RDA5807MとPICマイコンによるFMラジオ(基板頒布あり)
写真1.今回製作したRDA5807によるFMラジオ
【追記】※部品調達に関係するため先に書いておきます。
今回使用したRDA5807モジュールは最近秋月で販売開始したRDA5807Hと、それより以前から広く売られているRDA5807Mの2種類があり、内容は同じだと考えていたが、念のため比較したところ、ソフト制御はコンパチであるものの、ノイズ関係の処理の差なのか、電波が弱い場合の音質に差がある。結論を先に言うと、秋月のRDA5807Hよりも広く出回っているRDA5807Mのほうが音質が良いようだ。写真A参照。
【20240430追記】
秋月電子でも上記RDA5807Mが販売開始されました。
写真A.RDA5807M(左:amazonで購入)とRDA5807H(右:秋月電子)
具体的には、室内などでの受信で受信信号レベルが低い場合に、RDA5807Hは高域が下がったくぐもったような音になる。対してRDA5807Mはそのような音質の変化は感じられない。電波が強く感度が十分な場合は両者に違いはない。
レジスタ設定で関係がありそうなところは、入力のLNA(ローノイズアンプ)の電流設定と、ソフトブレンドの設定くらいしかない。LNAの電流設定はRDA5807Hにしか付いておらず、これを変化させても上記の音質は改善しなかった。また、ソフトブレンドはノイズ軽減のためにLR信号をブレンドして再生する機能だが、この機能をON/OFFしても音質は変化しなかった。
RDA5807Hで高域が下がる現象は、おそらく受信信号レベルが低い場合のノイズ対策として、何らかの仕組みが働いているものと考えられるが、現在のところ解決できていない。
よって、おすすめはRDA5807Mとする。こちらの方が安いし入手性にもすぐれている。
【ここから本文】
今回はFMラジオICモジュールRDA5807とPICマイコンを使って、高感度高音質のステレオFMラジオを製作しました。夏休みの自由研究にいかがでしょうか。
このラジオを使って放送局に受信報告書を送ってベリカードを集めるのもおもしろいかもしれません(^-^)
2016年頃、FMラジオIC、RDA5807とPICマイコンを使ってFMラジオを製作したところ、思いがけず高感度高音質で、翌年には手作りアンプの会での製作会を行い、2018年にはトランジスタ技術10月号に製作記事を掲載していただいた。その後2021年4月にはCQ出版社より「AM/FMラジオ&トランスミッタの製作集」(写真2)が刊行され、このRDA5807のFMラジオが裏表紙を飾った\(^o^)/ワーイ(写真3)
写真2.ラジオ製作集 写真3.裏表紙にFMラジオ
今回はRDA5807を使用したモジュールRDA5807Mの入手性が良くなったことに加え、3.3Vの高性能LDOも入手できるようになったので、改良版を製作した。主な改良点は次の通り。
①電源オフの動作を、Sleep動作から電源遮断に変更
従来の電源オフ動作はマイコンのSleepを使用しており、OFF時の消費電流が50μA程度あったため、250mAhのリチウムイオン電池使用でも半年から一年程度で電池が空になり、使わずに放置しておくと電池がダメになるという欠点があった。
今回はMOSFETを使った電源遮断回路を搭載し、電源OFF時の消費電流をほぼゼロとすることで、長期未使用による電池劣化が起こりにくくなった。
②LCDパネル標準搭載
従来品ではLCDパネルは配線を引き出して接続するオプション扱いとなっており、LCDモジュールのばらつきや電源電圧によっては表示濃度(コントラスト)にばらつきが出ることがあった。今回はLCD用のソケットを実装して標準装備とし、LCDコントラストの調整機能を追加した。
③選局、音量、LCDコントラストは電源OFF時にメモリに書き込まれ、次回の使用時に反映されるようにした。
④従来、iPod用のUSB電源アダプタを使用して充電する仕様だったが、今回は汎用性を重視してUSB-Cでの充電とした。
⑤ヘッドホン駆動用オペアンプにAD8532を採用し、負荷駆動力が向上した。
⑥ボタン型リチウムイオン電池LIR2450取り付け用パターンを追加した。
本機は非常に感度が良く、SLDJ本社(中野区)のベランダで聴いてみると、なんと17局が受信できた。受信局は以下。
78.0MHz bay fm
78.6MHz FM FUJI
79.5MHz FM NACK5
80.0MHz TOKYO FM
80.7MHz NHK千葉
81.3MHz J-WAVE
81.9MHz NHK神奈川
82.5MHz NHK東京
83.4MHz エフエム世田谷
84.7MHz FMヨコハマ
85.1MHz NHKさいたま
86.6MHz TOKYO FM檜原中継局
89.7MHz inter FM
90.5MHz TBS
91.6MHz 文化放送
92.4MHz ラジオ日本
93.0MHz ニッポン放送
私が小中学生だった頃は、”エアチェック”といって、FMで流れた音楽をカセットテープに録音して聴いていたもので、できるだけ高音質で録音して聴きたいのだが、その当時住んでいた神奈川県大和市では受信できる放送局はNHK FMとFM東京の2局しかなく、そのたった2局のために、FMチューナーやアンテナにどこまで投資するのか、というのは非常におおきな悩みだった。
それが今やこの局数である。
しかも従来AMラジオ帯にいた放送局がほとんどFMに移動し、2028年にはAM放送がほぼ全廃されるということだ。
現在わかっているところでは、AMにとどまる放送局は北海道のSTVラジオ、北海道放送、それに秋田放送の3局と、NHK各局、AFN(アメリカ軍ラジオ)ということらしい。その中でNHK第一と第二は1つにまとめられるという話があるので、在京ではNHKとAFNの2局のみとなり、上に書いた当時のFMと逆転状態になる。
AM放送は中波帯という周波数帯であり、波長が長く電離層反射が起こるため、海外の放送局が聞こえるなど、到達範囲は非常に広い。また検波(電波から音声を抽出すること)が非常に簡単にできる。欠点は、波長が長いため送信設備が大がかりになることや、ノイズに弱く、音質はいまいち、ということがある。
FM放送は、超短波帯という周波数帯であり、波長が短く電離層反射はほぼ起こらないため、到達範囲は見通し範囲内となる。検波方式は複雑だが、半面雑音に強く音質にすぐれ、波長が短いため送信設備もAM局よりも小規模に構成できる。
AM/FMというのは変調方式の呼称であり、周波数帯とは関係がない。おおむね50MHz以上ではAMよりもFMが使われることが多いが、118MHz~136MHzの航空無線ではAMが使われる。これはなぜかというと、同一周波数で電波が出ている場合、FMでは受信強度が強い一波のみが受信されるが、AMでは混信状態となる。航空無線の場合は救難通信などを取りこぼさないため、同一周波数で重なっても打ち消されないAMが使われる。
今後AMラジオが衰退していった場合に、非常時の情報伝達にどのような影響が出るか考えておく方がよさそうだ。
FMでは到達範囲が狭いため、遠方の情報は得られない。
たとえば無人島に漂着したり、不明な場所に不時着したような場合(滅多にはないことだが)、AMラジオならダイオード1本とイヤホンがあれば受信機を作れる可能性があるが、FMでは簡単には作れないし、そもそも電波が届かない可能性が高い。
今回製作したFMラジオの資料を以下に公開します。
・回路図・部品表・寸法図
・製作マニュアル
・取扱説明書
・ファームウェア(PIC16F1503用HEXファイル)
今回プリント基板を作りましたので、自作してみたい方に次のとおり頒布します。
※5/26追記:本機で使用している2012サイズ0.12μHチップインダクタが入手難となっているため、基板お買い上げの方にもれなくさしあげます。
①生基板のみ 1枚 1200円(税・送料込み)
・生基板のみです。
②チップ部品実装基板+リード部品 1セット 5800円(税・送料込み)
・書き込み済みマイコン、RDA5807モジュールを含むすべてのチップ部品を実装した基板と、液晶モジュールAE-AQM0802を含む未実装リード部品のセットです。
・リチウムイオン電池とステレオイヤホンは別途必要です。ご用意ください。
ご希望の方は表題に「FMラジオ基板頒布」、
本文にご希望のセット番号と数量、お名前、送付先郵便番号、ご住所、電話番号をお書きのうえ、
dj_higo_officialアットhigon.sakura.ne.jp
(アットを@に替えてお送りください)
までメールをお送りください。
代金の振込先のご案内メールをお送りします。入金が確認でき次第発送します。
基板なしでもバラックで製作できますので、興味のある方はぜひ作ってみてください(^-^)
【3Dプリントケース】2022/04/07追記
3Dプリンタによるケースを製作しました。
写真4.3Dプリントケース(フタを開けたところ) 写真5.3Dプリントケース
STLデータを次のとおり公開するので、必要な方はお使いください。
下箱
ダウンロード - 20220406radio_basebox000.stl
パネル(社名刻字なし)
ダウンロード - 20220404radio_top002.stl
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