windows10において、サウンド設定の「既定の形式」を16ビットに設定すると、無音時にノイズが発生するため、
これを回避するために、「既定の形式」のビット深度は24ビットまたは32ビットに設定することをおすすめします。

In Figure 5, the interval for the R channel (LRCK=H) is correctly in a state of silence (no data). This was also the case when set to 32-bit 44.1kHz.

The above verification was confirmed with three Windows 10 computers, an AmaneroCombo384, and a compatible board from Amanero, all resulting in the same outcome.

Therefore, in Windows 10, setting the "default format" of the sound settings to 16-bit will result in noise during silent periods. To avoid this, it is recommended to set the bit depth of the "default format" to 24-bit or 32-bit.

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