« Auratone 5Cと電流駆動アンプ | トップページ | 無帰還アンプ »

2022年6月19日 (日)

CDの音質評価

少し前の記事で、自分はCD(またはレコード)でしか音楽を買わない、と書いた。入手性がよいことと音質が安定していることがその理由だ。
しかしCDでも音の良いものと、いまひとつのものがある。
レコーディングに使用した機材やレコーディングエンジニアの技量、ミキサーのセンスなど要因は多くあると思うが、今回はCDの曲の聴感上の音質と周波数特性(f特)に相関があるかどうかを検証した。

「CDのf特は20kHzまでと決まってるんじゃないの?」

という意見があろうかと思うが、市販のCDを調べてみると、
①20kHz付近までで、それ以上をカットしているもの
②22.05kHzまで入っているもの
③ ①と②の中間のもの
の3種類が存在している(圧縮音源からCDをプレスしている悪質なケースもあるが今回は除外する)。

今回、たまたま手持ちのCDを大量廃棄するという人がいて、150枚ほどのCDをまとめていただいた。そのほとんどが、自分では持っておらず、当然ながらほぼ聴いたことのない曲ばかりだったので、今回のような試験を行うには好都合だ。なぜなら、知っていて好きな曲では客観的に音質のみを評価するのがなかなか難しいのではないかと思うからだ。

まず基礎知識として、CDの特性がどうなっているかということを簡単に説明したい。
音楽CD録音品質は、44.1kHzサンプリング16bit深度だ。
可聴帯域上限とされている20kHzの音を再生するには、サンプリング定理から、その2倍のサンプリング周波数が必要であることから、44.1kHzサンプリングであれば必要十分だということだ。
この場合、44.1kHzの半分である22.05kHzを境にエイリアシングが発生するので、22.05kHzより上の周波数は遮断したい。だとすれば、可聴周波数上限の20kHzは通して、22.05kHzより上は通さないというフィルタが必要になる。これはよく見る説明だ。

ところが実際に音楽CDに入っている音楽を解析してみると、上に述べたように、①約20kHzまででカットしているもの、②22.05kHzまで入っているもの、③ ①と②の中間のもの の3種類が存在していることがわかる。
(22.05kHzまで入っているCDについて、技術的になぜそういうことが可能なのかはここでは議論しない。)

つまり今回検証するのは、20kHz~22.05kHzまでの範囲の信号があるかどうかでCDの音質が聴感上変わるかどうか、ということだ。

まず、ヒトの耳の周波数特性は一般的に20Hz~20kHzくらいだといわれている。
自分についてはどうかというと、高校生の頃は単音で19kHz近くまで聞こえた。50歳を過ぎた今では、だいたい16kHzくらいまでしか聞こえなくなっている。それならば、そもそも20kHz~22.05kHzの議論など無駄だと思われるだろう。はたしてどうか。

評価は次の方法で行った。あらかじめリッピングしてPCに取り込んだデータ(44.1kHz16bit wavフォーマット)を再生する。
①ランダムに曲を選び、聴く
②音質評価点を1(最低)~3(最高)の3段階でつける
③その曲のFFTをwavespectraで観察し、20kHzでカットしているものを1、22.05kHzまで出ているものを3、中間のものを2として評価点を付ける

【結果】
先に結果を報告する。
20kHzでカットしているものと、22.05kHzまで入っているものでは、聴感上あきらかに差があった
聴いた曲の聴感評価と、FFTによるf特評価結果を表1に、それをグラフ化したものを図1に示す。

表1.聴感とFFTによる評価結果
(曲名の冒頭には、追跡可能なようにアルバムでの曲順を入れた。)
Photo_20220619142501

Photo_20220619142502
図1.聴感とFFTによる評価結果
聴感とFFTによる周波数特性には相関が表れている。

この評価の結果から、22.05kHzまで入っているものは聴感上音質に優れているといえる。
CDをリリースすることになって、サンプル版をもらったら、まずはこの解析をして、もし22.05kHzまで入っていなかったら改善を申し入れたほうが良いだろう。音質が冴えなければ売り上げにも響くかもしれないし、ヒットするかどうかにも影響が出るかもしれない。

この中で注目してほしいのは、11番と12番の「君がいるだけで」だ。
これは米米クラブの有名なヒット曲で、11番はアルバム”DECADE”に収録されたもの、12番はアルバム”HARVEST SINGLES 1992-1997”に収録されたものだ。憶測だがマスターは同じものではないかと思う。マスターが同じなのに音質がちがうなどということがあるのだろうか。
いままでサルサDJをやってきた経験上、ある有名な曲をかけるときに、オムニバス盤に収録されたものよりオリジナルのアルバムに収録されているものの方が音が良いような気がする、ということが度々あったが、今回、実際にそういうことがあるのだということが証明された。


【評価の詳細】
評価した13曲のFFTを図2~図14に示す。

082
図2.とうちゃん f特評価2
※21kHz付近から急峻に下がっている→評価2

09september3
図3.湘南SEPTEMBER f特評価3
※22kHzまで出ている→評価3

063
図4.あなたに逢いたくて f特評価3


1043
図5.君が僕を知っている f特評価3


01come-on-everybody1
図6.COME ON EVERYBODY f特評価1
※20kHz過ぎに段差がある→評価1

123
図7.いつか見上げた空に f特評価3


011
図8.君の歌、僕の歌 f特評価1


10luv-vibration3
図9.Luv Vibration f特評価3


04destino1
図10.DESTINO f特評価1


103
図11.浪漫飛行 f特評価3


023
図12.02君がいるだけで f特評価3


012
図13.01君がいるだけで f特評価2


02141
図14.青年14歳 f特評価1

以上

| |

« Auratone 5Cと電流駆動アンプ | トップページ | 無帰還アンプ »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« Auratone 5Cと電流駆動アンプ | トップページ | 無帰還アンプ »