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2020年5月

2020年5月20日 (水)

LTSpiceでトライアックをシミュレーションする

中華製はんだごての件でトライアックにほとんど初めて触れたので、この機会にサイリスタについて考察しておこうと思い、まずはLTSPICEでのシミュレーションをしようとしたが、なんとLTSPICEにはトライアックもダイアックも記号があるだけで中身がない。たとえば図1のような回路を書いてシミュレーションしようとするとエラーが出る。

2_20200520090301
図1.トライアックに関するエラー
これは、「”トライアック”という部品の中身がわかりません」ということ。


トライアックやダイアックは、LTSPICEの部品としてLib\sym\Miscに格納されているが、これは部品記号だけで中身(部品としてのパラメータ)をもっていないので、このままでは使えないということのようだ。
こういう場合はどこかからシミュレーションモデルをもらってきて、回路記号に対して割り付けてやる手続きが必要だ。備忘録として書いておく。

今回はSTmicro社からトライアックとダイアックのシミュレーションモデルを入手した。
STmicroのホームページの検索で、”Triac SPICE”で検索するといくつか候補が出るので、今回はこの中から
en.standard_snubberless_triacs_pspice.zip
をダウンロードした。ダイアックも同様に”DIAC SPICE”で検索して、
en.diacs_pspice.zip
をダウンロード。

ダウンロードしたら解凍して、
C:\Users\higo\Documents\LTspiceXVII\lib
の下にホルダごとコピー。(どこでもよい)

次にLTSPICE上で.opを使って、”.lib”と入力し、回路図上の適当な場所に貼る。
その貼付けた”.lib”を右クリックし、BROWSEボタンを押して、先ほど解凍してコピーしたホルダの中の.libファイルを指定する。たとえば次のようになる。

.lib C:\Users\higo\Documents\LTspiceXVII\lib\standard_snubberless_triacs_Pspice\st_standard_snubberless_triacs.lib

そしてこんどはコピーしたホルダの中にあるst_standard_snubberless_triacs.libをメモ帳などで開くと、部品型番ごとに

.subckt BTA12-600B A K G

などの記述があるので、使いたい部品の型番部分をコピーしておく。この場合は”BTA12-600B”(A K Gはピン名なのでコピーしない)。

回路に戻って、回路図上のTRIACを右クリックするとComponet Attribute Editorという窓が出るので、
①prefixがXになっていることを確認(違っていたらXにする)
②valueに先ほどコピーした部品型番BTA12-600Bをペースト

ダイアックも同じように行う。

回路は図2のようになる。V1が入力する交流電源(100V 50Hz)、R1が負荷だ。

 

3_20200520093801
図2.シミュレーション回路
DIACにDB3をTRIACにBTA12-600Bをそれぞれ割り付けた

 

図2の回路で、位相制御のタイミングを決めるC1,R2のうちR2を10kΩから300kΩまで50kステップで変化させたときのtransientシミュレーションを図3に示す。

 

1_20200520090301
図3.シミュレーション結果
閾値を決めるR2をステップで変化させると、負荷にかかる電源波形が削られていくのがわかる。


おもしろいですねー\(^o^)/

ちなみにLTSPICEの参考書はオーム社の「LTSPICEで学ぶ電子回路」がおすすめです。
著者の渋谷さんとはCQ社のイベントで一度お目にかかりました。サインもらっておけばよかったなあ。

 

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2020年5月10日 (日)

無帰還A級25Wパワーアンプ(基板頒布あり)

Cimg5979

 

以前、無帰還電圧アンプをこのブログで紹介したが、保護回路をどうするか保留にしたまま4年経ってしまった。
通常はスピーカー保護回路をつけて、リレーを使ってDC検出時にスピーカーを切り離すということをするが、リレー接点が入るのがいやなのでどうするか保留にしていたのだった。

この問題を解決するため、フォトボルでMOSFETを駆動してリレーの替わりにするという手段がある。これは一般的に知られたやり方なのでおそらく問題はないだろうと考えていたが、自分でやってみて特性に問題が出ないことを確かめたいと思っていた。今回コロナで自粛生活が続いており時間もあったので検証し、問題がなさそうだったので保護回路入りでアンプ基板を起こして作り直してみた。アンプ回路を図1に示す。

Schematic

図1.無帰還A級25W電圧アンプ
保護回路はベースとエミッタから入力する古いタイプのシンプルなものにした

 

回路は初段ダイヤモンドバッファで受けた後カレントミラーで電流を約2.2倍増幅し、RV2でI/V変換するとともにここでオフセット調整し、この段でバイアス電圧を発生してQ14、Q15以降の終段をドライブする。

全高調波歪+ノイズ(THD+N)の測定結果を図2、図3に示す。

Thd_l

図2.THD+N(Left)

 

Thd_r

図3.THD+N(Right)

 

今回は半導体のペア取りをまじめに行ったためか、あるいはひずみ率測定にwavegeneの「FFTに最適化」を試したためか、
前回の測定よりも若干よい特性になり、図3では一部0.01%を割り込む結果となった。

周波数特性は図4に代表して右チャンネルを示す。
また図5には10kHz矩形波の出力を示す。

Freq_res

図4.周波数特性
-3dB ポイントはおよそ300kHzあたり

 

10krect

図5.10kHz矩形波出力
群遅延によるひずみもないので位相補償なし

 

周波数特性と矩形波も問題なし。

出力インピーダンスと、スピーカープロテクト電圧の実測値を表1,表2に示す。

 

表1.出力インピーダンス
Impedance

 

表2.スピーカープロテクト電圧
Protect

 

出力インピーダンスは前回の測定とほぼ同じだ。むやみに低いよりも若干電流駆動気味になるため、スピーカーの低域と高域の特性がほんの少しだが持ち上がる。

スピーカープロテクトは±で若干非対称だが、問題のないレベルだと思う。

 

今回の実装基板を写真1に、アンプ組み込みの様子を写真2に示す。

Imgp3495

写真1.今回製作した基板

 

Imgp3512

写真2.組み込んだ様子

 

前回に引き続き今回も使用したCincon社のスイッチング電源CFM60S240は小さく安価だが、50Hz系のリップルやノイズが非常に小さく、フェライトコアのみの対策で十分な特性が得られた。

 

部屋では相変わらずauratone 5cをメインのスピーカーとして使っており、以前発表した無帰還電流駆動アンプを普段使いにしていたが、1年ほど前に知人が遊びに来た際に聴き比べをして、それ以来この電圧アンプを(保護回路がない状態で)つないだままになっていた。
通常、音に何か問題があると1~2ヶ月で機材を替えることになる(なぜか替えた瞬間は判断できない)が、この電圧アンプは1年ほど問題なく聴いていたのでスジは良いのだろうと思う。

今回はすんなりうまくいって残りの基板があるので、ご希望の方に頒布します。
生基板2枚ひと組(ステレオ分)と、製作説明書と回路図、部品表等の資料、製作例、LTSPICEのシミュレーションファイルをセットで2000円+レターパック代520円の合計2520円で頒布します。(自力で部品収集、部品選別、調整できる方が対象です。)

ご希望の方は表題に「基板頒布」とお書きのうえ、

dj_higo_officialアットhigon.sakura.ne.jp
(アットを@に替えてお送りください)

までお送りください。代金の振込先のご案内メールをお送りします。入金が確認でき次第発送します。

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2020年5月 6日 (水)

チップパーツ・キャビネット製作

最近は電子回路を組む場合にチップ部品を使うことが多い。手付けができる範囲なので1608サイズが一番多く、よく使うものをピルケースに入れて、実験机の引き出しの上に置いてある。

Cimg5972

写真1.お気に入りのダイソーのピルケース

 

Cimg5971

写真2.惜しむらくは、閉じていてもフタに隙間が空いていて部品がこぼれてしまう。
そのためスペーサーを製作してフタに貼ってある。

 

 Cimg5967

写真3.ピルケース山積み状態。下の方の部品を取り出すのが面倒なことに……

 

最近は種類が増えてきたので、ピルケースが山積みになってしまうと下の方のケースが取り出しにくい。

そこで今回はこのピルケース専用のキャビネットを作ってみた。

 

Chipcabi

図1.3D CADによるピルケース用キャビネット

 

設計したはいいが、はたしてうちにある3Dプリンタで作れるだろうか。
というのは、使っている3Dプリンタはヒートベッドのサイズが約16㎝x18㎝で、設計したこのキャビはおよそ85mmx140mmx90mmなので、140mmの部分がかなりヒートベッドいっぱいになる。
3Dプリンタを買って間もない頃、ヒートベッドいっぱいサイズの工作をしようとしてうまくいかなかったことがあったのだ。なぜかというと、ヒートベッドは中央から外側に離れるにつれて温度が下がり、端の方は材料の着きが悪くなって浮いてめくれ上がってしまうことがあるからだ。

念のため赤外線温度計で測ってみると、図2のようになっていた。

Heatbed_temp

図2.ヒートベッド温度分布(60℃設定)

 

材料はPLAを使うので、標準的には60℃設定だが、今回は大物なので63℃でやってみることにした。

 

Cimg5970

写真4.プリント完了\(^o^)/
今回はヒートベッドの温度を上げたことが奏功したのか、うまく印刷できた\(^o^)/

 

Imgp3514
写真5.
2つのキャビネットを組み合わせているところ

ピルケースの収納もこのとおり。

Cimg5975

写真6.チップ部品用ピルケースキャビ完成\(^o^)/
今回は設計したキャビを4つプリントした。1つプリントするのに9時間40分かかるので、実に40時間近くかかった。

 

ちなみに当方で使用している3Dプリンタは、PRN3Dというキットだ。

参考のため、ピルケース用のスペーサーと、今回製作したキャビのstlデータを貼っておくので、ご自由にどうぞ。

ダウンロード - partsboxplate00.stl

ダウンロード - 20200504chip_cabi0022886029.stl

 

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