【DJ講座中級編1】 リッピングとCD-R焼き
CDの生ディスク(正規盤)を使ってPLAYしようとすると、どうしても持って行くディスクが増えて効率が悪いので、使う曲だけ集めてCD-Rに焼いて使いたいというのは自然な考え方です。
ここでは、正規に購入したCDから曲を抽出し、私的使用のためにバックアップを取ることは合法であるという前提でお話を進めます。
CDから音楽データを抽出し、パソコンに保存することをリッピングといいます。
必要な曲だけを集めてCD-Rに焼くための手順は、
① CDから音楽データをリッピング
② リッピングした曲から必要な曲だけ選んでCD-Rに焼く
これだけです。
当たり前のことなのですが、こうして編集したCD-Rが音質的にもとのディスクより劣るようなことは避けなければなりません。
ところが①リッピングの工程において、大部分のソフトの初期設定では圧縮するようになっています。
音声信号の圧縮は現在のところそのほとんどが非可逆圧縮といって、2度ともとの音質には戻せないタイプの圧縮ですので、ここで失われたデータは2度と取り戻せません。
まずは予備知識として、音楽CDに入っている音楽データの品質を確認しておきましょう。
音楽CDのデータフォーマットは
44.1KHzサンプリング、16ビット、ステレオ
という形式です。
これはどいうことかというと、電気の波に変換された音楽信号を、
1秒あたり44100個にスライスし、音の大きさを16ビット(2の16乗=65536段階)
に分解して、これを左右チャンネルそれぞれのデータとして扱うということです。
1秒当たりのデータ数(ビット数)を計算すると、
44100x16x2(左右)=1411200=1411.2Kbps
つまり1秒当たり1411200ビットのデータで保存しているという意味です。
これをビットレートといいます。これが多いほど高音質ということになります。
さて、代表的なソフトのリッピング初期設定を見てみましょう。
まずはWindowsに標準的にインストールされているWindows Media Playerはどうでしょうか。
ファイル形式はWMA、ビットレートは128Kbpsです。
もとのCDのビットレートは1411.2Kbpsでしたから、なんと1/10以下です。
つまりもとの音楽データの90%以上が消えてなくなってしまうということですね。
もうひとつ、iTunesではどうでしょうか。
初期設定でファイル形式はAAC、ビットレートは同じく128Kbpsです。
リッピングしてCD-Rにコピーすると音が悪くなるような気がすると思っていたあなたは正しい。
なにしろ1/10以下ですから、これではワインを10倍に薄めて飲んでいるようなものです。
こういうものはお客様には出せませんね。
ネットでダウンロード販売しているmp3などの音源も、128Kbpsよりは若干高密度である
場合もありますが、本質的には同じくパーティーでは使えないと判断しています。
さて、いよいよ本題の、一切の圧縮(音の劣化)なしにリッピングする方法です。
まずはWindows Media Playerから。
動作環境はWindowsXP、Windows Media Player11です。
「取り込み」の「オプション」の「形式」で「WAV(無損失)」を選べばOKです。
リッピングしたファイルは、
「取り込み」の「その他のオプション」の「音楽の取り込み」の中の「取り込んだ音楽を保存する場所」
で設定された場所に保存されます。変更もできます。
つぎにiTunes。
「編集」の「設定」を選ぶと設定ウィンドウが出ます。
この中の「一般」の中ほどに「CDをセットしたときの動作」があります。
ここは「CDのインポートを確認」に設定しておき、その右の「インポート設定」ボタンを
押します。すると、読み込み設定ウィンドウが出ます。
インポート方法を「WAVエンコーダ」
設定を「カスタム」とするとWAVエンコーダウィンドウが出ます。ここで
サンプルレートを44.100KHz
サンプルサイズを16ビット
チャンネルをステレオ
に設定し、OKボタンを押します。
iTunesの場合は、CDを挿入すると曲目リスト画面が表示され、右下に「インポート設定」、「CDをインポート」の2つのボタンが出ます。念の為にその都度「インポート設定」を確認するのがいいと思います。というのは、iTunesは自動アップデートを行ったあとにリッピング設定が初期設定に戻るということが度々あったからです。
リッピングしたファイルの格納場所は、「編集」「設定」の設定ウィンドウで「詳細」を選ぶと、「[iTunes Media]フォルダーの場所」に設定されています。
リッピングができたら、そのファイルがWAV形式かどうか確認しましょう。
リッピングしたファイル名が*******.wavというファイル名ならOKです。
.wavの部分が無く、ファイル名のみの場合は、
フォルダーのウィンドウの「ツール」の「フォルダオプション」の「表示」の「詳細設定」で、
「登録されている拡張子は表示しない」のチェックを外します。
OKを押して、あらためて先ほどのファイルを確認します。
拡張子を表示したくない人は、ファイルを右クリックしてプロパティで「ファイルの種類」が「Waveサウンド」になっていることを確認してもOKです。
ここに書いたWindows Media PlayerやiTunes以外のソフトでリッピングを行う場合でも要点は同じで、取り込みのオプションでWAVを選択し、必要な場合は44.1KHz、16ビット、ステレオの設定を行えばOKです。
さて、非圧縮でリッピングができたら好きな曲を集めてCD-Rに焼きましょう。
CD-Rの再生では、プレーヤによっては音飛びを起こしたり、ひどい場合だと再生ができないなどということもあります。
できるだけそのような不都合が起こらないようにCD-Rを焼くコツがあります。
まず、使用するディスクですが、That's(太陽誘電)ブランドのものがベストです。
これは、太陽誘電がCD-Rの開発元であり、ドライブ(CD-R書き込み装置)開発各社は太陽誘電製のディスクを基準にドライブを開発しているからです。太陽誘電の次におすすめなのはTDKです。
パソコンでCD-Rを焼く場合はデータ用のディスクでかまいません。
次に書き込み速度ですが、書き込みソフトに表示される最高速度の半分か、それより少し遅い速度を選ぶのがベストです。
CD-Rの書き込みというのは、レーザー光線でディスクにデータを書き込んでいくわけですが、これは焼いたコテでプラスチックの表面を溶かして溝を掘っていくということに似ています。
コテを動かす速度が遅すぎるとプラスチックが溶けすぎて溝がべとべとヘゲヘゲになってしまい、コテを動かす速度が速すぎると、溝が浅くなってしまいます。
そういうことなので、真ん中あたりの速度を選ぶのが良いようです。
最高速度が48倍速なら24倍か16倍を、最高速度が32倍速なら16倍か12倍あたりを選ぶのがいいと思います。
編集したCD-Rを使ってDJをすることのメリットはなんといっても少ないディスクに必要な曲を詰め込んで持っていけるということですが、CD-Rの白や銀のレーベルばかりでディスクケースは殺風景になります。
ディスクケースの一部にはお気に入りの生CDを入れて、飾っておくといいかもしれませんね。
ディスクケースの見た目は大事です。
さて次回は、CD-Rに焼かれた音楽が圧縮かどうか見極める方法について書く予定です。
お楽しみに!
【参考文献】
・ニールヤングの不満
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