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2022年7月

2022年7月28日 (木)

YAHAアンプの味見

Yaha_kuutyuu12bh7a
写真1.空中配線したYAHAアンプと元箱入り12BH7A

トラ技の今月号(2022年8月号)にYAHAアンプという真空管アンプが紹介されていた。
真空管が動作するとカソードからプレートに向かって電子が飛ぶが、もしグリッドがゼロバイアスならば、このうちの僅かな電子がグリッドに拾われて初速度電流という電流が生じるため、グリッドに高抵抗を入れればマイナスのバイアスが発生する。またプレート電圧は通常よりもはるかに低い12Vで動作させる。
おもしろそうなので、バラックで組んで動作確認と音出しをしてみた。

①シミュレーション
図1にLTSpiceによるシミュレーション回路と波形、歪率を示す。
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図1.LTSpiceによるシミュレーション
真空管のSPICEモデルはAyumi's Lab.さんからダウンロードさせていただきました。

YAHAアンプはネットで調べてみると、ほとんどの回路で真空管のあとにくる出力バッファに、オペアンプによるボルテージフォロワが使われている。ぼくはどうもここにオペアンプを使うことに違和感を感じたため、トランジスタのエミッタフォロワに変更してシミュレーションしてみた。
プレート抵抗R3は、トラ技の記事では10kになっていたが、LTSpice上ではうまくシミュレーションできず、3.3kに変更した。1kHzでおよそ5倍ほどのゲインがとれている。

②試作
次に実際にバラックで回路を組んでみた。
実回路ではプレート抵抗が3.3Kではゲインがとれなかったため、13kにした。実際に組んだ回路を図2に示す。

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図2.実際に組んだ回路(片チャンネル分)

真空管12BH7Aは、所有しているKT88シングルパワーアンプの電圧段に使われていて、予備として買っておいたものだ。
この回路の主な仕様は次の通り。

・電源電圧     12V
・消費電流     380mA(ヒーター300mA、エミッタフォロワ40mAx2)
・ゲイン      1.4倍

実際に組んでみるとゲインは1.4倍しかとれなかった。グリッド抵抗やプレート抵抗を検討すればもう少し上げられるかもしれないが、今回は味見程度の評価なので、とりあえず良しとした。
33Ω負荷時の1kHz正弦波、1kHz方形波、100kHz正弦波の出力波形をそれぞれ図3~図5に示す。

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図3.1kHz出力波形

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図4.1kHz方形波出力波形

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図5.100kHz出力波形

全体としてノイズっぽいのは、使用したACアダプタによるものだと思われる。素性のよくわからない12V/1AのスイッチングACアダプタを使用した。
周波数特性は十分で、図5の100kHz正弦波でも振幅は下がらない。

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写真2.試聴の様子

試聴はSSDACを搭載したSDプレーヤーSSSDP4490をソースに、ヘッドホンにはパイオニアのHDJ-1500を使用した。
波形では多少ノイズが目立ったが、実際に音を聴いてみるとまったく気にならないレベルだった。
音質的には、予想に反して実用レベルに近い音質だった。
SSSDP4490直接の音に比べると、やや低域が細るようにも感じられるが、カップリングコンデンサや電源を見直せば改善の余地はあると思う。
もっとも、真空管のシングルアンプに物理性能を求めるのは野暮というもので、真空管の灯りを見ながら音楽が楽しめるので良しとしたい。

電池駆動のポタアンを想定するには、12V/400mAの消費はちょっときつい感じはするが、たとえばUSB PDから供給できるとすれば可能性はあるかもしれない。

この記事は、YAHAアンプの味見2に続きます。

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2022年7月 5日 (火)

【夏休み特別企画】自作FMラジオでBCL!!

Nack5Nack5_20220705133301
写真1.NACK5のベリカード

2022/8/10
業務提携している家庭教師の俵屋さんがこのラジオの製作記事を書いてくださいました(^-^)
プロ家庭教師 俵屋の日記


以前このブログにFMラジオの製作記事を掲載しましたが、今回はそのFMラジオを使ってBCLを行い、放送局よりベリカードをいただきました\(^o^)/

BCLはBloadCast Listeningの略で、つまり放送を聞くことなのですが、具体的には放送局に対して受信報告書というレポートを提出して、受信証明としてベリカード(Verification Card)をもらいます。
1970年代~80年代にかけて、BCLは大ブームとなり、家電各社は競うようにBCL用のラジオを発売し、BCLファンは日夜世界中のラジオを受信し、ベリカードを集めたものでした。
当時のBCLは、短波放送が主なターゲットで、入門者は、まずは通常のAMラジオで、国内のラジオ局のベリカードを集め、次に国内のAMラジオ帯で受信可能な海外放送をターゲットにしました。AMラジオでの受信をし尽くしてしまったら、いよいよ短波ラジオを入手して、世界中のラジオ局に挑戦する、といった具合でした。
当時、FM放送に対して受信報告書を提出するという話はあまり聞いたことがありませんでした。

それから時は流れて、今は2022年。あと数年でAMラジオはほとんど全滅しそうな状況になっています。あの当時だれがそんなことを想像できたでしょうか。
これまでAMで放送していた国内各局は、あと数年でNHKを除くほとんどの局が次々とFMへと移行し、AMの放送を停止します。これは何を意味するかというと、社会インフラの1つとしてのラジオ放送が、大きく姿を変えようとしている、ということです。

社会インフラとしてラジオを考えたときに、その重要な役割に、非常時の情報伝達があります。
従来はAM放送とFM放送という選択肢があり、それぞれ一長一短がありました。たとえば、AMでは長距離の伝達ができましたが、FMでは見通し範囲(高々数十キロ)であるとか、音質やノイズにはFMが強い、建物の中で聞くにはFMのほうが受信しやすい、などそれぞれに特徴があり、状況によってどちらかを選択するということが可能でした。
これからはFMが主流となるため、非常時にFM放送のみでどのような情報伝達ができ、どのような問題が出るのかを考えておく必要があります。

このような状況下では、今一度ラジオを見直し、FM放送での情報伝達に対して、いちど確認作業をしておくことが重要で、そのためにBCLを通じて受信確認をすることは、リスナーにとっても放送局側にとっても有益であると考えます。

もちろん、そんな難しいことを考えずに、ただベリカードをコレクションしたい!!ということでもOKです(^-^)

それでは、BCLのやりかた、つまり受信報告書を作成して、ベリカードをもらうまでの手順を説明します。

①受信報告書を書く
受信報告書は、まちがいなくあなたの放送局の番組を聴きました、という証明と、受信状態を報告するものです。あとで記載例を紹介しますが、その中で少しだけ技術的な内容なのがSINPOコードです。
SINPOコードは受信状態を示すコードで、次の5項目を、耳で聴いた感じでいいので1~5の5段階で評価します。

Signal Strength …………………信号強度
Interference……………… ………混信
Noise …………………………………ノイズ
Propagation Disturbance……伝播障害
Overall Rating…………………… 総合評価

以上の5項目の頭文字をとって”SINPO”です。
各項目の詳細は以下の通りです。

・信号強度:受信電波の強さ。シグナルメーターがなければ主観的に決めてよい。
・混信:複数の放送が混信していないか。FMの場合は混信は起こらないので、通常は”5”となる。
・ノイズ:受信音に雑音がのっていないか。
・伝播障害:ビルや山、鉄塔などによって受信に障害が出ていないか。具体的には音や雑音が周期的に変化するなど。
・総合評価:受信品質の総合評価。

【例】非常に電波が強くまったく問題がない場合
SINPO = 55555

【例】電波が弱めで、若干ノイズがのる場合
SINPO = 35453

受信報告書の例を図1に示します。
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図1.受信報告書の例

受信報告書のひな型(WORD)


受信報告書は、上で説明したSINPOコード以外はそれほど難しいところはないと思います。

②受信報告書の送り方
作成した受信報告書は、受信対象の放送局宛てに封書で郵送します。
・ベリカードを送ってもらうための切手(63円)を同封します。

③カードコレクション
今回ゲットしたベリカードの中からいくつかを紹介します。

Tbs Bayfm78

Interfm

Photo_20220705133302 
Photo_20220705133301


※ NHKのFM放送各局は、ベリカードの発行は行っていないそうです。


いかがでしたか。
これまであまり行われてこなかった、FM放送局のベリカード集めに挑戦してみてはいかがでしょうか。
夏休みの自由研究にもご活用ください(^-^)

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