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2022年6月 2日 (木)

アジマスとテープ速度

小学2年生ではんだごてと、科学教材社のゲルマラジオキットを買い与えられ、それ以来はんだごてをにぎって工作する種類の人間になったが、はっきりオーディオと関係ができたのは、小学5年生あたりではなかったかと思う。
その当時、初めてステレオラジカセを買ってもらい、レコードは父にカセットテープに録音してもらって、このラジカセで聞いていた。お小遣いで初めて買ったレコードはピンクレディーのベスト盤だった。
この頃から友達とテープの貸し借りをするようになり、借りたテープをダビングして聴きたいという欲求が出てきたため、父からカセットデッキを借りて、自分のラジカセとつないでダビングした。父のカセットデッキはビクターのCCR-667だった。ラジカセとカセットデッキをピンケーブルで接続し、再生したものをカセットデッキで録音していた。
ところが、ダビングしたテープを聴いていると、なにか違和感があった。ダビングすれば音質は劣化するが、どうもそれだけの問題ではない違和感だった。しばらく聴いていると、早さが少し遅いのではないか?と思うようになり、父に相談して、ラジカセの蓋を開けて、ラジカセのカセットテープのスピード調整用のVRを教えてもらい、カセットデッキでピアノの単音を録音したものをラジカセで再生したときに、耳で聴いて同じ音程になるように調整した。(この問題は後にもときどき発生したため、中学生の頃には耳ではなくギター用のチューニングメータを使って調整するようになった。)
これが、”オーディオ”に関わった最初の記憶だと思う。

中学生になって、FMを録音したり、友達とカセットテープの貸し借りをしたりと、より活発にオーディオを活用するようになると、漠然とした疑問を抱くようになった。
「どうして他人に録音してもらったテープは音が冴えないような感じがするのか」
これは漠然とそう感じていただけで、根拠もなく、しばらくどうしようもない問題として、できる限り録音は自分でやる、という消極的な対応しかとれなかったが、あるとき父と話をしていて、「それはたぶんアジマスの問題ではないか」ということを教えてもらった。アジマスというのは、テープの録音再生に使われる磁気ヘッドのギャップと、テープの走行方向の角度のことで、これが90度なら理想だが、多くの場合メーカーや機種によってまちまちで、録音と再生で少しでもアジマスが違うと、信号の位相ずれによって打ち消しが起こり、具体的には高域が出なくなる。さっそく、誰かにとってもらって音が冴えないと思っていたテープに対して、再生するラジカセのアジマスを調整してみたところ、急に霧が晴れるように音質が改善した。それ以来、家の中にあるすべてのデッキとラジカセのアジマスを、家の中でいちばん信頼できそうなカセットデッキに合わせた。他人に録ってもらったテープに関してはどうしようもないので、できる限り録音、ダビングは自分でするというルールにした。

ナカミチが自動でアジマス調整をする画期的なカセットデッキ”DRAGON”を発表したのは、この数年後だった。

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